第0章 プロローグ②

人は誰しも天使(清らかな心)と悪魔(汚れた邪悪な心)、2つの顔を持っている。そして天使と悪魔は表裏一体の関係にあって経験や体験,生活環境の中でバランスが変化し、個々の人格となって形成されていく。


時計は深夜0時を回ろうとしていた、女が自室のベッドで横になっていると廊下の方から異臭が漂ってきた。臭いは時間と共に強くなって、更には白い煙まで携えドアの隙間から流れこんでくる。今夜は両親が不在で家には自分と妹の2人きり、妹のことが気になった女は起き上がると煙の立ち込める廊下へと向かっていった。煙は妹の部屋に近づくにつれて濃くなり視界も4~5mと言った所か、女もこれほどまで困難なものとは思ってもみなかった。

「・・・『しまった、このままでは私の方がお陀仏じゃない』」

女はとうとう身動きが取れなくなってしまい、ついには立ち込める煙を吸い込んで意識を失ってしまった。

「・・・『もうダメだ・・・』」

女の周囲には炎が差し迫っていた。


意識を取り戻すとそこは病院のベッドであった。女は倒れている所を消防隊員に救助され一命を取り留めていた。複数の火傷を負ったものの命には別状なく、1週間もすれば退院できる見込みとのこと。しかし代償として命の次に大切にしてきた自慢の長い髪を焦がし心に悲しみを背負うこととなってしまった。そして妹の方はと言うと気づいた時には火の手が付近まで差し迫り、足が竦んで動けずになっている所を窓から入ってきた消防隊に救助され運良く怪我ひとつ負うこともなかったらしい。火事の原因は妹の部屋が1番激しく燃えていたことから放火やタバコ,火の不始末等は考えにくくはっきりとした原因が特定できず、最終的にはコンセント付近に溜まったホコリによる漏電(トラッキング現象)と言うことで片づけられた。


これはある女性に降りかかった転落人生の序章でしかなかった。

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