第44話 衝突を防げ

リングの拠点、上空にて。


「うわぁ…」


暁がレーダーに引っかからないギリギリのところで声を漏らす。


「流石に気味が悪いわね」


「これを3人は流石に無理があると思うけどね」


タスクとシズも同じ様な意見だった。


「というかタスクさん、その機体は?」


「ん?これかい?」


タスクの機体はray-Dから別の機体へ変わっていた。


「ray-Dを改修した機体で『大連だいれん』と言うらしい」


タスクの機体はベルと九郎によって改修されていた。


性能はray-Dと比較にならないほど優秀な物に仕上がった。


「全部殺せばいいのね?タスクさん?」


「……」


(どうする?殺せば楽だが…そんな簡単な訳がない、最高幹部の奴らもいるはずだし…)


「シズちゃん、今回のミッションは殲滅じゃないよ、私達の目的はあくまで『リングとムーンの衝突を防ぐ』それだけよ」


続けて暁は。


「やむを得ない場合は殺せば良いと思うけど、出来るだけバックパックを狙ったり戦闘不能に持っていったほうがいいと思うわ」


ベルに言われた事を言った。


「そうだね…その通りだ、暁君流石だね」


「ありがとうタスクさん」


「…」


(ふ〜ん…お似合いだね〜)


シズが良からぬことを考えていた。


「シズちゃん?どうしてこっちばっかり見てるの?」


「ん?いや〜、気の所為じゃない?」


「「?」」


『さて、所定の場所に移動できたか?タスク、暁、氷の女帝』


オペレーターの男性が3人に通信を繋げてきた。


「氷の女帝はやめて」


『悪いな!そんな事は置いといて、状況はどうだ?』


「とんでもない数が集結してますよ」


「ざっと…三千」


タスクが数を報告するが…


『数は多いが奴らは隊長機を撃墜すれば少し混乱が起こる、その隙に通信設備を破壊しろ』


「通信設備はどれですか」


『主に塔のようなものだが、アンテナをすべて破壊し、司令塔を崩せば通信は遮断できる』


「それでなんとかなるんですか?」


『ああ、通信障害を起こせば両軍の動きは止まる、そこからが『薔薇部隊』の出番だ』


「薔薇部隊?」


『ローズとブルーローズこと九郎さんの二人で結成された部隊だ』


「そのまんまですね」


『さて、作戦行動に移ってくれ』


「「「了解!」」」





「よし、いいか!よく聞けよ!」


リングの指揮官が前に立ち大声で叫んでいた。


「これから始まるのは『聖戦』だ!勝った者が正義の戦だ!」


「その通りだ、諸君にはムーンの連中を倒してもらいたい!」




「…暁君、準備は良いかい?」


「okだよ」


「よし…射撃開始!」


その瞬間、辺りは光に包まれた。




「なんだ!?」


「フラッシュバンです!」


「くっ…何処からだ!」


リングの隊員達が急なフラッシュに動揺していると。


ドゴォン!


「次は何だ!」


「アンテナが破壊されました!」


「何処からだよ!」



「まずは一つ」


シズは対物ライフルを構え直す。


『シズ君四分の一を破壊、次は左のアンテナだ』


「了解タスクさん」





「よし!突撃だ!暁君!」


「了解!」


タスクと暁が高速でリングの拠点へ降下していった。


「隊長機だけを狙え!」


タスクの機体が目標を捕らえ、バックパックを一閃。


「なん…だと…」


するとバックパックが火を吹き爆散した。


「クソ!隊長の仇!」


後方から攻撃を試みる隊員だが…


「甘い!」


暁の能力『光』によりバックパックを熱せられ、引火した。


「なんだと!?」


「ナイスだ!暁君!」


「どういたしまして!」



「ん〜、イチャついてるねぇ〜…さて…ロックオン…ファイア」


対物ライフルの引き金を引く。


弾は上手く敵を抜けて、アンテナを破壊した。


「よし…あと2つ」




「よし、シズ君が上手くやってくれている!」


「足止めは任せて、シズちゃん!」


次々と隊員を戦闘不能に追い込んでいく二人だったが…


「…させねぇよ」


突如、上空より謎の機体が現れた。


「「!?」」


「ほぉ〜、お前、タスクか?」


「…その声は…リング最高幹部ダガー」


「大正解だぜ、タスク」


ダガー…リングの3代最高幹部であり、その実力はあのナイフをも凌ぐ。


「さて、裏切ったのは知ってるが、その機体…」


ダガーが言い終わる前にタスクがブレードを振り切った。


「おいおい、最後まで言わせろよ」


しかしそれをダガーが受け止めた。


「ちっ…流石は最高幹部と言ったところかな?」


「まぁな、それはそうと…その機体…まぁいいや、とりあえずお前達には悪いが消えてもらう」


ダガーはそのコードネーム同様にダガーをメイン武器にしている。


「タスクさん!」


「!」


暁の叫びにタスクは即座に移動した。


「あ?」


ここで暁の能力について補足しよう。


暁の能力『光』は自身を移動させるだけではなく、先程の閃光の様な『現象』を発生させることができる。


暁の移動はローズの『空間転移』とは違い、自身を光の速さまで加速させ、移動させるというもの。


「!?」


突如ダガーが吹き飛ばされた。


しかし暁は先程の場所と変わっていない。


「何が起こった」


今のは暁の能力『光』を瓦礫に付与したことによる『光速投射』である。


「危うく死ぬところだったぜ」


「何で生きてんのよ…」


「当たりどころかもな?」


「ちっ…やっばり練習すべきだったかしら」


「生半可な技を実戦で試すもんじゃないぜ!」


ダガーは暁に向って短剣を投擲した。


「ふん!」


その短剣をタスクが能力『岩』で強化した腕で受け止める。


「ほ〜、まさか弾かれるとは…二人共能力保持者か」


「そういうあんたもだろ?」


「ほほ〜ん、よくわかったな」


「やっばりか」


「俺の能力は『感知』、その名の通り自身へ向けられた攻撃を察知できる」


「なるほど不意打ちを安安と防いだのはその能力のせいか」


「その通り…だからこういうことも…出来る!」


突然ダガーが瓦礫を上に投げ飛ばした。


すると、爆裂音が鳴り響いた。


「今のは!?」


『狙撃を防がれた!』


シズから緊急通信が送られてきた。


「なんだと!?」


「今のは明らかにダガーには向けてない…なのになぜ!?」


「それは秘密だ!」


ダガーは暁を蹴り飛ばすと、タスクに攻撃を仕掛けた。


「くっ…!」


「重い!」


「まだまだ動きにキレがないなぁ!」


『狙撃開始!』


シズの弾丸がアンテナを直撃した。


「おいおい、マジか!」


「?」


「今の射角…トンデモない奴がいるみたいだなぁ!」


「どういうことだ?」


「タスク…お前のところの狙撃手、結構やり手だぜ…ビビっちまったよ」


「訳がわからないわ…どうして困惑してるのよ…」


「あ?さっき俺が瓦礫で狙撃を防いだだろ、あの時は察知できた…だが、今のは察知出来なかった…それだけだ」


『タスクさん!暁ちゃん!攻撃続行!』


「「!」」


先程まで解いていた戦闘態勢を再び整える。


「さぁ…楽しもうぜぇ!」

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