第33話 フォール防衛戦、開幕
「全員、落ち着いたみたいだな。それじゃあ、さっき聞いた情報から配置と役割を決めたから、確認してくれるか?」
愛斗たちが落ち着いたのを見計らって、ギルドマスターは愛斗と練の配置について話し始めた。
「まず、アイトは前線に出なくていい、こちらの指示で一度、自分の使える最大の魔法を使ってもらいたい。今のところはスタンピードの出鼻を挫くのか、それとも途中で相手を分断するために使うのか、どちらかは決めてはいないが、とりあえずはいつでも使えるようにしておいて欲しい。次に、レンは前線に出ていく奴らの少し後ろで戦ってほしいんだが、一つ頼みがあってだな、スタンピードとなると、前線で戦う奴らの武器の消耗が激しくなるだろうから、手持ちの武器をそのまま前線の奴らが使えるようにしてほしいんだ。もちろん、その分の金は払うから、頼まれてくれないか?」
「……いいですけど、いくら出せます? そもそも、全額ギルドで負担するんですか?」
「流石に、全て出すのは厳しいな……。よし、ちょっとこっちに来てくれるか、同じエリアで戦う奴らで、欲しがる奴を募って今のうちに売り払っておいてくれるとありがたい」
そう言って席を立つギルドマスターに練はついて行ってしまった。
残された愛斗と勇は、それを見届けると、何となく気まずくなりながらも、先に勇が口を開いた。
「さっきは悪かった。早とちりしていきなり襲い掛かるような真似をして……。とりあえず、色々と話したいことはあるけど、今はこの町のために力を貸してくれ」
「気にしなくていいよ。こっちも練がだいぶ冷たい態度とるようになっちゃって
申し訳ない……。折角の同郷の相手なのに。それにこのまま無視して他の町に行ったりなんて出来なさそうだしそんなことしても寝覚めが悪くなるから、一緒に頑張ろう」
「練さんに関しては俺が悪いからな……。とりあえず、少しでも力になれるように頑張ろう!」
二人は握手をすると、席を立って歩き始めた。
とはいえ、愛斗はまだこの町に来たばかりでどこに行けばいいのか分からなかったので、勇に連れられて歩き出すのだった。
空には分厚い雲があって見えてはいないが空高く日が昇っているだろう時間帯、何やら町全体にピリピリとした空気が溢れ始めた頃、外壁すぐ近くに待機していた冒険者たちの前に数匹のゴブリンが現れた。
それは、その場にいた冒険者たちによってすぐに対処されたが、ついにスタンピードが始まる、と皆が気を引き締めた。
愛斗は、外壁の上から、傍にいる冒険者ギルドの職員と遠距離攻撃を持つ、魔術師や弓兵たちと待機していた。外壁の外、ゴブリンたちが押し寄せてくるであろう場所では、勇や練、そして他の冒険者たちが待機しており、ゴブリンたちが来るのを今か今かと待ち構えていた。
結局、愛斗はスタンピード中のゴブリンたちの中心辺りに魔法をぶち込み、分断して最前線で戦う冒険者たちの休息時間を作ることになっていた。
そして、ついに愛斗たちに伝わってくるほどの地響きを感じ始めた。
一匹一匹は軽くても、集まれば重くなる。
そのことがはっきりと分かるほどに、至る所から地響き、そしてゴブリンの鳴き声が聞こえ始めた。
それから十分としないうちに、森の奥、木々の奥に無数のゴブリンたちが視界には言い始めた。
ついに、スタンピードが、フォールの町防衛戦が始まるのだった。
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