第24話 カサンドラの予言

馬車から降りた俺たちは、まず、ダンジョンで作戦を指示しているギルドの職員にあいさつをする。

 そして、しばらく待機をするようにいわれたので、たまたま見かけた、カストロとポルクスに声をかける



「緊張するかもしれないが、二人とも焦るなよ。強敵が現れたらすぐ逃げるんだぞ」

「ふん、お前にいわれなくとも……ふぐぅ」

「兄さん、うるさいです。ありがとうございます、シオンさんも気を付けてくださいね。その……無事に帰ったら一つお願いを聞いてほしいのですがよいでしょうか?」

「ああ、おれにできる事ならば気軽に言ってくれ」

「おい、ポルクス、あの話は僕は承認してないぞ……」

「ありがとうございます! 約束ですからね! さあ、兄さんもう時間です、行きましょう。置いてきますよ!」

「ポルクスぅぅぅぅぅ!!」


 騒がしく叫びながらも二人は洞窟の方へと向かっていった。彼らはCランクになったばかりということもあり、先遣隊として雑魚モンスターの退治を担当しているのだ。



「あの二人……本当にいつもああなのね……大丈夫かしら」

「ああ、あれでカストロは優秀な守護騎士だからな、それに妹想いで慎重だから無茶はしないぞ。ポルクスも一つ一つの魔法は強くないが、連射が得意で応用性があるから結構優秀だ。それにああ見えて接近戦もこなせるんだ。二人ともギフト持ちだし。なによりも、あの二人には独自のスキルがある」

「独自のスキル?」

「ああ、個人情報だから俺からは言えないけど、今度聞いてみるといい。カストロは誇らしげに、ポルクスはしぶしぶ教えてくれるよ」



 本当にうらやましいスキルである。俺たちは元気に出て行った彼らを見送った。そしてライムに挨拶をしにいく。ここらへんはダンジョンの入り口付近なので、魔物も人もあまりいないのだ。俺がくちぶえを吹いて、ライムを呼ぶと、洞窟の隙間からライムが現れたのであいさつがわりに薬草を与える。



「よう、何か変わったことはなかったか?」

『変わったことばかりだよ!! 人間はたくさん来るし、オークたちが洞窟中に穴をあけて困っているんだ。いつか、僕の住処にも入ってきそうで安心できないんだ。このままじゃ睡眠不足で僕のプルプルな肌が痛んじゃうよ』

「ああ、今オークの討伐にギルドが力を入れていてな……隠れてるスライムまで相手はしないから安心してくれ」


 俺はライムを安心させるようになでながら、彼の言葉を考える。オークが穴か……いったいどうしてだろう? やつらには穴を掘る習性はないはずだ。そもそもあまり頭は良くないし……てかひんやりしていてきもちいいな。



『それと大事な話があるんだ…驚かないで聞いてほしいんだけど……』

「ん? いったいどうしたんだ? 愛の告白か? 悪いな、人間に転生したらまた言ってくれ」

『転生したらスライムだったけど元は人間だよって言ったらどうする? まあ、嘘だけど。それに君に告白するなら、ゴブリンに求愛した方がましだよ。大事な話っていうのはね、信じてもらえないかもしれないけど……』

「俺とお前の仲だろ、信じるに決まってる!」

「嘘でしょ…そんな……」


 俺がライムに続きを促すと後ろのカサンドラが急に叫び声をあげた。え、一体何がおきたの? あわてて振り返ると、彼女は険しい顔をして頭を抱えている。そして俺をみて神妙な顔で口を開いた。




「シオン安心して……あの子たちは無事このミッションをクリアできるわ」

『シオンまずいわ。あの子たちはオークに襲われるわ』

「なんだって?」



 俺は思わず聞き返す。だってあいつらは先遣隊である、そんなに深くは潜らないはずだ。ポルクスはともかくカストロは無茶をしないだろうし……

まさか、オークの進行が予想以上に進んでいるのか?



「ライム悪い、急用ができた。さっきの話はダンジョンへむかいながらでいいか? カサンドラ行こう!」

「ええ、でも私の予言では彼らがオークに襲われて戦っているだけだから、彼らだけで無事撃退できるかも……」

「それならそれでいいさ。ライム、俺達は走るから俺の鎧の中にはいっておちないようにしてくれ」

『わかった。どうせなら女の子の方に入りたかったなぁ』

「このエロイムが!」


 ライムが俺の鎧に入るとひんやりとした感覚が襲う。少し感覚に違和感を感じながらも、俺たちは早急にポルクス達の元を目指すのであった。

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