3-10 馬乗りと壁ドン




「・・・

 えーと、どうしたの?絵梨花ちゃん?」


「・・・」


絵梨花ちゃんと俺はプールをぬけだし、

通路を歩く。その間に絵梨花ちゃんにいくつか質問をしたが返答はない。そういえばさっき頬を膨らませてたし、もしかして俺なんかしたのか?


ていうか歩きすぎてここがどこだかわからないんだが。けど、絵梨花ちゃんはめちゃくちゃ堂々と歩いているので彼女が知らない場所ではないのだろう。


てか、いろいろと揺れて・・・目の保養になるな。・・・いやだからダメなんだって!興奮したら! ん?


「・・・俊くん」


絵梨花ちゃんは通路の途中で急に立ち止まると、振り返らずに俺の名前を呼び肩を少し震わせている。


え、まさか俺が邪な気持ちを考えてしまったことに気づかれた・・・!?


結構視線とかでもどこを見てたのかって、

バレるらしいしあながち間違えでもないかも。


「ご、ごめん絵梨花ちゃん。

 俺ってば無意識のうちに・・・

 本当にごめん!」


俺は絵梨花ちゃんの背中に向け頭を下げると、絵梨花ちゃんは振り向いて何が起こったかわからなそうな顔で


「・・・え?なんで、俊くんが謝るの?」


と首を傾げ不思議そうにしていた。


あれ?これじゃなかったのか?

てか、怒ってなくない?

俺は想定とは違う状況に頭を悩ませていると


「謝らないといけないのは、こっちの方だよ。本当にごめんなさい・・・」


そういって今度は絵梨花ちゃんが頭を下げた。え?まじで、どういうことなの?


「え?なんで?絵梨花ちゃん何かしたの?」


「・・・んーと。

 少し俊くんの事、避けてた。」



目の前の幼馴染が頬を赤くしてプイッと俺から目を背けてそう小さくつぶやいた。


いや、内容はともかく可愛すぎるだろ!

そんなことされたらたとえ財布からお金抜き取られたとしても許してしまうわ!


・・・ゴホン。話が逸れたな。と、とにかく!


「えーっと、なんで避けられてたのかって聞いても、いい?」


「・・・雪音ちゃんの告白を聞いて、俊くんがまた雪音ちゃんを好きになるんじゃないかって考えてたら・・・悲しくなっちゃって」


絵梨花ちゃんは自分で言っていて恥ずかしくなったのか、まるで ボンッ と効果音がでているかのように顔を真っ赤にして俯いてしまった。


もうダメだ。この女優、可愛さが人間のレベルを超えている。


恥じらい方も100点満点だ。舞香のように普段少しツンとしているがいざデレると恥ずかしくなるのもかわいいが、絵梨花ちゃんのように人前ではクールな感じなのに俺の前ではデレデレで、あの遊んだ日や今みたいな弱々しい姿も見せてくれる特別感も凄く良い。


俺はこの芸能人たちのおかげで、やっとギャップ萌(?)というやつに気づけた気がした。


「・・・俊くん? ど、どうしたの?」


ぼーっとしていたら絵梨花ちゃんが俺の顔色を伺うように聞いて来た。この数ヶ月でだいぶこの子の事もわかって来た。おそらく彼女は今、俺に嫌われてないか不安なのだろう。

あぁ、本当にもう


「絵梨花ちゃんがあまりにもかわいかったから、ついみとれちゃった・・・」


「・・・へ !?!?」


・・・・・・・・・ん?


頭で考えていた事がそのまま言葉として口から出て行った。


おれ、いま、もしかしてめちゃくちゃ恥ずかしいこと言った!?


「え、あ、あの、その、ほ、本当に?」


絵梨花ちゃんが凄いきょどりつつソワソワしながらそう言う。やばいめちゃくちゃ恥ずかしいじゃん。ここは誤魔化して・・・うっ、すごく期待した目でこっちをみてる・・・


ここで恥ずかしさのあまり言ったことを否定でもしたら、ただでさえ悩んでいたのだろう絵梨花ちゃんにトドメをさしてしまう。

ここは意を決して素直にならねば俊介!!!


「うん!絵梨花ちゃんはいつもすごく可愛いよ。それに今の水着姿も最高だよ!本当にありがとうって感じ!」


「・・・・・・」


絵梨花ちゃんはポカーンと口を開け俺をみている。やばいな、これは外したか・・・


「俊くん・・・」


「・・・はい」


「あのね・・・本当にね、

 大っっっ好き!!!!!」


「うわっ!?」


絵梨花ちゃんはそう言いながら、俺に飛びつき後ろへ押し倒すと、俺の胸のあたりに頬を何度も何度もすりすりとしている。


よかった、嬉しくて固まってた(?)のか。


絵梨花ちゃん凄く興奮しているな。

彼女の息遣いが獣のソレになってるよ・・・目の奥に心なしかハート見えるし・・・

やっぱり、当分素直になるのはやめておいたほうがよさそうかも。


「俊くん本当に大好き!俊くんが水着が好きならまた今度また着るね!俊くんのために!!!今度プールデートしようね!

絶対だからね!」


「う、うん!」


のりかかった船だ。ここはテンションを合わせよう。いや、合わせる事は不可能だな。彼女のテンションは俺のだせる上限の遥か上の方に位置している。


「好き!本当に好き!好きすきす、き・・・」


・・・ん?

すごくスキンシップをとっていた絵梨花の動きが止まった。顔も凄く真っ赤になっている。どうやら元の絵梨花ちゃんに戻ったようだな・・・


「わ、私ったら・・・

 えーと、あのー 俊くん?

 そのー、本当に、ごめんね・・・」


「んーん。全然嬉しかったよ?」


「うぅ、優しすぎるよ・・・

 それとさっきのもありがとうね。

 あのさ、よければ今日も夜メールしてもいいかな?」


「うん。いつでもしてきてね」


「! わ、わかった!それじゃあ、今日は帰るね!舞香ちゃんたちによろしくね!じゃあね!!!」


「わかった!気をつけてね!」


そう言うと手を振り、笑顔でそそくさと絵梨花ちゃんは帰って行った。よほど恥ずかしかったんだろうな、後ろを向いてすぐに両手で顔を隠しながら走って行った。


「・・・さてと」


そう呟くと俺は仰向けに倒れて ふぅ と息をはく。


俺は自分を褒めたい。絵梨花ちゃんのような美少女に馬乗りになられて理性を持ち堪えた俺を!


いやー凄かったな、何がとは言わないがな!

それにめちゃくちゃ可愛かった。

よし、この良い気分のまま泳ぎに行くか!


俺はプールに戻ろうとするが問題が生じた。


・・・忘れてた、ここどこだ?


俺はプールへの道を探すためキョロキョロする。周りには特に何も表記はない。あれ?これは終わった?そうやって壁に体を預けため息をついていたら


「・・・やっと正体を現したわね」


そう言った声が後ろから聞こえた。

誰かいたのか!この人に場所を・・・


いやまて、正体を現したわね?

いったいなんのことだ?

よく分からないが何やら怪しい雰囲気がするぞ。


声のする方におそるおそる後ろを振り返ると ドン! と声の主に壁ドンをされ、ひっ と思わず声がでてしまった。


「・・・怪しいと思ってたのよ。

 あんたがあの絵里さんと仲がいいなんて」


そう言って声の主、もとい 桃宮可奈 は桃色の髪を揺らし睨みつけながら俺に対してそう言ったのだった。


————————————————————

次回投稿は7/31(日)です。


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