第14話 ワシには評定不能

「ワシには評定不能」


 突然ですがワシ、新型の日産ノートe-powerに乗ってきました。もちろん初めてです。ワシは売れない自動車評論家になったつもりで、その試乗記的なものを忘れないうちに記したいと思います。

 先日、Zの半年点検のために日産に行きました。そしたらなんと、「新型のノートe-power」を代車に貸してくれました。なんちゅう太っ腹なのでしょうか。ワシは興味津々で、お言葉に甘えて、少し乗り回してみることにしました。

 運転席に座った第一印象は、なんか今までのクルマとまったく違うなあということでした。シート位置を合わせてシートベルトして、ここまではわかりましたが、はて、イグニッションスイッチが見つからない。今までの日産車は、ハンドル左下にそれはあるはずですが、どこにもない。あれーっと思ってよく探したら、水平基調のセンターコンソールの棚?の上にちょこんとありました。ついでにシフトレバーもパーキングブレーキのレバーもすべてそこにちょこんと並んでいました。

 ブレーキ踏みながら、さっそくイグニッションスイッチをONにしますと・・。まず真正面にテレビのような画面が立ち上がって、電源がONになったことが分かります。でもいつもの「キュルキュルバオン」というエンジン始動の音も何にもしないので、エンジンがかかったのかどうかもわからない。それから恐る恐る、非常に分かりにくいスイッチのようなシフトレバーをDレンジに入れて、アクセルをじわっと踏んだら発進できました。サイドブレーキは電気式で自動的に解除されました。そのときようやくエンジンが始動した(ような気がした)ので、あとは普通に走ることができました。メーターパネルはまさしくテレビそのもので、スピードや燃料や何か知りませんけどいろいろな情報が表示されていました。

 それからしばらく街中を走ってみました。基本的に操作が必要なのは、アクセルとブレーキとハンドルだけで、あとはすべてオートです。そのすべてに手ごたえ足ごたえが希薄で、まるでゲームセンターのクルマに乗っているようだと思いました。

 ワシはものすごく違和感を感じましたが、慣れてしまえばこれはこれで便利で使いやすいんじゃろうなあと思いました。

 郊外に出て、少し飛ばしてみました。

「思ったよりもずっと速いのう。」

というのが、ワシの感想です。足回りは少しゴツゴツしていますが、それはそれでありかなあと思いました。なにせ日産車ですから。よく走ってよく曲がってよく止まってくれます。モーターですので初期のトルクも大きくてグイっと力強く出ます。それからミッションもないので、そのままスムーズに加速していきます。途中でエンジンが動いたり切れたりしているようですが、基本的に静かなのであまり感じませんし、とにかくスムーズです。エアコンもよく効くし、よくできたクルマじゃなあと思いました。

 でもなあ。ワシの感覚が古いのかも知れませんが、これって乗って楽しいんじゃろうかとずっと思っていました。何のためにクルマに乗るかというと、もちろん移動のためですが、ワシは楽しむためだとも思っています。クルマに乗ること自体が楽しい。「便利」なだけじゃあなくて「楽しい」ことも大切だと思っています。「楽しさ」の感覚は人それぞれ違うとは思いますが、「楽しい」クルマって年々減っていくような気がして寂しい気持ちになることがあります。

 じゃあ「新型の日産ノートe-power」はどうなのか。はっきりいってワシにはわかりませんでした。ただこれまでクルマとはまったく違うクルマなので、まったく違うの価値観で見る必要があるんだということが分かりました。これまでのワシの経験なんてまるで役に立たない。つまりワシには、このクルマの良さも悪さもまったくわからなかったのです。

 例えば「燃費」という物差しで見るのなら、燃費計はなんと30.4km/Lを示していたのでびっくりしました。すごいとしか言いようがありません。申し分なくいいクルマでしょう。

 加速性能もすごいと思いました。確かに速い。速いことは速いけど、なぜか面白味のない速さじゃなあと。まるで新幹線的な速さじゃなあと思いました。


 2時間ばかり走って、日産に戻ると、Zが仕上がって置いてありました。ワシはZをぱっと見て「やっぱりカッコええのう。」と素直に思いました。ワシはこの瞬間だけで、Zを無理して買って死にそうになって維持している価値があると思いました。

 Zに限らず、ちょっと前のクルマって、そういうわかりやすさがあって、それが十分にこちらに伝わってきていたと思うのです。

 でノートの姿かたちなんですが、確かに今風の凝ったデザインであることは伝わってくるのですが「カッコええ。」という感じはまったく受けませんでした。結論から言うと、ワシはノートのデザインを見ても、ええのか悪いのか、つまりカッコええのかカッコ悪いのかさえまったく分かりませんでした。


 まとめると「新型の日産ノートe-power」確かに今風のええクルマだと思います。機械的にはとてもすごいクルマだと思います。でもわからんこと、伝わってこないことが多すぎるのです。だからワシごときには「評定不能」でした。ついでに言わせてもらうと「買おう」とも「欲しい」とも思いませんでした。これに乗ってどんな楽しいカーライフを送るか、そういうことがまったく想像できなかったからです。

「だめじゃねえ、歳を取ると。」確かにそうですね。きっとワシのせいなんでしょうねえ。


 



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