第2話 俺の前世は″ミミック″?


カチカチカチ

変な音がして俺は目を覚ます。


マオちゃん?

俺の身体をドライバーのようなもので、いじる幼馴染。ドライバー?おかしいな、俺、機械じゃないはずなのに


いや、そもそも彼女はマオちゃんなのか?


スラリとした細身のボディー、ぷっくりした唇、万人を魅力する黒い瞳、そんな彼女だか頭にはツノが生えていた。


服の薄い布で、オッペイが見えそうで見えないそんなハレンチな服を着ている。普段では絶対にありない服だ。だが美しく着こなしている。


マオちゃんは俺を弄っているようだが、快楽などは感じない。プラモデルのようにカチッカチッ!と嵌め込む音が聞こえて俺は起き上がされた。


「ふふふ、完成したわ。忌々しい冒険者共を懲らしめる″ミミック″。さあ目覚めなさい!」

ミミック?これが俺の前世なのか?


ツノが生えてマオちゃんに抱えられて俺は、ひび割れた鏡に全身が映し出された。その姿はまさしくミミック、木の箱に鋭い牙が生えており、箱の中に目の怪しげな光が灯っている。困惑する俺。


そんな俺に構うことなくマオちゃんは、石でできた壁を豪快に破り、ミミックである俺をぶん投げた、遥か高く飛んでいく俺は雲を抜けた。


ブワーー!

風が気持ちいい。空を飛んでいる。背中にグググっと力を込めると小さな羽が生まれたが軌道は変更できないようだ。ちびりそう


それから数日飛び続け、とあるダンジョンにゴールイン、中は薄暗く、火を吹く竜や糸を吐く巨大な蜘蛛がいたが、楽々と突破する。


シュルルルルと回転をしながら水捌けがいい、ダンジョンの隅に置かれた。身体は箱、うまく動けずにその場にいることしかできない。悔しくて堪らない。マオちゃんの側に行きたい。だが無理だった。


それから何日、何ヶ月、何十年という歳月が過ぎた。前世の

記憶だから早送りが可能だが、1人でずっといたら心が病んでいただろう。


ミミックはときどきくる冒険者に噛みついて驚かせることが唯一の生きがいとなっていたが、箱(身体)は魔獣のおもちゃとして遊ばれてボロボロになっていく。そして口(蓋)開けることすら困難になり、錆てゆく。


コツコツコツッ

久しぶりにダンジョン内で靴の歩く音が聞こえる。その音が段々と近づいてくる。冒険者がきたのか?目を徐々に開き見る。


長い金髪と豊満な胸を揺らす女性。彼女の後ろからは、大量の魔獣に追いかけている。

彼女は振り返える。ユウイ?


ユウイと思しき彼女は、眩い光を反射する金色の鎧を着ていた。


「散々やる力の源よ。私に力を貸して!」


ユウイと思しき彼女は、光の粒子を手に集めて魔物の身体に叩き込む。魔物は粒子状になり、消えていく。恐ろしい技だ。身体がぞわりっと震えた。


「あれ?こんな所の宝箱がある。ラッキー」

ユウイとしき女性は、俺に近づく。だが残念。宝箱じゃなくてミミックでした。前世のミミックである俺は勇敢に彼女の腕に噛み付いた。が、彼女はダメージを一切受けていない。


彼女にヤられることが想像でき、前世の俺は小刻みに震えた。あれ?攻撃してこない。

彼女の方を見ると目を輝かせていた。


「ふふふ、ミミックちゃん可愛い。いいこと思いついたわ、君、私の相棒(ペット)になりなさい。なーに、ちょっと協力してもらうだけだから」

彼女はミミックを使ってなにをするかと思ったら、なんとミミックに武器や食料を食べさた。ミミックの中は無限空間となっており、大量の物体を出し入れすることが可能のようだ。


その特性を利用して前世の俺であるミミックを荷物係として任命したのだ。


こうして俺の前世であるミミックは、長年の間、ユウイの従魔となり、長旅をした。


そして旅の途中で、彼女は勇者の称号を授かり、世界の半分を支配している魔王に挑むことになる。


「ミミックちゃん、あなたは今回は来なくていいわよ」

酷くやつれた顔で彼女は言った。魔王の城の中に入っていく彼女をミミック(俺)はコウモリのような翼を生やして彼女の後をそっと近づいていく。気づかれないように。


ユウイを思しき彼女は、ツノを生やしたマオちゃんに剣を向けた。え?マオちゃんの前世魔王だったの?ユウイの前世が勇者……。

衝撃の真実だ。


「お前は誰だ?」

「私は勇者、魔王を倒すもの」

「そうかお前が勇者か……本当にこの私と戦うつもりか?」

「ええ」

「全く愚かだな。いいだろう受けてたとう」

勇者と魔王のサシの戦いが始まる。


勇者が手に光の粒子を集めて叩き込む。魔王の転移魔法使い勇者の後ろにワープして、空振らせる。


が、

それを読んでいた勇者は、わざと空振った拳を後ろに向かせて光の粒子を放つ。


光の粒子は魔王のツノを掠めた。それだけでツノは崩壊して消える。勇者の力が危険だと判断して魔王は、手に持っている黒い本を開いた。


「プリズン」

勇者の上空から鉄格子が生まれ、勇者を閉じ込める。勇者は再度、拳に光の粒子は集めて鉄格子を破壊した。


「こんなもの?魔王の力は、思ってたより弱いわね、とっとと死んで」

勇者の低い声と共に魔王の身体が抉られて、魔王に心臓が勇者の手にある。勇者は一切の迷いなく潰した。


はずだった。


ガハッ、

勇者が突然、血を吐き出した。


「勇者、その心臓は私のものではない。お前のだ。とっとと死ぬがいい」

勇者は、魔王に幻影魔法にかけられて自分の心臓を潰した。それでも勇者の超人的な回復スキルで、死ぬことを免れる。しかし、対価として勇者の意識が消え、暴走する力のみが残った。


「これまた厄介な」

純粋の力が魔王に降りかかる。勇者と魔王の力はぶつかり、城が吹き飛び、大地が揺れた。


近くいたミミック(前世の俺)は箱自体は伝説級のオリハルコンと黒龍石で作られているため、無傷ではないとはいえます消滅は防いだ。


ダン ダン ダン

大地が何度も揺れる。その度に山は吹っ飛び、海が蠢き、街を飲み込む。


勇者と魔王が、最後の一撃を放とうとする。両者拳だ。そこにミミック(前世の俺)は飛び込んだ。


「「!?」」

勇者と魔王の全力はミミックにぶつかり、ミミックは箱が割れ、ミミックの中に眠っていた神話級も転移石が割れた。


転移石が割れただけだったらよかったが、転移石に勇者と魔王のエネルギーが上乗せされて、空中に漂う魔素が連続的に爆発。


結果として星ごと破壊してしまった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーー


これが前世の俺に起きた出来事か。なんというかスケールがデカすぎるぞ。 


俺は前世の記憶を見終わり、現実へと帰還する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る