第46話 スカイバードの幻術破り。不思議な花を振ると……
数日後、俺とシャノン、パトラは武器屋にパトラの防具を取りにきていた。
「うん。ちょうどいいな。くるっと回ってくれるか?」
マッテオはわざわざパトラようにオレンジの色をつけた鎧を作ってくれた。
身体の上部をしっかり守ってくれるが、動きやすさを優先してくれたようだ。
しかも、パトラの可愛さを増してくれるオシャレな鎧だった。
「マッテオさんありがとうございます」
「いいんだよ。それと、こないだの子どもたちにもこれを使ってくれ」
マッテオさんはオレンジアントたちの分の鎧も作ってくれたようで持ってきてくれた。
「そんな、悪いですよ」
「いや受け取ってくれ。子供ようの鎧を作る機会なんてほとんどないからな。ちょっと楽しくて作っちまったんだ。それに、動きやすさを重視したから、ほとんど素材は使ってないんだ」
「ありがとうございます。でも、せっかくですからこれは受け取ってください」
俺はオレンジアントたちを呼び出してから防具には十分な料金を店主に渡す。
「いや、受け取れないよ」
「オレンジアントたちは鎧を着てみてくれ。マッテオさんこのお金は、防具のお金ではないですよ。感謝の気持ちと、もし誰か新米でお金のない冒険者やなんらかの理由で子供が買いに来た時にプレゼントしてあげてください」
「なんか逆に気を遣わせたみたいで悪いな」
「大丈夫ですよ。最近、S級パーティから退職金もらったので余裕がありますので」
「そうか。それならこの金は別にしておいておこう」
オレンジアントたちの防具のサイズを確認すると、マッテオはお金を持ち店の奥に行くとすぐに慌てて戻ってきた。
「もう、片付けてきたんですか?」
「違う! ロック、今ちょうど可燃石が盗まれたんだ! 青い光が飛んで行くのを見たんだ」
「なんだって!? ラッキー!」
『あいよ』
「マッテオさん店の奥に入りますよ」
「あぁ、頼む」
店の中は前回と同じで変わった様子はないがラッキーの鼻はしっかりと、その存在を認識していた。
『今日はわかるぞ。こっちだ』
ラッキーが表にだしたと同時に俺はラッキーの背中に飛び乗る。
「シャノンとパトラたちは一度箱庭に入っててくれ、必要な時は声をかけるから」
「わかりました」
「パパーわかったよー」
ラッキーはそのまま街の中を走り出した。
人を避けながら上手く進んでいくと、たどり着いたのは前回俺たちが入った下水道だった。
『これ以上は臭いが消えてしまっているな。ただ、この臭いを私は前に嗅いだことがある……確か……あそこだ。賢者の墓のところ』
「よし! そこへ行こう」
俺たちはそのまま街からでて急いで賢者の墓のある墓地へ移動した。
確かにここでも青い光が上下に飛んでいるのを見たことがある。あの時は幽霊だなんて話をしていたが、結局原因はわからなかった。
「ラッキー匂いはどの辺りからするんだ?」
『うーん。ここの大賢者ドモルテの墓の裏側からだな。ここで臭いがプツリと途切れてる。まるでどこかに消えてしまったみたいだ。やっぱり……幽霊なのか?』
「ゴースト系の魔物ってことだろうか? でも、なぜ可燃石を?」
大賢者ドモルテの墓は大きな1枚の岩でできており、切れ目なども見つからず、特にこれと言った不審なところはなかった。
直接触ってみるが……異常は見つからない。
せっかく謎が解けそうだったのに……ここで終わりなのか?
「墓石を壊すわけにもいかないし……」
俺が悩んでいるとスカイバードが箱庭から飛び出してきた。
嘴には赤い花が咥えられている。
「スカイバードその花は?」
スカイバードが俺たちの頭の上を何度か回り、赤い花を墓石の裏側に落とすと目の前に急に入口が現れた。
「もしかして幻影魔法なのか? それにしても、こんな強い魔法は見たことがない。手触りまで石の手触りだったぞ。スカイバードありがとう」
スカイバードは俺の肩に乗ると頬に顔をすり寄せ、そのまま箱庭の中に戻っていった。
ワイバーンの卵を孵化させてくれたり地味に優秀すぎる。
そろそろ名前でもつけてやるべきか。
でも、それよりもまずは……今はこの穴を調べるのが先か。
墓石の裏側は地下に続く階段があった。
最近も誰かが出入りしているのか階段に埃は溜まっていなかった。
「よし、行こう」
『ロック……』
残念ながら、その階段はラッキーが入れる大きさではなかった。
『どうする? 私は入れないぞ』
「あぁ、大丈夫だ。どんな奴がいるかわからないからな。俺一人で行ってくる」
『気を付けろ。もし危険ならすぐに助けを呼べ。狭くても私がなんとかしてやる』
「あぁ信じてるよ」
ラッキーはしっぱを地面に垂らしたまま箱庭の中に戻っていった。
墓石の裏にあらわれた階段は昼間だというのに薄暗く、カビの臭いと下水の臭いがしてくる。
「ライト」
ダンジョンとは違い中は暗くなっているので光魔法で辺りを照らし出す。
久しぶりに1人での探索だ。
俺は慎重に1歩1歩階段を降りて行く。
下まで降りて行くとそこは一つの大きな部屋になっていた。
「おや? お客さんかい? ここを見つけられるなんて高位魔法使いだねぇ」
「誰だ!?」
「美白の秘密かい? それはカルシウムを良く摂ることだよ」
そこには動く骸骨、リッチが黒くくぼんだ瞳でこっちを見ていた。
俺はとっさに剣を抜き構える。
美白というより骨だからな。
「何者だ?」
「ん? 上の墓石を見なかったのかい? 私の墓の下にいるのは私しかいないだろ」
「大賢者ドモルテ……なのか?」
「よく知ってるじゃないか。私もそこそこ有名だったようだね」
賢者ドモルテはもう数百年前に亡くなったはずだ。
それがなぜこんなところにリッチになっているというのだ。
「こんなところで何をしている?」
「なにを? さてね。運命の気まぐれってところだ」
「おっおい! ドッドモルテ様から離れろ! はっ離れないと私の魔法が火を噴いてお前をここで焼き尽くすぞ」
どこからか声が聞こえる。
でも姿が見えない。
「姿を現せ!」
俺は警戒しながら大声で叫ぶ。
「しっ失敬な! 目の前にいるだろ!」
ん? 目の前に?
よく見て見ると俺の目の前に上下に動いている妖精がいた。
羽の一部が欠けているのか、飛ぶのが安定していない。
「やれやれ、ララやめなさい。あなたが出てくると話がややこしくなるから」
ララと呼ばれた妖精はドモルテの横まで飛んで行き肩のところへ留まる。
「冒険者命拾いしたな。ドモルテ様の寛大なお心に感謝しろよ」
ララは肩を小刻みに揺らし震えていた。
盛大に俺のことを挑発してきたが、かなりビビっていたようだ。
「はぁ、それで話を戻そうか、私は賢者ドモルテ。あなたと戦うつもりはないわ。どうしてもやると言うなら相手になるけど。怪我しても知らないわよ」
「随分と自信があるんだな。これでも俺は元S級のパーティーにいたんだぞ」
荷物持ちで前線要員ではなかったが間違ってはない。
「もちろんよ。ララは弱いから間違いなく怪我するわ。こんな可愛い妖精を痛めつけるなんて良心が耐えられるかしら?」
「えっ私!?」
ララは口をパクパクして悲壮な顔をしている。
さっきまでの威勢は、もはやどこにもなかった。
「そっちかよ! なんかどっと疲れたわ。俺の名前はロック。今街中で可燃石が盗まれる事件が発生していて、その件を調査している冒険者だ。可燃石を盗んでいる奴の臭いを俺の従魔が追って来たらここにたどり着いたんだが、何か知らないか?」
「ギクッ!」
ララはあきらかに可燃石という言葉に反応している。
「あらら、この子が可燃石を私のところまで持って来てくれていたから、どこか鉱山や地下ダンジョンからかと思ったら、人から盗んできていたのね。ごめんなさいね。もうそんなことはさせないわ」
「ドモルテ様! ダメです。そんなことをしたらドモルテ様が……」
「何か理由があるようだな」
「たいした理由じゃないわ。可燃石がなければ私の命が燃えつきてしまうってだけのことよ」
ドモルテはそう言い、彼女の過去について話始めた。
―――――――――――――――――――――――――
スカイバード「……」(名前! 名前♪ 名前★ 名前♥)
ロック「……後にするか」
スカイバード「!!」
少しでも面白ければ♡を投票お願いします。
―――――――――――――――――――――――――
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます