5話 ゲームの世界?

「へっくしょーい!!」

俺はぶるりと身震いした。



ここはとても寒い。風は一切吹いていないのに、体感温度はおそらく5度くらいだろうか。

あいにく俺は裸足、ボロボロの雑巾みたいなズボンとTシャツという格好だ。


「さっっみい!!なんとかしないと凍え死ぬ!」


朝になったらあったかくならないかなぁ……

お腹もすいてきたし、食べるもの探そっと……


俺はゆっくり歩き始めた。


靴がないから、ごつい岩の道は進めない。左の道は少しだけ草が生えているのが見えた。進むなら、足に岩が突き刺さらないこっちの方がマシだろう。



数分歩き続けていくと、小さな池があった。池の周りには草が生い茂っていて、池の水はほんのり紫がかっている。水面はキラキラと弱い光を放っていた。


ちょうどいい!水分補給しとこう。

そう思い、俺は池を覗き込んだ。水面に自身の顔が反射する。


そこには癖のない柔らかな黒髪、鋭い光を放つ赤い瞳があった。

そしてその姿は、とても幼かった。

虚弱で細い腕は今にも折れてしまいそうだ。


「おわーっ!?誰!?」


驚きで思わず後ろに倒れそうになる。

これが、俺かぁ。やはり輪郭や体つきも5歳児だった。


これじゃやっぱりお酒が飲めないじゃないか……


俺はがっくり肩を落として、しばらく水面に反射する自分の顔を見つめていた。


5歳児がなんでこんな所に……?

俺の母親は一体……?


なんてことを考えながら、俺は池の水をすくい、ゆっくり飲み始めた。


それは冷たくてほんのり甘みがある。

日本の天然水より舌触りが硬い。


……あれ、なんだか力がみなぎってくる気がする。この池の水は、不思議なパワーが込められた水なのかもしれない。


夢中になってその水を飲んでいると、目の前にこんな文字が現れた。


『スキル《分析》が完了しました。

この水は魔力が込められたアウリンというものです。摂取したことにより、HP、MPの総量が15アップしました。』



え!?なにこれ。ちょっと待って。


「HP?MP?ゲームの世界なの?ここ…

自分のステータスはどこから見れるの?」

『ステータスを視界の右上に表示しますか?』

「はい」

『ステータスを右上に表示しました。』


おそらく、システムと思われるものが返事をしてくれた。


視界の右上に表示されたステータスは、なんとも簡易な物だった。


自分のHPとMP、満腹度と種族、レベルが視界の右上にポコンと効果音を鳴らしながら現れる。


なになに…?


HP 12→27にアップしました

MP 10→25にアップしました

満腹度 42/100

種族【固有】:魔王 Lv.1


魔王、レベル1?

俺は目を疑った。俺が、魔王?

目立たない存在で平凡な俺が、魔王…?


ありえない………


俺は唖然として、しばらくその場を動けなかった。


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