樽の中

樽の中にいのちがあり

いのちがあり営みがあり

神がいて幽霊がいて

そして殺人者が生きている。


われわれは樽が倒れて

いのちがみんなこぼれこぼれて

ちりぢりになってしまうことを

ただそれだけを恐れていた。


ただそれだけを消し去るために

神がいた幽霊がいた

にっくきあの殺人者もいた

ところが机は使われなかった。


机は日々落書きに汚れ

燃やされ砕かれ笑われた

ひとたびその机につけば

いつのまにやら殺された。


そういうことを考えながら

たったいま席についたところだ。

天はこぼれてくるだろうけど

たったいま机についたところだ。

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