(10)

「厄介な事になりましたね……」

 ウチの「カイシャ」に戻ってから相棒は、そう言った。

「ウチと公安以外にも……あのマンションを監視してるヤツが居ると……」

「他の警察機構カイシャか……さもなくば、最近、噂になってる『警察に頼らず異能力犯罪を解決する何でも屋』ですかね?」

 私がそこまで言うと、相棒は首を横に振る……。

「このヤマ……もっと洒落になりませんよ……。何が出て来るか予想も付きません」

「えっ?」

「昨日の晩に暴れ出した公安の刑事……精神操作を受けてました。急に暴れ出したのは……精神操作のせいです」

 薄々は……気付いていたが……面倒な事になりそうなので無視していた可能性だ……。

「公安のカルト宗教関係の部署のヤツが……精神操作系の異能力者に洗脳されてた訳か……。あいつ1人だけだと思う?」

 相棒は、再度、首を横に振った。

「下手したら……異者じゃないです」

 だが、相棒が首を横に振った理由は、私が想像してたモノと違っていた。

「えっ?」

「あれは……『能力』と言うより『技術』です。下手したら……何世代もかけて体系的に磨き上げられた代物です」

「どう言う事? 何を言ってるの?」

「あの公安の刑事は……をやられてました……。何者かが脳や心に干渉したら……暴れ出して干渉した相手を殺すような『精神操作』をね。だから……『魔法』で脳をいじろうとした僕を攻撃した……」

「ちょっと待って……それ……」

「繰り返しますけど……『能力』じゃないです。単なる力自慢でも、他人を投げ飛ばせるかも知れない。けど、柔道なんかをやってる人ほどには『見事に投げ飛ばす』事は……多分、無理でしょう。あれは……そう言う感じの代物です」

「おい……待て……まさか……。精神操作『能力』を『技術』にまで高めてる奴は……複数居て……しかも、互いに争ってる可能性も有る訳か?」

 私と相棒の会話を傍で聞いていたチーム長がそう言い出した。

「えっ?」

「だって……さっきの柔道の喩えで言うなら……もし、

 そうか……「他の誰かによる精神操作の『上書き』を防ぐ精神操作」が有るとするなら……その意味する所は……。

 どうやら……私達と公安は……人知れず行なわれている化物同士の抗争に巻き込まれたらしい。

「で……その『精神操作の上書きを防ぐ精神操作』って、どの程度やるのが難しいモノなの? つまり、相手は、どの程度の腕前や力の持ち主なの?」

「判りません……。無茶苦茶、難しいのは確かですが……どの程度の『無茶苦茶』かまでは……」

「そう言や……関口に『精神操作』の『呪詛返し』をやられた刑事だが……」

「あいつじゃないです。あいつは『力』も『技術』も無かったし……多分、自分が『精神操作』能力を持ってる事に気付いてたかさえ怪しいです」

「……ん?」

 チーム長は急にPCの画面に目を向けて……。

「あ……あの……どうしたんですか?」

「死んだ。今、ニュースになってる」

「死んだって……誰が?」

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