カツモトの冒険

Kohr.435円

0日目 笑のある先生の噂

谷武高校、屋上にてーーー


勝本先生はひと仕事終わらせ、屋上にタバコを吸いに来た。屋上にある椅子に座り、タバコを出すと、気がつけば隣に椿が寝そべっていた。


椿は先生の噂の話から、些細なことから昔の話を聞いた。


ここから、椿は勝本先生の過去を知ることになる。



屋上で、勝本先生は椿に気づいた。


〈勝本先生〉うわわわぁぁ!!


〈椿〉うを!! なになに!?


〈勝本先生〉つ、椿か? なんでここに?


〈椿〉な、なんでって放課後なんすけど?


〈勝本先生〉あ、そうか、放課後だもんな。いやお前、この椅子は教員のスペースだぞ、まさかタバコ吸ってんじゃないだろうな?


〈椿〉は? 何言ってんの? ここが落ち着くからちょっと寝そべってただけだよ


〈勝本先生〉そ、そか、なんかあったのか? 聞きたくねえけど、一応なんとなく聞いとく


〈椿〉いや! なんとなくかよ! てか、先生ならもっと気にしろよ!


〈勝本先生〉えー、めんどいじゃん


〈椿〉め、めんどい? 先生がそんなこと言って良いのかよ? しかも棒読みだったぞ


〈勝本先生〉あ〜、まあ、いいんじゃねぇ?


〈椿〉いいのかよ!!


〈勝本先生〉そんで? なんかあったんだろ? ここで黄昏てるってことは……


〈椿〉ん…… もうすぐ文化祭だろ、そのことだよ


〈勝本先生〉喧嘩でもしたか? クラスのやつと


〈椿〉いや、喧嘩とかじゃなくて、不安なことがあるんだ。実は今やってる部活のことで……


椿は、『ある悩み事』を勝本先生に話した。


〈勝本先生〉なるほどな、でもしょうがないんじゃないか? もう決定したことなんだろ?


〈椿〉本人は行きたいけど、自信がないんだってよ


〈勝本先生〉自信ね…… 自信はそんなに必要なんか?


〈椿〉は? そりゃあ自信なきゃなんもできないじゃん


〈勝本先生〉まあ、そうだな。だけどな、自信なんてものは後でいいんだよ


〈椿〉後で?


〈勝本先生〉これは受け売りなんだけどな、「自信というものは行動起こした後々に現れる心の音楽みたいなもん」なんだとよ


〈椿〉え? なにそれ? よくわかんないよ……


〈勝本先生〉はっははは!! だろうな! おれも最初は、よく分からんかった。まあ、今もそんなわからんけどな、少しだけ分かるんだ、言いたいことが


〈椿〉へぇ〜! 先生でもわかんないの? そういえば、先生ってさなんかその傷どうしたの? もしかして、昔ヤンチャしてたの? でもそんな噂、聴いたことあるんやけど


椿は、左目の下にある少し小さめな傷が気になり、勝本先生本人に聞いてみた。


勝本先生と言えば、地味顔で無精髭のメガネ掛けたタフな中国語教師というふうに思われている。しかも、目の下に傷もあり、学校では昔ヤンキーでヤンチャして付けた傷でちょっと近寄り難い先生というイメージが少々付いてしまっている。実際は、そうでもない。それにいまはご結婚もされていて子供もいる。年齢は、37歳だ。まだ十分に若い先生だ。


〈勝本先生〉あ〜 これか? そうだな、昔ちょっとな、てか! どんな噂だよ!!


〈椿〉先生の過去聴いてもいい? なんかヒントがある気がする!


〈勝本先生〉はぁ〜! めんどくせえよ! 仕事終わったばかりだぞ! てか、ヒントなんてねえよ


〈椿〉いいじゃん! あんた先生だろ? 助けてくれよ


椿は勝本先生の顔近くで真剣な顔で頼んだ。


〈勝本先生〉顔ちか! ! やだよ! なんでお前におれの過去話さないといかんのだ! もし友のことを考えてんなら、なおさら自分でどうにかしろ!


〈椿〉くっ…… 今の俺じゃあ、どうしたらいいのかわかんねえんだ、でもあいつは俺の仲間だ、どうにかしたいんだ、少しでいいから…… お願いだよ、先生、なんか聴いたらスッキリするかもしれないんだ、なにか掴めるかもしれないんだ……


〈勝本先生〉つばき、お前……


椿は、誰にも見せたことの無い悔しそうな、どこか虚しそうで痛そうな険しい顔をしていた。


そんな椿を見た勝本先生はなにも考えず手を差し伸べようとしていた。椿の何か凄いオーラに引き付けられたのか、勝本先生は、椿に過去を話そうとしていた。「こいつなら話してもいいか」、なんて考えた。


〈勝本先生〉んわかったよ! まったく、しょうないな〜


〈椿〉ほんと!!? ありがとう! 先生!


〈勝本先生〉その代わり、この話は誰にも言うなよ、おれは自分の秘密をあんまり言いたくないんだ


〈椿〉わかった! 約束する!


椿は先程の苦しそうな顔をしていのが、先生が話すと言った途端別人かのように眼をキラキラ輝かせていた。よほど嬉しそうだった。


〈勝本先生〉まったく、現金なやつだな


と、話した瞬間、勝本先生はタバコを咥え自前のジッポで火を着けた。


煙をプクプクさせながら、真剣な眼差しで勝本先生は、口を開いた。


〈勝本先生〉あれは、もう20年前のはなしだ……


先生は過去の話を椿に全て話そうとしていた。

その時先生は少し微笑んでいた。


ここから、勝本先生の過去の物語の話だ。


どんな人生だったのか、あまりにも険しい道を歩いて来た先生の話は、想像を絶する素晴らしい話だった。


さて、その素晴らしい物語を堪能して頂いてください。

勝本先生の20年前の話だ。なぜ、現在(いま)のような勝本光になったのか。


ー 0日目 ある先生の噂 ー 続く

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