サブリミナル

 こうした話を書いていると、みなさんがどう感じられているのかはわかりませんが、私はなんだか寒気というか、ちょっとした心細さというか、妙な怖さに襲われます。



 ちょっとした物音に敏感になったり、背後に何かいるような感覚に陥ったりと、とにかく怖がりでどうしようもないくせにこんな話を書いているのです。



 先日、小学生の頃に亡くなった先輩の写真の話を書いていましたが、あのあたりから具合が良くありません。


 その日の夜のことでした。


 夜中に夢の中で、ふと、あの写真の映像が浮かんできたのです。



 集合写真があって……





 背景はぼやけていて……





 写っている人たちの顔もモザイクがかかったような、モヤがかかったような感じでぼやけていました……。



 その写真が彼女にクローズアップされた瞬間……






 その写真の女の子が、歪んだ表情で笑っているのです……。







 その表情がアップになった状態で夢の中でフラッシュバックし、急に目が覚めました。


 気持ちの悪い目覚めに、大量の汗。



 どことなく視線を感じつつもトイレに向かいました。




 トイレから出ると、寝る前に閉めていたはずの作業部屋のドアが空いていることに気がつきました。




 こういう、嫌な心境というか、怖い感覚を覚えているときは妙に「あれ、おかしいぞ」と思うことに対して過敏に反応して仕方がない……。



 心臓がズキっと痛みつつも、そのドアの中を覗いてみました。






 当然、そこには誰もいませんでした。



 しかし、消したはずのパソコンが起動していることに気がつき、シャットダウンしようと机に向かいました。









 椅子に座り、パソコンの画面を見た瞬間でした。


 パソコンの黒い画面は鏡のように自分と自分の背後にあるものを映し出していたのです。






 ぼんやりと映るパソコンの黒い画面の鏡に――




 私の背後に人の顔のようなものが見えたのです。


 それはマウスを動かすまでの一瞬に過ぎませんでしたが、あまりにも怖くなってすぐにシャットダウンを済ませ、足早に部屋を出ました。




 寝室ですやすやと眠る妻の表情に安堵しながらベッドで横になると、すぐに眠りに落ちました。










 翌朝、寝室を出ると作業部屋のドアが再び開いていることに気づきました。



 寝ぼけ眼で部屋に入ると、なぜかまたパソコンがついているのです。





 不思議に思って再びシャットダウンをかけようとマウスを動かしました。










 パソコンは、例の先輩の写真のことを書いたページが開いた状態になっていたのです。




 それから、あの夢で見た先輩の歪んだ笑顔がフラッシュバックして私の脳裏でずっと笑いかけてくるのです――。

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