第15話 タイヤのメインテナンス

「タイヤのメインテナンス」 


 ワシは、クルマの部品の中でいちばん大切なのはタイヤだと思っています。だからタイヤにはとても気を遣っています。

 ワシは無知なる故に、数々の失敗をしてきました。

 ワシは、若い頃は、タイヤの空気圧のことなんか考えてもみなかったのですが、いろいろと知ってしまった今は、タイヤの空気圧に関しては神経質で、給油の度にスタンドで空気圧を確認してもらうようになりました。でも混雑しているときや5Lしか入らないときは迷惑をかけてしまいそうなので、自分でコンプレッサーを購入することにしました。

 ホームセンターで2000円ぐらいで売っているヤツで、シガレット電源方式のものでした。「思ったより安かったのう。」と思いました。それでさっそく、タイヤに空気を入れてみることにしました。

 ちょうどスタッドレスタイヤに自分で交換したときでした。半年以上もガレージに入れてあったので、クルマに装着した時点で、ずいぶん空気が減っているように見えました。ワシは説明書通りに、クルマのタイヤ用のアタッチメントを取り付け、タイヤのエアーバルブに装着を試みました。まず先端の筒状の部分をエアーバルブに被せ、それから上部についている「てこ」みたいなハンドルをグイっと押し下げると、あら不思議、エアーバルブに固定されました。それからシガレット電源を差して、エンジンかけて(バッテリー上がり防止のため)スイッチON。

 ガガガーとけっこう大きめな音がして、見る見るうちに空気がタイヤに入っていく・・・。はずでしたが、これがまったく入らんのんですよ。

「おかしいのう。取り付け方が間違っとるんじゃろうか。」

そう思って、何度もつけたり外したりしてあずっていたら、なんと、エアーバルブが壊れてプシューと勢いよく空気が抜けてしまいました。

 ワシは目が点になりました。そうして泣きながら、ジャッキアップして、交換したばっかりのそのタイヤをまた外して、スタンドにもっていくハメになりました。

 ワシはその時の反省から、この井戸のポンプみたいなアタッチメントはダメじゃと身に染みて思い、ねじ込み式の先端がついたちょっと高級なコンプレッサーを使うようになりました。

 また、あるときはこんなことがありました。

 タイヤをパッと見たら、何かネジのようなものがささっている。ワシはペンチでそれを抜きました。「気がついてよかったのう。」と思いました。すると・・・。翌朝、空気がすっかり抜けていて、目が点になりました。とても短いネジだったので、まさか空気が抜けるとは思ってもみませんでした。

 縁石でタイヤサイドをこすったときは、ぱっくり避けてしまって、見る見る空気が抜けていきました。ちょうど日曜日の夕方で、田舎の山道で、大型のオフロード車だったので、自分で交換できなくて、暗くなっていく空を絶望的な気持ちで眺めながらJAFの到着を待っていました。

 それから、それから。思い出すときりがありませんが、とにかくワシは、タイヤというものの大切さを身に染みて思い知りました。そんなことがあり過ぎて、ワシはタイヤにとても気を遣うようなりました。

 その割には、今考えるとかえってタイヤを傷めるようなことばかりを「良かれ」と思って平気でやっていました。その代表的な「悪さ」が「タイヤワックス」です。洗車してワックスかけて「なんかタイヤが汚いのう。」と思って、タイヤを洗剤とブラシでゴシゴシ洗って、タイヤワックスや訳のわからないケミカル(〇ータッチとか)を毎回使って真っ黒にして悦に入っていました。

 これって、何よりタイヤに悪いことなど知りませんでした。そうこうしながら、いろいろと自分なりに勉強するようになりました。そもそもタイヤって、頑丈に見えますがとても繊細だということを知りました。「合成ゴム」とはいえ「ゴム」ですから、酸素や紫外線にとても弱いこと。(輪ゴムを置いておくとガチガチになって弾力がなくなりますよね。)それから空気圧にとても影響されやすいこと。経年変化しやすいことなどです。それらをひっくるめてものすごく繊細に設計され製造されているのです。「ゴム」を「ゴム」として守る添加剤。それはすでに配合されていて、ミクロの穴から染み出すことによってタイヤを守っているというのです。だからワシのように石鹸つけてブラシでゴシゴシ洗うことは、せっかく染み出した添加剤も洗い流してしまうのです。それから艶出し剤は、そのミクロの穴を塞いでしまい、タイヤを保護してくれるはずの添加剤の染み出しを止めてしまうのです。よく考えたら、人間の皮膚と同じなんですね。ごしごし手を洗ったら手がカサカサになる。ハンドクリーム塗りすぎたらべとべとする。そんな経験を思い出しました。

 ワシは、確かにタイヤサイドの細かい傷が目立つようになったり、べとべとになってしまうことがあったことを思い出しました。確かにぱっと見はきれいになるのですが、そう考えるとタイヤにいいはずがありませんし、思い当たる節がたくさんあるのです。どうしても使いたいなら「水性」のものならダメージが少ないそうですが、高価でした。ワシは「まあ同じようなものじゃろう。」と安直に考えて、安く手に入る「レザーワックス」などを平気で使っていました。

 そういうことがあって、ワシはタイヤは水洗いして、水気をふき取って終わりにしするようになりました。パッと見の艶はありませんが、確かにタイヤが自然にしっとりしていて、べたつきもひび割れもなくて、とてもええ感じのような気がしています。

 基本的に空気圧のチェックは趣味のようにしています。タイヤゲージ(空気圧計)と電動のコンプレッサーは常備しています。服はユニクロですが、タイヤゲージはエーモンの高級品を、それからコンプレッサーはちょっと高いのを通販で買いました。もちろんエアーバルブに対して、ねじ込み式のものを探しました。

 たかがタイヤ、されどタイヤ。奥が深いのうと思っています。それから、ワシのような素人があれこれいじらずに、空気圧の管理をしっかりして、汚れたらさっと水洗い。そういう設計になっているので、いらんことはしないのが一番だと思いました。

それから、この時期ですと紫外線を避けるために意識して日陰に停めるとか、どうすれば「ゴム」が痛みにくいのかを考えるようになりました。

 基本的にワシはお金がないので大事に長く使う。それは今も昔も変わりませんが、無知だったワシのやっていたことは、大事にするつもりでやったことが、まったく大事にすることにつながっていなかったようです。

 友達でも恋人でも、なんでも一緒ですね。わしの人生、そういうことばっかりだったような気がしています。


(もったいないけど)

もったいないけど、山はまだまだ残っていたのですが、

Zのタイヤ。5年目の車検時に交換しました。「新品未使用・製造年月日最新」にこだわってネットで探して、直接日産に送ってもらって、バランス交換廃棄料金全込みで8000円でやってもらいました。純正BSポテンザからミシュランPSにしたのですが、乗り心地も良くなって大正解でした。この忙しいときに仕事もしないで、タイヤの特性とか価格とかものすごく調べました。

フォレスターも同様に、スタッドレスも含めて8本を5年目に交換しました。

お金がどんどん無くなっていきますが、「事故をすることを想えば安いものだ。」と自分に言い聞かせながら、今日もノーブランドのカップ麺を食べながら頑張っています。

 ワシの生き方ってちょっとアホなのでしょうか?(泣)



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