第10話 ダンジョンに出会いを求めるのは間違いだろうか?

「なるほど……オークのリーダーの交代による活性化と、ギフト持ちのオークの存在ですか……ありがとうございます。報告書をまとめておきますね。シオンさんの報告でいつも私たちは、助かっているんですよ。近いうちにオークたちと決戦があるかもしれません。その時は依頼を受けてくださると嬉しいです」



 ギルドに戻った俺は、アンジェリーナさんに今回の依頼の報告をしていた。今回は色々とあったものだ。オークの世代交代に、ギフト持ち、そして冒険者による襲撃、カサンドラとの出会い。そういえば、あいつらはどうなったのだろう?



「そういえば、朝、俺に絡んできた冒険者たちって帰ってきてませんか?」

「ええ、あの人たちも、オークを狩るっていってましたが帰ってきてませんね……まあ、ベテランなんで無茶はしないと思いますが……もしかして何かありました? 私たちは……私はあなたの味方ですよ」

「いやあ、まあダンジョンですれ違ったもので……」



 俺の言葉にアンジェリーナさんは、何かを察したかのように、聞いてきた。ここでカサンドラを証人に、やつらの悪事を言ってもいいが、それで逆恨みをされるのも面倒である。だったら貸しにしておいた方がいいだろう。俺があいまいに笑みを浮かべていると、彼女はあきれたという風にため息をついた。



「まあ、シオンさんがいいならいいんですが……それよりも、一緒に帰ってきた女性は何ですか? まさかダンジョンでナンパでもしていたんですか? ダンジョンに出会いを求めるのは間違いですよ」

「いや……違いますよ。命を助けてもらったんです。そうだ、彼女について……カサンドラという冒険者について何か知ってますか?」



 なぜか半眼で俺を睨むアンジェリーナさんに俺は気をおされてしまう。俺なんか怒らせるようなことをしちゃったかな? 俺の言葉に何やらファイルを取り出してをめくる。

 冒険者の情報はある程度ギルドに登録されている。パーティーを組むっていう事は命を預けるって言うわけで、パーティーを組もうという話をした人間の情報を、ある程度得ることは冒険者の基本である。もちろん犯罪をすれば、犯罪歴も書いてるのでうかつなことはできないし、パーティーも組みにくくなる。そういった経歴に傷がある人間はソロでいることが多い。だからソロの冒険者は特に警戒されるのだ。まあ、俺も今はソロなんだけど……


 

「あの人はそこそこ有名な冒険者さんです。『災厄のカサンドラ』Bクラスのソロ冒険者。血のような赤い髪に、刀と呼ばれる東洋の武器を扱う冒険者です。どんなピンチも、一人だけで必ず帰ってくるそうです。パーティーでダンジョンに潜っても、一人で戻ってくるそうです。腕は確かですが、パーティーを組むのはあまりお勧めできないかもしれないです。あくまで噂だけなので実際にどんな感じかはわかりませんが……魔物のいないところに足跡は残らないといいますしね」

「そうなんですか……ありがとうございます、アンジェリーナさん」



 やっぱり訳ありか、俺は彼女の方を見る。席でエールを飲みながら俺を待っている姿をみているとただの美しい少女にしかみえないのだが……まあ、そもそも冒険者だったり、ソロで活動をしている時点で何かを背負っているのだろう。でもさ、彼女は俺を助けてくれたのだ。そして俺の言葉を聞いて泣いていた時の顔を見る限り悪い人間には思えないのだ。だから俺は自分で話してから、彼女が信頼に足る人間かを見極めようかと思う。それで騙されたら俺の見る目がなかったというだけだ。



「話は変わりますがシオンさん……食事はいつ行きましょうか? 最近ギルドの仕事も落ち着いてきたんで休みも取りやすいんですよね」

「え、本当に俺でいいんですか? 二人でってことですよね?」

「ええ、シオンさんにはいつも丁寧な報告書とかで助けてもらってますからね。ソロでも安定して冒険できそうですし、新しい門出を祝いましょう」

「では近いうちに連絡をしますね」



 よっしゃぁぁぁぁぁぁ!! 俺にも春がきたのか? 二人でご飯をしてくれる女の子なんて、アスくらいしかいなかったし、それも幼馴染だからってだけだしな。アルゴーノーツにいた時は女の子とのお誘いもあったが、イアソン目当てばかりだったのだ。いやいや、誰にでも優しいアンジェリーナさんのことだ。これも仕事の一環と考えているのだろう。にやけそうになった顔を俺は引き締める。



「すまない、待たせたかな」

「別に構わないわ、それに新しい街のギルドをみるのは嫌いじゃないわ。この街のギルドのレベルもわかるしね……ってやたらにやにやしているけど何かいいことでもあったの?」

「いや、ニヤニヤなんてしてないって。俺はクールで有名なシオンだからね。ちなみにここの料理のお勧めは香草のポークソテーが美味いよ」

「へえ、じゃあいただこうかしら。楽しみね」

「カサンドラの方こそやけに上機嫌だね。そんなにポークソテー好きなの?」

「その……人とご飯を食べる久しぶりだったからついテンションがあがってしまって……変かしら?」

「よし、今日は俺がおごるからなんでも好きなものたべていいよ!!」



 カサンドラは恥ずかしそうに顔を真っ赤にして、上目遣いで言った。かわいいぃぃぃ。そして俺は地雷を踏んでしまったようだ。俺話題を変えるのもかねてエールといくつかのお勧め料理を注文する。



「それじゃあ、パーティーを組むかどうかの話し合いをしようか。そうだな……まずは、お互いのギルドカードを見せ合おう」

「ええ……そうね……それが一番よね。私も説明の手間が省けるし」



 そういうと彼女はちょっと嫌そうな顔をしながらもギルドカードを差し出した。なにが書いてあるんだろうな? 正直俺の方が、弱すぎて、さっきの話はなしって言われそうでこわいんだが……



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Bランク


カサンドラ

ギフト『魔性の預言者』



近い未来をみたり、予言をさずかったりできるものの、***********************




スキル


上級剣技   剣を持った時にステータスアップ、武器の性能を極限まで出すことができる。

魔性の混血  魔族の血により、身体能力が人よりはるかに高く、魔術への耐性が高い。

火耐性EX   いかなる火属性の攻撃も受けない。


炎剣フランベルジュ 詠唱をしなくても火系の魔術が使用可能。また熟練度によって剣だけでなく、自分の体の部位どこにでも火の魔術を宿すことができる。     




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 なんだこれ、ギフトの説明が見えないうえに、スキルに混血? っていうか俺の中級剣術とかと違ってユニークスキルばっかりなんだけど……俺は怪訝な顔をして、彼女をみる。すると彼女は申し訳なさそうにこういった。



「あなたに二つ説明しないといけないことがあるの……まず一つ目は、この赤い髪でわかると思うけど私は純粋な人間じゃないの……魔族との混血なのよ」

「は? 魔族?」



 俺は信じられない言葉に思わず聞き返す。魔族ってあの魔族か? 確かに人間離れした炎の様に赤い髪は珍しいと思っていたが……



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