サクヤ編第4話 戦龍VSサンダー

「アリシア先生、強すぎますよ……」


「とりあえずサンダー、魔法剣士として君を歓迎する。よろしくな」


 アリシアとサンダーは握手を交わす。

 それから数日、サンダーは魔法剣士としてアリシアのもとで修行していた。

 一ヶ月ほど経ったある日、


「サンダー、もう一ヶ月経った。ということで君に試練を与える」


「試練?」


「ダンジョンへ行き、"戦龍"というモンスターを倒してもらう」


「強いのですか?」


「ああ。相当な化け物だ。まあ私やヴァーミリオンなら瞬殺だけどな」


「その程度の相手と、ですか」


「サンダー、お前は確かに雷魔法には優れている。だがあくまでも雷魔法だけ。多くの戦闘を経験してきた魔法剣士はな、魔法をどう使うか、それに優れている。瞬時に魔法を発動し、その場に適応した魔法を使う。今のお前にはそれがない。

 だからといってお前は弱いわけではない。戦龍と戦って経験を積め。そして足りないものが何かを知れ。さすればきっと、強くなるはずだ」


「分かりました。頑張ります」


 サンダーは一人、ダンジョンへ向かう。

 そこはモンスターの巣窟。多くのモンスターが現れるも、そのモンスターたちをサンダーは一蹴する。


「邪魔だな」


 サンダーは徐々に戦龍の住み処へと近づいていた。



 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



 どうしてこんなことになったのだろう。

 私は同級生に連れ去られていた。この少年たちに見覚えがないわけではない。この少年たちは私が初めてサンダーに会ったとき、ぼこぼこにされていた少年たちだ。

 きっとサンダーと一緒にいる私を気にくわないのだろう。


「よし。じゃあダンジョンにでも行こうか。今サンダーは戦龍と戦うためにダンジョンにいる。戦い終わってへとへとになったサンダーをモンスターの餌にし、ついでにお前にも死んでもらうよ」


「そんな……」


 私は今日死ぬ。

 サンダーも死ぬんだ。


「今頃戦龍の住み処で戦っているはずだ。ここの前で待っていればくるだろうな」


 少年たちは嘲るように話していた。

 だがその時、突如壁が崩れ、そこから血まみれのサンダーと鎧を纏い、刀を握る巨大な龍が現れた。

 その龍は私たちなど踏み潰せるほどの巨大さだ。


「戦龍!?」


「待て待て。こんなの聞いてねえぞ」


 戦龍はサンダーを蹴り飛ばし、壁に吹き飛ばした。壁に打ち付けられたサンダーを嗚咽を漏らし、苦しんだ。

 次に私たちの方へ目を向けた。


「やべー。逃げるぞ」


 少年たちは走って立ち去ろうとする。だが戦龍はそんな彼らへ容赦なく刀を振るった。それに少年たちは皆吹き飛ばされた。

 残るは私だけ。

 結局、私は死ぬのだろう。嫌だな……。


 私へ刀が振り下ろされた瞬間、走馬灯といえばよいのか、過去の記憶が走った。


「サクヤ、わしらフブキ家は代々特殊転移テレポーション魔法を受け継いでおる。この魔法は人によって性質が変わる。お主もいつかその魔法に目覚める時が来る。だからその時は脅えず、その力を受け止めるのじゃ」


「分かったよ。おじいちゃん」


 転移魔法、命の危機に陥っても、私には目覚めないんだね。

 戦龍の刀をかわせず、私へ振り下ろされる。しかしその刀は一人の少年によって受け止められた。


「サンダー!?」


 血まみれになりながら、とっくに限界は来ているはずなのに、サンダーは電撃を纏う剣で戦龍の振り下ろした刀を受け止めた。


「サクヤ、ヒーローは絶対負けないんだぜ。だからさ、俺の背中で安心して待っていろ。俺が戦龍を倒すまで」


 荒い呼吸をたてていた。

 すっかり限界は来ているはずだった。

 それでもサンダーは剣を握りしめ、戦龍の一撃を受け止めている。


「サンダー……」


「はぁぁぁあああああああああああああ」


 サンダーは気合いで戦龍の刀を弾き、戦龍の顔へ目掛けて高く飛ぶ。そして電撃を溜めた剣で戦龍の顔へ傷をつける。

 しかしその一撃では倒れず、戦龍の尻尾の一振りで吹き飛んだサンダーは再び壁に打ち付けられた。


 このままじゃサンダーは死んじゃう。そう思った瞬間、私の脳内の記憶がまるでどこかに流れていくような、そんな感覚に陥った。


「これは……」


 戦龍がサンダーへ刀を突き刺そうとした時、アリシア先生が現れ、戦龍の刀を粉々に砕いた。

 その後、アリシア先生の背後より現れたヴァーミリオン先輩が激しい火炎を纏う剣を戦龍へ振るう。戦龍の全身は黒こげになり、燃え尽きた。

 そこへとどめの一撃に、サンダーは電撃を纏う剣で突き刺した。


「終わりだ。戦龍」


 勝った。

 サンダーは、勝ったんだ。

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