第3話 ある夏の休日

体育でサッカーをし、憂鬱となった後の休日。


傑は、遥ともう一人、ある人物とともにサッカーの試合を見ていた。


「なんでこんなことに・・・・・」


2日前、珍しくサッカー部が休みで久しぶりに傑と猛、遥の3人で下校していた。


「あっそうだ。俺たち土日試合なんだよ。良かったら見に来ねえ?」


「え?」


傑の隣を歩く遥が苦虫を噛んだような顔をしていた。猛はそれに気づかずに


「一回生で試合を見れば興味湧くって、俺が保証する!!」


「金はねえぞ?」


「100円でいいんだ」


「ねえよ」


「高崎くん。ジュース代奢らせようとしても無駄だよ。傑はケチだから」


「ケチじゃねえ。倹約家と言え」


傑と遥はうまく話をそらしたと思った。だが、そんな空気を読まないのがこの男だ


「で、結局見に来るの?」


「あ〜。考えとく」


「それ絶対来ないやつだろ!」


「まあ、興味ないし」


そう言った傑の顔は無表情だった。


それでも引き下がらないのが猛である。


「ならこれはどうだ?次の試合な佐伯隼人が観に来るらしいぞ」


どうだ!これなら来るだろ!?と期待する態度が全面に現れている。


それには流石の傑も反応した。


「なんで高校生の試合に?」


「ほら、一つ上の先輩に”佐伯優”って人がいるだろ?」


「なるほど、弟の試合を見に来るのか」


それまで会話に入ってこなかった遥が身を乗り出し


「行こう、傑。絶対」


「は?なんで」


「行こう」


「おまえ・・・・。イケメン目当てだろ・・・」


「行こう」


有無を言わせぬ顔で迫られ傑は思わず


「お、おう」


行くと返事をしてしまった。


そして2日後


「いや〜。久しぶりにの出てる試合を見るな〜」


楽しげに話すのは、”至宝”佐伯隼人だ。サングラスにキャップ、ジャージと極力目立たない格好をしている。


「あっ、あのっ。今日はなんでここに?それも一人で」


遥が緊張した様子で尋ねる。


「本当は協会の人がお付きで来る予定だったんだけど逃げてきたんだ。そしたら君を見つけたんだよ。久しぶり”悪魔くん”」


五年ぶりだね。と親しげに話しかけてきた。それに対し傑は、


「あ、人違いです」


と返した。

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