幼馴染は勇者と魔王〜俺は前世帰りでミミックに!?〜

阿倒 道一

第1話 2人の幼馴染

現代日本 豆亜留(とある)高校


天童エイト 高校生2年 17=彼女なし(童貞)短髪黒髪黒目、平凡な顔立ちした高校生である俺には2人の幼馴染がいる。


1人目は、星月ユウイ

運動部のスーパースターで、球技、水泳、陸上などで常に一番をとる伝説になる予定の怪物だ。女である彼女は外国人のハーフであるため金眼金髪ストレートをしている。巨乳。男子生徒に毎日にように告白されている彼女は忙しそうだ。


2人目は、黒陽マオ

図書室のダークマターで、本を人一倍愛し、本の管理を先生に任された絵に描いたようエリート図書委員。胸は控えめ。

三つ編みの黒髪で、前髪には黄色の髪留めをしている。俺は彼女のこと好きだと恋心を抱いているが、思いを伝えるのには恥ずかしくて告白はしていない。


「おーい、エイト、木の上で望遠鏡を片手に何をのぞいているんだねー」

「げっ、ユウイ」

「何が、げっ、だ。君はもうちょっと節度を持って僕に接したまえ」

「はいはい」

僕っ子のユウイは、男子生徒から渡されたラブレターを長めの靴下の間に挟んでいる。はみ出した太ももが見えて、ちょっとエロい。


「ん?どこを見ているんだね、ああこれね、僕はもう告白されることにウンザリしたよ。この退屈な世界にね………ふ」

イキったことを言うユウイは空を見て、しんみりしている。そんな横側を見ていると突然強風が吹き荒れ、彼女の顔面に、一枚のチラシが張り付いた。彼女はモゴモゴしている。息が苦しそうだ。


「誰だ!チラシを捨てたのは!僕の顔が傷ついたかもしれないじゃないか!訴えてやる!」

「そこまでは、無理でしょ」

「いいや。現代の科学では指紋から犯人を見つける手段がある。まるで魔法だ。魔法じゃないけど」

「随分と博識だな、ん?″前世診断″?」

ユウイの顔面に張り付いたのは、ローブを羽織った老女が水晶玉に手を掲げながらウインクをして、


『あなたの前世占います☆無料でね!』

と書かれていた。胡散臭すぎるチラシだが、ユウイは何故か目を輝かせてこちらを向いた。どうしたんだろういったい……嫌な予感がする。


「エイト、今日暇?暇だよね?いきなりだけど僕とデートしよ、嬉しいでしょ?」

目の奥が笑っていない彼女が笑顔で近づいてくる。怖い怖すぎる。俺は一目散に逃げたが、数秒後には彼女の手が肩にあった。


「どうして逃げるの?僕とデート嫌なの?

……嫌なんだね……しょうがないな……うぇぇ、うぇぇぇぇ!!!」

やばい!こいつ嘘泣きを始めやがった。いつもそうだ。こいつはクソ強いくせに、いざと言うときに嘘泣きを始め、女の特権を最大限利用するのだ。


こうなると周囲では、か弱い生き物である女のユウイを泣かせたのかは男である俺とされ、すでに周囲では、


「あいつ、ユウイさんを泣かせやがった許せねえ」(野球部の男子部員)


「あれひどくなぁい、女の子を泣かせるなんて、まじあり得ないんですけど」

「あり得なぁい」「うんうん」

(通りかかりのギャルたち)

などに言葉の暴力を俺に浴びせる。 


こうなると俺は、何もする訳にはいかず、嘘泣きを続けているユウイの元に行く。


「俺が悪かったから泣くの辞めてくれ。頼むから」

「本当?僕とデートしてくれるの?」

涙目からの上目遣い。う、可愛い。

いかん心臓がドキッとしてしまった。仕方ない俺の名誉のために一旦彼女に従うフリをするか。


「う、うむ、わかった。」

「やったー!みんなー!僕はもう大丈夫だから、自分のことに専念してねー!」

ユウイは立ち上がり、ピョンとジャンプして周囲の心配をした人々の感謝の意を述べた。


ヘイトが俺の刺さりながらも、周囲の人々は元の日常に帰っていく。


「で、いきなりデートってどこにいくんだよ」

「それは占いの館だよ」

老婆が水晶玉に手を掲げながらウインクしている絵があるチラシ『あなたの前世占います☆無料でね』を見せてきた。


やっぱり。場所は駅前か。


「了解だ。ユウイ(どうせ家に帰るまでだ。辛抱しよう)」

こうして俺とユウイは駅前にある。占いの館とデカデカと書かれた場所に、かりそめの放課後デートをしに行くのであった。


ガヤガヤガヤ

無料なだけあってか結構な人だかりだ。

30人以上いるな。


「人が多いな、今日じゃないとダメなのか?」

「ダーメ、明日は水泳の大会、明後日は陸上の大会、明明後日はドッチボールの大会に出る予定なんだ。その後も練習あるしね」


「なんだが、すごいハードスケジュールだな、俺なら1日、いや5分でやめるわ」

「ぼ、僕が楽しいんだからいいでしょ」

「人生、楽しんだもの勝ちか」

「イエス!」

親指を立てるユウリ。


そんな彼女の話をしている時に、鼻に柑橘類のいい匂いがツンッと鼻に突き抜けた。

そして振り返ると、もう一人の幼馴染、黒陽マオがこちらをジーと睨んでいた。


「……マオちゃん?」

「ふんっ!」

痛っ、マオちゃんの艶やかな髪の毛が顔に当たる。マオちゃんは俺の元を去っていき、占いの館に入るための長蛇の列の最後尾の並んだ。腕には黒色に革に覆われた本を抱えている。可愛い。やっぱり俺は彼女のことが好きなんだ。


トントントン

俺の肩を叩くものがいるユウイだ。なんなんだと振り返ると彼女は、ムスーと頰を膨らませていた。リスみたいだ。カワイイと聞かれればカワイイのだろう……。


「エイト、僕というものがありながら、他の女に鼻を伸ばすとは、めっ!だぞ!」

「伸びてねえし!」

人差しを立てられて思わず反応をして俺は、思いがけずにユウイのオッペイを揉んでしまった。手に収まり切らないほど大きい。親指のコリっとした感触があった。ユウイの顔はみるみる内に、茹でダゴのように真っ赤になる。


「身体までは許した覚えはないよ!」

パチィーン!


皮が厚いユウイの手が俺の頬を叩き、頬には赤い手の跡を残した。イテテ、これは俺が悪い、彼女は目から涙が少量出ているが、耐えている。嘘泣きではない。


「俺が悪かった」

「うん、うん、今度から気おつけてね……」

やっぱり俺は、彼女のことは女として見れないようだ。心が寒い。


……おっと急に列が進み始めた。

案内係の若い女性が「はーい、じゃんじゃん入って下さ〜い」と客をドンドン占い館の中に入れていく。数して30人ほど一気にだ。

黒陽マオちゃんもいた。


俺たちも中に入っていく。中は大きく開かれており、端には階段がある。何か既視感があると思ったら、ラノベとかで見る集団転移の前みたいだ。ご丁寧に俺たちは謎の文字が書かれたサークル状の中にいる。


しばらくすると電気が消えて真っ暗になったと思ったら1箇所場所に照明が当てられた。


2階の中心、ちょうど俺たちを見下ろす形でそこにいたのはチラシの描かれていた水晶玉を持つ老女だった。案内係の女性が老女が乗る車椅子を押して、俺たちが見えやすい場所で止めた。


「はーい、皆さん。こーんにーちわー」

「「こんにちわ〜」」

老女の声に、地下にいた小学生の女の子2人が答える。とりあえず静観をしておこう。


「あらあら、今日は小さくて可愛いお客さんも来ているのね、嬉しいわぁ。さて、早速だけで皆さんには前世のことを思い出して貰います。もしも、前世なんて思い出したくない!と言う方がいらっしゃったら、どうぞお帰りください、お出口はう・し・ろ」

老女は口の中が全部金歯だということをわざと見せるかのようにニッと笑った。

めっちゃ胡散臭いが、ここいるのは好奇心できた者達、帰る人はいなかった。俺は帰りたいが、ユウイが俺の肩を掴んでいる。イタイイタイ。


「では始めるわ・ね」

車椅子に乗った老女が膝の上に置いてある水晶玉に手を掲げて呪文を唱え始める。


「リバース リバース、ゼロリバース。根源たる魂の深淵に眠る記憶よ、その姿を今ここに蘇るのだ、″リフレクション″!!!」

水晶玉から眩い光が発生し、サークル上にいる俺たちを一気に飲み込んだ……

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