第11話 魔法を使ってみようの巻

 アリスから渡された本をその日のうちに読み込んだ愛斗は翌日、アリスと一緒に広場へと来ていた。


「……魔法については分かった? ……今日は実践する……前に、一つ注意事項。……君は、私が許可を出すまで、本気で魔法を使うことを禁止。……理由は分かってると思うけど、君が本気で魔法を使ったら、自分にも、そして周りにも被害が出る上に、その規模が分からないから」


 広場でお互いに顔を見ながらアリスは早速釘を刺していた。

 愛斗のことは既に情報を聞いていたこともあって、アリスにはギルドからも直接愛斗に対して注意をするように言われているのだ。

 アリス自身も、これまでの人生で愛斗ほどに魔門が大きい存在にあったことは無かったので、どれだけのことが起きるのか分からず、不用意にリスクは冒さないつもりだった。


「でも、一回だけ使っちゃダメですか……? ほら、自分の最大値をしっかりと把握しておかないとどこまで出来るのか分からないですし!」


 ……とはいえ、愛斗だけは納得出来ておらず、もしかしたらこれが自分の武器になるかもしれない、と諦められずに食い下がっていた。


「……絶対にダメ。……自分ではっきり分かっていないようだし、渡りモノだからこそ知らないだろうけど、君の魔力量は置いておいて、魔門はこれまででも類を見ないほどに大きい。……それを全力で使おうとしたら、どんな災害が起こるか分からない。……ただ火を灯すだけでも全力でやってしまったら、この町ぐらいなら消せとばせるような威力を出せるほどに君は危険。……そして、全力でやるという事は君の魔力を全て使い切るという事。……もしかしたら使わざるを得ないこともあるのかもしれないけれど、一気に全ての魔力を使い切るというのは身体にも負担がかかるし、下手をすると自らの生命力をなんとか魔力に変換しようとしてそのまま死んでしまうこともある。……だから、自分で自在に魔法を使えるようになったと私が判断するまでは絶対に使ってはダメ」


 これまであまり厳しい様子を見せなかったアリスが、かなりの厳しい口調と顔で念を押すので、愛斗はしばらくは諦めることにした。


「……それじゃあ、実際に魔法を使う事から始める。……手を貸して」


 さて、とはいえ魔法を使えるというだけでも現在かなり楽しみになっている愛斗は、アリスの言葉にって早速、手をアリスへと出した。

 すると、アリスは愛斗の手を両手で掴み、目を閉じた。


「……今から、君の魔力、魔門を通じて私が無理矢理魔法を使うから、どうやって魔力を使うのか掴んで。……それが出来れば、とりあえず魔法は使えるから」


 アリスがそう言うや否や、愛斗が返事をする前に愛斗の中を何かが暴れる感覚に襲われた。

 声も出せずに、未知の感覚に呻いていると、アリスがいつの間にか目を開いてこちらを見ていた。

 愛斗もその目を見て、直前に言われた言葉を思い出すとその感覚を忘れないように、自分でも出来るようにコツを掴もうと今何が起きているのか把握することに努めた。


 しばらく、そのままでいると、愛斗はようやくアリスがどうやって魔力を動かしているのかが分かるようになってきた。

 すると、それまで魔法を放たずに魔力を動かしているのに徹していたアリスが、ついにその魔力を魔法として発現させた。


 ボッ


 そこには、拳より少し大きいぐらいのサイズの火の玉が、愛斗の目の前に浮かんでいた。


「! っ!! っ~~~!」


 初めて、手伝ってもらったとはいえ、自分の力で魔法を使えたことに愛斗は興奮して、しばらく声にもならぬ声で、腕を上下左右色んな方向へと振り回しながら喜んだ。


「……ひとまず、魔法が使えそうなのは分かったから、次は一人でやってみて」


「! っはい!」


 一人で興奮している愛斗に、アリスは次は一人で魔法を使えるように指示を出した。

 愛斗は上機嫌のままさっき出来たことを何とか再現しようと、少し時間はかかったものの、自分一人でも、先程と同じように目の前に火の玉を出すことに成功するのだった。

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