第5話 また、どこかで

移された写真のどこを見てもヒントが隠れていそうには思えなかった。ただ静止画を見せられている状態で僕達はただ眺めているだけであった。

すると横からミミアが突然変なことを言い出す。

「この画像、私の祖父の部屋に似ているんだけど」

みんなそんなことがあるはずがないと思っていた。

少し見て来ると言ってどこか行ってしまった。

取り残された僕達はしばらくずっと画像を眺めてどこかにヒントがないかを探っているとバルグが唐突に呟く。

「天井の隅に黒いシミなんてさっきありましたっけ?」

みんながバルグの指を差した方に注目するとジワジワと浮かび上がってくるのが分かった。

もしかしたらこれは何かのヒントではないのかと思った。

そうこうしているうちにミミアが戻ってきて発見した事を伝えた。

全員で探しに行こうとみんな意気投合しているとミミアが顔を赤めながら叫んだ。

「今は私の部屋なの!」

イグナは嬉しそうにしているのを見て頭にきたのか、彼の耳元に二丁の拳銃を近づけ発砲して二度とその顔をしないように忠告した。

だが、どっちにしてもまたここまで往復するのは時間の無駄なので、ミミアの家まで行くことになった。

そして着いてからミミアにさっきの黒いシミのような場所の所を見てくるように伝えた。

これで見つからなかった場合、違う所を探さなくてはいけなくなる。

待っている間にみんなでもう一度確認して他にヒントがないかを探してみた。

すると家の方からガタンという物音がした。

隊員全員で家の方を見る

しばらく何があったか分からず待っていると家から出てきて何もなかったと言ってきた。

それを聞いて僕達はガッカリしていると後ろのほうで黙っていたゼバスがどこら辺あたりを調べたかを聞いてきた。

天井をあちこち調べたとミミアが言うと黙ってゼバスが家の方へ向かって行った。

あまり相手のことには手を出さないゼバスがここまで直感的に行動するのは珍しいことであった。

ミミアが止めようと追いかけるがゼバスは家の前まで来ると玄関には入らずに少女の部屋の外壁に立って壁を軽く叩いた。

ゼバスは分かったように近くのレンガを押し出すとその横から小さな木箱が出てきた。

これを取り出すと微笑みながら少女に渡した。

「あっ、僕はここにある事を少し前に確証していたよ」

完全に言い方を間違えてしまっているこの言動には隊の全員が何も言い出せなかった。

そして少女は何も言わずに受け取ると静かにその箱を開けた。今度は何もロックはかかっていなくすぐに開いた。

全員の希望と期待が詰まっているその箱の中には何か光っている物が入っていた。

僕たちはそれが金目のものにしか見えなかったが、少女だけそれを見た途端何かを察したかのようにすぐにネックレスのクリスタルに取り付けた。

付けるとそこからおじいさんの声が聞こえてきた。

ミミアはこれを聞くと目から涙がこぼれてきていた。

音声を聞いているとミミアの祖父も僕たちと似たような財宝を探していたらしいが、そこは途中で帰れなくなるような場所であったため。ここに記録した音声を残しておいたらしい。ちゃんと説明して行こうと思っていたが、ミミアに止められるのを恐れてここに遺言として隠しておくことにしたらしい。

そしてミミアが大きくなって私を探すようになったら見つけ出せるように世界の各地にヒントを残しておいたらしい。このヒントというのはおそらく噂のことであるだろう。

こうして僕たちは一つの謎を解決できたというわけであったが結論として財宝はなく、失踪したおじいさんの遺言であった。

今まで探し求めていた財宝がなく全員ががっかりしているとミミアのおじいさんが最後に変な言葉を言い残した。

「最後に言いたい事がある。私は戻れない選択をしたが、きっと戻って帰れる方法があるはずだ。そのヒントは今にはない技術力がいる。これを見つけたのならばおそらくそれは可能であるだろう。だから、もしもこの声が届いている時には私の見つけた財宝を持って帰ってほしい。」

本当に財宝は存在し、すでにミミアの祖父がたどり着いているらしい。旅はこれで終わらずまた探しに行く理由ができた。

ミミアは涙を拭うと僕たちに言った。

「見つけてくれてありがとう。おかげでスッキリしたよ」

これもまた運命といえるのだろうか。本当はここで財宝を見つけるはずだったものが財宝ではなく遺品を探し当てることになり、でもそこには更なるヒントが隠されていた。小さな木箱のそこにはミミアの祖父が残したメモと地図があった。


そのメモには昔、イグナリア王国のルミジヴァル大学のタパミ・リアストに財宝について聞いたらしい。この名を見て僕は驚いた。なぜならタパミ・リアストという名は僕の母の旧名だからである。確かに僕の母は研究所の人だったことは知っているが、幼い頃の僕には一言も財宝については話してこなかった。亡くなる前の嗄声でこの懐中時計だけは無くすなと言われた事だけは鮮明に覚えている。

よく考えるとこの探検隊に入団しようと思ったきっかけは母のノートに書かれていた母から遺言であった事を思い出す。

僕の母はいろいろと不思議な部分が多く、今もよく母の事を知らない。

少なくとも今までよりも確実に財宝に近づいていて母もこの財宝について何かしら関わっている事は間違いない。

ミミアに別れを言って僕たちはまた冒険に出かける。

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真実の時計仕掛けと光道のクリスタル 光城志喜 @koojyoo

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