DAY 31

 夜、目を腫らしたベレスはりんごを求めてパソンレイズンを歩いていました。

 全部焼け落ちた、街だった場所の上を歩いて、残っていた焼け腐ったりんごを城へ持ち帰ります。


 思えば城の中を自由に歩いた事は無かった為、上を見上げる事もしなかったベレスですが、この時初めて城の大きさを知ったのでした。

 沢山の青い柱に支えられた、青い城。そして、城の隅にある二つの部屋が、ベレスたちの居場所でした。今はもう見る影も形も無く、一面血や焼け跡で汚れ切っていて、読んでいた本も殆ど燃え尽きてしまっています。

 上の階は火の被害が少なく綺麗なままですが、広々とした王の間も、血と肉に塗れていました。

 王の間という事も全てが終わってから気付いた事でした。

 そして王の間の真ん中に、メアトだった肉の塊と崩れた鎧にベレスはりんごを一つ添えると、昨日の言葉の続きを、そっと口にしました。

「⋯⋯メアトだって⋯⋯あったかかったん、だよね⋯⋯わたしもあったかくなったの⋯⋯いろでいうとね、あかいろ⋯⋯メアトも、おなじいろ、してたかな⋯⋯?」

 答えを聞けることなんて無い。そう分かっていても、ベレスは問いかけました。

 それから少しの沈黙の後、ベレスは目の前の肉の塊を手で掴むと、それを口に頬張りました。


 魔族としての贖罪とでも言うように、その肉を食べ続けました。

 血に塗れていく口の周りを強引に腕で拭って、残す事なく食べ尽くします。

 その肉を飲み込む毎に、それらに染み付いた人物の記憶がベレスの中に流れていきました。

 

 肉はベレスの成長に著しく作用し、食べ終わる頃には、ベレスの身体は一回り成長していました。

「⋯⋯全部、食べたよ⋯⋯メアト」

 鎧とりんごを残して、ベレスはパソンレイズンを去りました。

 

 城から持ち出した、奇跡的に状態の良かった歴史の本を持ち出し、知識を得ながら、ベレスは平原へと歩き出します。

 

 

 ベレスが気になっていた場所の名前、それは勇者の大陸の、勇者の泉という場所。


 そしてこの世界の名前は、レグメンティアと言いました。

 

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