第16話 ゲームセンターの決戦

 ある日喫茶店で茉桜とお喋りをしていた時、窓の外に張り付いてこちらを凝視している女の子、真知子と出くわす。


 窓をバンバンと叩きながら何か喋っているがうっすらとしか聞こえず口だけがすごい勢いでパクパクと動いている。


 店員さんやお客さんの視線が痛くなってきて、真知子のせいで居心地が悪くなったので仕方なくお会計を済ませて外に出る、


 カランカランと音を鳴らしてドアを開け、外に出た瞬間に真知子はこちらに歩み寄ってきて「私はまだ茉桜の事諦めてないんだから!」と言ってきた。


「アンタ誰や」


「ちょっと!バカにしてんの!?茉桜の部屋で勝負したじゃない!真知子よ真知子!」


「あーもう、うるさいなー!」


 お店の前でキャンキャンと吠える金髪ツーサイドアップの女の子。周りの人もチラチラとこちらを見ている。


「叶彩、もう行きましょう」


「そやな」


 吠える犬はほっといて、デートを続けるべく手を繋ぎ歩き出した。


「ちょっと!私の前でイチャイチャしないで!」と言っているが無視をする。


「ぐぬぬ。勝負しなさいよ!」


 後ろをトテトテ付いてきながらワンワンと吠えている。


「ビビって声も出ないのかしら?ぷぷぷ〜」


 こいつ、この前負けたくせに言う事だけはいっちょまえやな。


「よく分かった、この前みたいに泣かしてやるわ」


「泣いてないわよ!」


 茉桜はヤレヤレといった感じで「まったく、仕方ないわね」と言った。


「今日はあそこで勝負よ!」と言って指を指したのは少し離れたところにあるゲームセンターだ。


「望むところや!」



 ゲームセンターに入ると慣れていない者ならうるさく感じるくらいの音量が鳴り響いている。様々なゲームの音が混ざり合っており、自然と声が大きくなる。


「何で勝負するんや!」


「その前に、茉桜は見てるだけよ。前回みたいに味方されたらたまらないわ!」


「前回茉桜はずっとビリやったんやから、気にせんでもいいやろ」


「あなたの有利なように動いたりも出来るじゃない!」


「分かった分かった。茉桜ごめんな、サクッと終わらせるからその後またデートしよ」


「叶彩、後でお仕置きよ」


「なんで!?」


「イチャイチャしないで!」


「してへんやろ!」


 というか何でお仕置き!?ウチは茉桜の為に勝負するのに。なんか気に触るような事言ってしまったんかな?


 お仕置き、お仕置き、うん。それはそれで。


「私が勝ったらこの女の写真を送ってきたり惚気話はやめてほしい」


「ちょっと待って今何て言った!?」


 写真とか惚気話ってなんや、と言おうとしたら「わかったわ。私達が勝ったら叶彩にコスプレをさせるわ」と割って入ってきた。


 全然意味が分からへん。


「おかしいな、この勝負やりたくなくなってきた」


「いっぱいかわいがってあげるから勝ってね、叶彩」


「決まりね。勝負はこの箱から取って出てきた紙に書いてあるゲームで勝負よ。三回勝負で茉桜が引いて」


「準備万端やんけ」


 まず最初の勝負は流れてくる赤と青のマークにタイミングを合わせて叩くゲームだ。


 叶彩は初心者、真知子は何度かやった程度のこのゲーム。


 一番難しいモードでやり始めた勝負、どちらもかなりスコアは悪いがゲームセンターに来慣れていて何度かやった事がある真知子が僅差で勝利。


「かわいかったわよ、あたふたしている叶彩」


「目がおかしなりそうや」


 次の勝負はお互いに対面に立ち、滑らせたディスクを打ち合うゲーム。


 先に十点先取で勝敗が決まる。


 結果は10-0で叶彩の圧勝。


「なんでよ!このゲーム得意だから入れておいたのに!」


「汚いなー、得意なゲーム混ぜてんねや」


「この勝負を受けた時点で私の勝ちは決まったようなものなのよ!へーんだ!」


 最後の勝負、この勝負に勝った方が勝者となる。


 そのゲームはバスケットボールだ。普通のバスケットボールでは無く。ゴールが左右に動いたりする。ボールも四個あり、どんどん投げられるようにっている。


「おかしい!こんなの入れてないのに!」


「真知子が有利なゲームを入れていると話していた時に一枚足しておいたのよ」


「ズルじゃん!」


「あら、先にズルをしていたのは真知子でしょう?お互い様よ」


「さすがウチの彼女やな」と肩を抱く。


「ふふ、ありがとう叶彩」


「またイチャイチャして!」


 ゲームが始まり結果は言うまでもなく真知子の敗北。


 叶彩が確実に点を稼いでいる時に真知子はがむしゃらにボールを投げまくっていた。


「また負けた」


 がっくしと落ち込む真知子に近寄り「楽しかったわ、また遊ぼうな」と言って頭にポンと手を置く。


「ふ、ふん。そこまで言うならまた遊んであげるわよ」と言ってスマホを取り出した。


「教えなさいよ」


 連絡先を交換した。


「真知子とは仲良くなれそうな気するわ」


「あっそ!」


「お前分かりやすいなー」


「うるさいわね!」


「なに彼女の前で他の女の子とイチャイチャしているのかしら?」


「やきもち?」


「そうよ」と腕に絡みついてくる茉桜はかわいかった。


 勝負は終わり、ゲームセンターから出た。


 真知子は元々行くところがあったらしく、慌てて走って行った。


 デートを再開して茉桜とブラブラお店を見てまわったりした。


 デートが終わり家に帰ってベッドで横になりながらスマホで茉桜とメッセージのやりとりをしていると、真知子からメッセージが届いた。


『言っておくけど、今日で茉桜の事は吹っ切れたから安心して。あんなに幸せそうな茉桜を見ていたら悔しいけど茉桜には叶彩じゃないとダメみたい。


 今日は楽しかった!

 また私と遊びたいなら遊んであげてもいいわよ。


 あ、そうそう

 茉桜から送られてくる叶彩の写真はこんなやつよ。


 じゃ!おやすみ!』


 はは、なんやこいつ素直に遊びたいって言えばいいのに。いつのまにか名前呼びになってるし。


 忘れてたけど写真ってどんなんやろ。


 一緒に送られてきた写真を見た。


 その写真は初めてお泊まりをした時、夜エッチな事をしてそのまま寝落ちした日の写真。朝先に茉桜は起きていた。


 二人頭を合わせて鼻を引っ付けて幸せそうに目を閉じている茉桜と幸せそうに寝ている二人の写真。


 何かした後とわかるような写真でもある。


 そっと保存した。

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