DAY 39-1

 どうしてそんなに優しくしてくれるの? って、小さい子供みたいに彼女は言ってた。


 言われた瞬間から頭の中で理由を考えたけど、特に出てこなかった。

「それが心って奴なんだぜ」唐突に出てきたのはそんなかっこつけた言葉。

 ベレスは止まらない涙を拭い切るまで、わたしの腕をギュッと離さなかった。


 光に溢れた、魔法のような言葉で背中を押してくれたベレスが泣くもんだから、わたしだってビックリした。


 もう遅い時間だったから、りんごを渡してわたしは町に帰った。


 次の日、学校が少し楽しかった。


 今日はいつもより騒がしい町を背に、りんごを持ってベレスに会いに入り口へ向かう。

 昨日の様子だとまたすぐに泣きそうだったから、目が腫れているんだろうな。


 どうしようもないほど、頭の中をベレスで一杯にして森へ向かおうとした矢先、町の入り口でぞろぞろと、怪しい風貌のレグメンティア人達が屯していた。

 四,五人の男達、無視して通り過ぎようとした手前で、コイツらに呼び止められた。

「おい! そこのお前も村から出るな」

 言っている意味はわからない。でもその時の威圧感は、わたしの身体を止めるのには十分だった。そして、その一言で、町の異常に気付いた。

 コイツらのせいで、町の人たち全員、外へ出ていたんだ。

 怖い、でも振り向く事はせず、ただ男達の話を聞いていた。そしてすぐに悪寒は走る。


「兄貴、ココらに居るはずっすよ、例の魔族の生き残りが」

「アイツの事だ、町のどっかに隠れてるか誰かに成りすましてるかのどちらかだろうな」

「ひひっ じゃあさっそく⋯⋯あの後ろのガキからやってやりますかい?」


 やばい、わたしだ。でも──


「そうだな⋯⋯間違ってても適当に殺しとけ」

「りょーかーい!」


 やってやれ、動け、守るんだ、わたしは──

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る