第14話 招集通知

日本に帰国して、数日後、サッカー協会から代表の招集通知が来た。

選考会は、スペインにいる間に終わっていたが、傑の顔が世間に出るまで一枠開けておいたらしく、異例の招集を受けた。


その後、指定された場所に行くと、そこには佐伯隼人や猛など知っている人、全くもって知らない人が傑を合わせて22人いた。


「猛、お前代表だったのか!?」


「おうよ。傑がスペイン行ったあとスカウトされてな、気づいたらここまできったてことよ」

どうだ、驚いたろ?

と面白そうに言ってきた。


「なんで教えてくれなかったんだ?」


「ん?仕返しだよ。仕返し」


どうやらスペインでのことを黙っていたお返しみたいだ。


猛とそんな話をしていると、佐伯が話しかけてきた。


「やぁ、傑くん。久しぶり」


「ええ、お久しぶりです」

じゃ、と逃げようとしたが不可能だった。


「僕は嬉しいよ。やっと君とサッカーができるんだ。これ以上の興奮は今まで味わったことがない!」

体をクネクネさせながら嬉しそうに言う。


「お、おい、傑」


「何?」

猛が恐る恐る聞いてきた。


「この人、こんな人だったか?」


「ああ、元からこんなだよ」


「ええ〜」

猛は、憧れていたのだろう、ショックを受けていた。


すると

「おい、お前!」


「ん?」

誰かは知らないが怒った雰囲気で詰め寄ってきた。


「隼人さんと馴れ馴れしくするな!スペインじゃ活躍したみたいだが、お前が馴れ馴れしく話しかけていい人じゃねぇんだよ」


「なぁ、猛」


「なんだ、傑」


「代表ってこんなのばっかなの?」

俺たち以外は変人しかいないのだろうか。

不安になってきた。


「おいっ、聞いてるのか!」


「え、あ〜すみません。おかしなことを言われたもんで」


「おかしなことだと!?」


「ええ、まぁ。そもそも話しかけてきたのはそこの変態ですし、隼人さんと言えるほど実力はこの変態にはないですし」

スペインに行ってから、日本の注目選手はチェックしてきた。

もちろん佐伯もいたが、期待させるほどではなかった。


「お前・・・・!?」


「ってか、そもそも誰?」


「俺は、三島康太だ!なぜ知らない!隼人さんに認められたFWの一人だぞ!」


「あ〜、知らないかな。この変態に認められるってことは、あなたも大概の変態ってことか」

日本代表、恐るべし!


「このっ・・・・隼人さんっ、なんか言ってやってください!」


「え?」


「この生意気な新人にっ!」


「まず、君誰?」

お〜と、変態によるクリティカルヒットだなこれは。


「え!?俺ですよ。あなたと2トップ組む三島です!」


「あ〜、傑君はどう思う?」

なんで、俺に振る?


「そうですね。この人よりあそこにいる人の方が出来そうですけど・・・・」


その視線の先には、ボ〜と立っている人がいた。


「あ〜田中君か」

なんと覚えやすい名前なのか。


「先程ボールを触っているのを見ましたが、すごいですね彼」


その言葉に、佐伯と猛は驚いていた。


「「傑(君)が褒めた!?」」


え、なに。俺だって素直に褒めることはありますよ。

「とりあえず彼を紹介してくれませんか?」


放心状態の変態2号を無視し、変態1号佐伯と猛とともに田中の元へ向かった。


◆◆


僕の名前は、田中。およそこの国に130万人はいると言われ、名字ランキングでは、第4位の誉ある名前の男だ。


そんな僕の元に今、”至宝”佐伯隼人とテンションの高い高崎、そしてあの三条傑が来た。


なんで?なんで僕の元に?


「初めまして、三条傑だ」

悪魔が手を出してきた。


「は、初め・・・まして。田中です」


「僕は佐伯だ。これからよろしくな。彼に認められるのは僕が先だと思ってたんだけどね・・・・・」


「よ、よろしく」

ものすごく険悪な顔で挨拶された。


「よろしくな田中!」

普通だ!この人は普通だ!


「よろしく!高崎!」

僕は、救世主を見るかのような目で彼をみた。

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