第2話 ラッチと恋のライバル!?

なんて事だろう。

「ラッチ!馬君と付き合ってるってホント?」「屋上でハグしたって聞いたけど!」「違うんじゃね?二人は元から付き合ってるんじゃねーの?」「あたしはラッチの方からキスしたって聞いたよ。」

どうすればいいんだろう。ラッチと馬が付き合っているという噂が広がってしまった。

「か、勘違いだよー・・・。私と馬君がつ、付き合う訳無いよ~。」ラッチは疲れ切った顔で手を振った。(こうやって問い詰められるのは何回目なの―!?)

するとそこに、例の馬がドアを開け「おはよー。」と入ってきた。皆の目が一気に馬へ集中する。「みんなラッチの所に集まって何を話しているんだ・・・ってうわ!」「馬くーん!ひどーい!ラッチと内緒に付き合っちゃって~。」馬はポカーンとした。「え、どうゆうこと?」そんな馬を放っておき、一同はどんどん迫ってくる。

「馬ぁ!!俺らのエンジェルを独り占めにするなんてらしくねーぞ!お前男だろうが!」「なんで!?」馬が囲まれどうやっても抜け出せない状況。(馬君が犠牲になっちゃったぁー!いやまず、どーしてこーなったの!?)ラッチの思い当たることなんて一つも無い。どーしよ どーしよ どーしよ・・・!

「悪いけど。」と、馬がそっと口を挟む。

 

「それはご想像にお任せするよ。」


馬がキラリと笑顔を見せた。女子達はきゃあー!と歓声を挙げる。一方男子はつまらないと言いたがりの様子。ラッチの頬が赤くなった。

(わああ~馬君今日もかっこいい・・・!!)

ラッチの初恋は 馬 一途であり、しかも女子たちに大人気である。上手く狙おうとしても、必ず女子達に邪魔されてしまうのであった。(少しは馬君と近ずけたらいいのに。同じ係だったらなぁ。) 昨日の帰り道に馬と別れ、恋愛の知識を身に着けるため書店へ本を買いに行ったとき。店の中を巡回していたら人目を惹く本を見つけた。その本の中身はちょうど自分が探していた内容と適しており、軽くパラパラめくっていくと〚接近大作戦!〛というページに、〚共同作業の策!!〛と書かれていた。

「ううん!恋には絶対、好機チャンスがあるわ!くじけちゃダメダメ!!って・・・。」ラッチはキョロキョロ周りを見渡す。どうやら聞かれてないか心配のようだ。自分がこうやって伝えられるのはただ一人。

リリカしかいないのだ。いつもラッチを心配してくれて、泣いているときにはそっと「大丈夫?」と声を掛けてくれる大切な親友。

ーそうだよ。リリカちゃんに話すのが一番だよ。リリカちゃんならわかってくれるー


ー大休みー

「ラッチちゃん、今日の朝は大変そうだったね!まあ馬君とラッチちゃんが付き合うなんて、しんじられないけどね!」そう声をかけてきたのは白奈宇佐美 白奈だった。「そ、そうだね・・・。」ラッチは気まずそうに答える。ラッチは白奈が少し苦手なのだ。

クラスで一番目立たがり屋で、お嬢様でもないのに誰にでもいばり散らし、男子にしつこく 女子には気を強く接している。そんな白奈は馬に恋をし、いつも意味がないアプローチをしている。そこが、人気者のラッチと比べられる所である。だから白奈はラッチの事を物凄く妬んでいるのだ。更になんでなんだ。

学校一成績が高く、運動神経も大会に出るほどの腕をもっている・・・!美しく、毎日みんなからの熱すぎる注目を浴びて男子を一目惚れさせているのだ。

もし、白奈のとりこの馬がラッチに惚れてしまったら、と白奈は毎度のことのように考え続けている。

一方そのようなことを知らないラッチは今日も白奈を引いている。


「馬くーん!!これ先生か・・・ら・・・。」

ラッチは思わず後ずさりしそうになった。馬君と隣にいる白奈が顔を歪めにらんでいるからだ。

「ありがと。先生から受け取ってくれたんだ。」馬はニコリとし、ラッチが持ってきたプリントの束を腕にかかえる。「全然偶然よ。先生がちょうどいいってプリントを渡したの。先生からのお手伝いなんて断れないしね。」ラッチは白奈の視線を確認しながら、馬の笑顔に答えた。白奈の逆鱗には触れてはいけないと自分の心に言い聞かせる。怖すぎて白奈の視線を見られなくなる。

(私、なんか悪いことでもしたかな・・・?)




昼休みの事・・・ラッチは静かにドイツ語に訳された物理学の本を読んでいた。地球温暖化や環境について個人的な方策などが学者によって書かれている。他の生徒にはさっぱりわからないが当然の事、ラッチには興味深く理解できている。それはラッチが幼い頃から大人向けの本を読んでいたからだ。

「ちょっといーい?ラッチちゃーん。」背中から声が聞こえてきた。ラッチがびっくりして振り返ってみると、白奈が小さく手を振っていた。


「どうしたの?空き部屋に呼び出して・・・。」「ラッチちゃんに話したいことがあるのぉ!」そう言うと白奈は顔色を変え、ポーチからリップを取り出した。


「ラッチちゃん、馬君は渡さないよ?」


白奈のまなざしが一気に鋭くなる。

「えっ、でも・・・。なんで・・・?」

「ラッチちゃんって馬君好きなんだよねぇ?トイレからちらっと見えたんだよ。ねえあれ、どうゆうこと?私が馬君を好きなことを知ってわざとしたんだよね?」

「そんな・・・私はわざとしてないよ・・・。ただぶつかってああなっただけで・・・」

「嘘はやめてくれない?どうせラッチちゃんなんか馬君を惚れさせたかっただけなんじゃないの?!」

白奈の怒声はますます強く響き渡る。ラッチは怯えた目で白奈を見つめた。唇が震えて「違う」と声に出せない。(私は白奈ちゃんのことを悪くは思ってない!それを今本人に訴えたいのに・・・。)

「この生ごみっ!!」白奈が勢いよく手を振り上げた そのとき。


「ラッチは生ごみなんかじゃない!」


その声と供に馬が白奈の手を掴んだ。

「馬くんっ・・・。」

「は・・・なんで?!馬君がここにいるのよ!!」白奈が顔を真っ赤にして怒鳴る。

「聞こえたんだ、宇佐美の声が!!もしかしたらラッチがなにかされてるんじゃないかって・・・。」

馬はラッチの前に立つ。ラッチを守る馬はラッチにとって輝いているように見えた。

「それに僕は・・・。」馬はそう言いかける。


「ラッチのことが好きなんだ。」


ラッチの胸がドキンと打たれる。

(う、うそ・・・!馬君が私のことを好きって・・・!)

白奈の目が大きく見開かれる。色の無い姿のように。白奈の小さい舌打ちがラッチの耳にはっきりと聞こえた。そして白奈は静かにドアから出ていった。


そこから時間が立つ。ラッチはひざを抱えて腕の中に頭を突っ込み、馬は片足を抱え足に乗せた大きい手で頭を包んだ。二人とも無言で、じっとしている。

(気まずい・・・。なんか話した方が良いかも・・・!)

ラッチは早速話しかけてみようとうわずった声で馬に話しかけた。

「つ、次の授業ってなんだっけ・・・。」

「算数だよ。足し算の計算問題を自習する時間じゃないかな。」

「自習するのは私、嫌いじゃないんだけどなんだか好きになれないの。」

「僕は一人で勉強するほうが好き。」

「そ、そっか!落ち着いて勉強できるからね!」

可笑しな会話だ。今の空気と全く合ってないじゃないか。それでも、何も言えない状況は嫌だ。


「あの・・・。さっき私のことをす、好きって・・・!」


「ああ・・・うん。ごめん・・・。」


「あ、謝らないでっ。き、傷ついてないから!」


お互い恥ずかしくなって顔から火が出そうだ。

顔が真っ赤に染まる。

二人は目を合わせて ぷっ とふきだす。

「馬君ってば変な顔!」

「ラッチこそ!」

声を上げて笑った。


「私も馬君のことが好き!!」




ラッチの恋がはじまった    



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