4話 こんばんは。ぼっち極めてます。

「零くんってイケメンなのに、なぜか存在忘れられがちだよね」

「ミステリアスで、私はすごく興味あるけどなぁ」

「いつも教室で小説読んでたけど、横顔が綺麗だよね」

「んー、悪くいえば空気だろ。あんなやつ存在してもしなくても関係ないっつーか」

「ははは、それは間違いない」



___そう、そのポジションが、1番良いんだよ。


凡人には理解しがたいかもしれないが、俺は人と関わりたくない。常に1人でいたいタイプだ。


何を言われようが、俺は存在が空気。つまり、3秒後には忘れられていると言っても過言ではないほど、軽くて記憶にも残りにくい存在……



そして、きっと俺が死んだという話も3日くらいで収まるんだろう。



「あぁ、良い人生だった」


うんうん、と俺は頷く。


クラス内ではまるで空気みたいな存在でいることが出来たし、最後はひっそりと人助けをして死ぬことができた。


なんてかっこいい終わり方なんだ。

これぞ俺の理想の死に方。


「完璧だな!俺の人生に悔いなし!

奏斗が一体どういう存在だったのか気になるけど、まぁいいや!」


俺は伸びをして全身の力を抜いた。



…………って、あれ?


そこで俺は重大なことに気がついた。


おかしいぞ。俺、口がある。


大慌てで顔に触れてみる。

そこにはきちんと鼻と口と目があって、心なしか肌はなぜか以前より柔らかい。

頬には弾力があり、もちもちすべすべしている。


あれ!?そういえば手もあるじゃないか!?

俺は急いで視線を自身の手に向けてみた。


……まるで5歳児の手だ。

小さく、感触は柔らかい。



……俺、ガキに戻ったのか?


思わず目を見開く。

18歳、だったはずなんだけどな。

あと2年でお酒が飲める歳になるから楽しみにしてたんだけど、もし俺が5歳になってしまっているなら……それは発狂ものだ。



続いて足元に視線を移してみると、俺は裸足だった。なるほど、だからさっきから少し肌寒かったのか。足裏に感じる岩の冷たさは足先の熱をどんどん奪っていく。



そして、俺はボロボロの半ズボンを履いていた。


なんだこの雑巾みたいなズボンは!!



ツギハギだらけのズボンは、所々穴が空いていて、裾から糸が垂れ下がっている。



一体俺はどうなった!?死んだんじゃなかったのか!?そういえば、俺は火災による火傷も一切負っていないようだ。


あんな大火事の中に突っ込んで行ったのに火傷をしていない?ありえない。


……あれは夢だったとか?


いや、めちゃくちゃ痛かったし熱かったし、焦げ臭かったし、ないない。




俺は全て否定するように首を横に振る。



というか俺、肌真っ白!!鏡がないから手と足しか見れないけど、これぞ、The美白!!

化粧水か日焼け止めの宣伝出れるくらい、肌が綺麗だ……



俺はしばらく「わっしょい、美肌、わっしょい」なんて言いながら踊っていたが、ふと我に帰った。



____え、ちょっと待って、俺…なんで生きてんの……?



これが、ありがちな異世界転生ってやつ……?



いやー、せめて説明がないとついていけませんよ神様ァァ……



というかここ、どこだ……。



周囲は薄暗くて嫌な空気が漂っている。どす黒いオーラを纏っているみたいな……澱んで汚染されている感じだ。これをもしかしたら瘴気、と呼ぶのかもしれない。


木々が生えていることから、おそらくここは森だろうかと推測する。木々には真っ黒な葉が生えていて、月光を鋭く跳ね返している。


地面は角張った石と怪しく紫に輝く結晶に埋め尽くされていて、幻想的だ。


空を見上げると、大きくて真っ赤な月がギラギラと発光していた。


うわ〜なにこれ。漫画とかアニメでありそうな光景じゃん。お化け出てきそう。



「誰かいませんかー?あのー……」


呼びかけてみるが、シーンと静まる森。


誰もいない。

鳴き声も物音もしない。

風すら一切吹いていない。




おいおいおい、誰か返事してくれよ!!



もうやだ。怖い。俺、帰りたい。

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