第51話 スペイン編⑥

傑のノーモーションから繰り出されたパスに観客が”ワッ”と歓声をあげ、スペイン代表の選手達、特にアランのカバーに来ていた選手は反応できなかった。


(なんだ今のは!?アランに隠れる形でポジショニングしていたのはまだわかるが、いきなりボールが足元を通り過ぎていった!?こんなの味方ですら・・・・)


そんな考えは甘く、傑の凄さを知っていたチームメイトはすでに足元にボールを収めていた。


「な・・・!!」


(驚くだろ?俺だってそうだよ!)


彼は、キックオフ前に傑にこう言われていた。


「おれとアランがマッチアップしたらカバーに入ってる選手に向かって走ってくれませんか?」

「ん?別にいいけど・・・」



(安請け合いするんじゃなかった・・・。こんなパス受けてしまったら、もう他のやつじゃ・・・・)


「ははっ、最っ高だね」


ボールを受けたチームメイトの口からはただそれだけが出てきた。

それしか言えないほど現状考えられる中で最高だった。


(何だよ。完全フリーだし、相手も全く反応できてないし、動けてるのチームの奴らだけだし・・・)


「サイド!!」


傑からが出る。


「オーケー」


そのままサイドに散らす。

傑はアランを置き去りに相手の最終ラインに向かって走っていく。


「全く、こんな簡単に・・・!!」


一連のプレーを見ていたアランは、悪態を突きながら傑を追っていく。


(真後ろにいればラストは持っていかれないはず・・・)


最終ライン付近についたところで上がっていたサイドの選手が、SBとマッチアップしながら、中に入る手段を探していた。


「ここ!!」


傑が中からサイドに走りながら足元に要求する。

アランも、ピッタリと傑の背中に手を置き距離を保つ。


「いいから出せ!」


アランがついている事を確認しているサイドの選手は、戸惑っていたが傑ならとSBをかわし、傑の足元にボールを出す。


「流石に舐めすぎだ・・・!!」


アランは、自分のことなど全く気にされていないかのような行動に苛立ってボールめがけて足を出した。


「!?」

(ボールが・・・、どこに!?)


見ていなかったアランはボールがないことに気がついた。


「裏に抜けろ!!」


から傑の声が聞こえる。


「ここで、ベルカンプターン!?」


それじゃゴールに背を向けることに・・・・。

ゴールに、ボールに背を向ける傑を見て本日2度目の驚愕を受ける。


に今にもシュートを放とうとしていた。


『振り向きざまインパクト』


この試合後、しばらくニュースで取り上げ続けられ、スペインの子供たちが憧れるプレーの誕生だった。






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