奇祭

沼田くん

第1話

 男の人が私をここに連れてきた。村に来てまだ日が浅い深雪は、村に見る初めての場所だった。普段は、村人の誰も入れない場所。 

 ここで深雪は気を失った。気づくと体が動かなかった。後ろ手に縄で縛られていた。

 どうして、こんなに縛られているの?

 怖い!

 でも、深雪を縛った縄尻がエレベーターの蛇腹の扉に繋がれていて逃げられない。 

 深雪は叫んだ。

 たすけて❗縄を解いて❗

 声が震えた、霞んだ。

 不安と恐怖の中で、必死に耐えた。

 と、エレベーターの階を示す数字が時々点滅して動きだした。下から徐々に上がってくる。

 誰かいるの?私をここに連れてきた男の人?

 でも、化け物だとしたら…。

 不気味な廃墟のようなところ。あり得ないことではない。

 この階まで上がってきて私を見つけ、そして私を食い殺すに違いない。

 深雪は、背筋が凍りついた。

 エレベーターが、すぐ下まで迫ってきた。

 どうか、化け物でありませんように。

 祈った。

 深雪の階で止まった。

 パン!パン!パン!

 大きな音がいきなりした。

 どやどやと、人、人、人が吐き出されて来た。

 目を丸く、唖然として見つめる深雪。

 人の中に、深雪と同じに、後ろ手に縛られている女性がいた。一人でない、二人、三人いた。私を含めて四人。

「さあ、パーティーを始めよう!」

 誰かが叫んだ。

「生け贄の女たちを血祭りにあげろ!」 と、何かが体に降りかかった。赤い何か。糸だった。

 そして、深雪たち縛られた女の回りを躍り回り始めた。ぐるぐる、ぐるぐる、狂ったように男たちが躍り回る。 男たちは躍り、酒を酌み交わし、肉を食らい、村に招いた女たちと語らうのだ。

 今日は、村の長老が主催する、世にも不思議な年に一度の婚活の日なのだった。

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奇祭 沼田くん @04920268

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