第22話 キョウイ判定は『禁断』の言葉!? 気になるあの子が一段とデスペラードに変身!?

 まぁ、とにかく、切り替えてオトリ作戦開始だ。


 この間はミシェルはいないし、ウィンと二人っきりになれる。


 その間に事情を話そう。


 前言っていたけど、ウィンも二人がくっついてほしいって思っているみたいだし。


 きっと協力してくれるはず。


「はい、フィルお兄さん、これ」


「え? なにこのバスケット」


「サンドウィッチです。これからみんなさんは例の人さらいを追うんでしょ? きっと遅くなると思って、おなかすいたらみんなで食べてください」


「クーン!」


「もちろん! キミのもあるから心配しないで」


 RMBLRMBLゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……。


 うしろから変な空気がただよってきている。


「う、ん……あ、ありがとう」


 はぁ……もう、息がつまる。


「なぁ? リリー? ああいうこと誰かにしてやりてぇって思うか?」


「はぁ? ほぼ毎日みんなにしてるじゃない。バカなこと言ってないで早くいくわよ」


「おい、ちょっとまってくれよぉ~」


 もう、というかさぁ……。


 これ変化球すぎるんだよ。


 そう思わない?


 ストレートにはっきり言えばいいのに。


 そうだよ。最初っからそうすればいいんじゃないか。


 と、とにかくアニキたちは東の方を、僕たちは西の方へ回ることに。


 ようやくウィンと二人っきりになれた。これで……。


 TAPP TAPP TAPP TAPP――。


 なんか歩くの速くない?


「ウィン、ちょっと話したいことあるんだけど?」


「やだ。聞きたくない」


 TAPP TAPP TAPP TAPP――。


 はぁ……聞き耳さえもってくれない。どうしよう。


 TAK!


 って思っていたら急に立ち止まってくれた。


「……ハァ……くだらない話なら聞きたくないんだけど」


「うん、実はね。すごくまじめな話なんだ」


「じゃあ、絶対聞かない」


「なんで!!?」


 これはもう話の前に誤解を解くのが先かな。


 でもどうやって?


「……フィルはさ、あういう子が……その、好き、なの?」


「え? いやそんな! 前にも言ったけど、僕が好きなのは――」


「きゃああああああああああああああああああああああああああああっ!!」


 え……今の声は!?


「ワン! ワン!」


「リリー姉ぇの声だ!」


「東の方からだ! 行こう! ウィン!」


「うん!」


 すぐに僕らはリリー姉ぇさんの声の方へと走り出した。




――モルガバレー 東地区――


 急ぎかけつけるとそこには――。


「リリーッ!!」


「レヴィンっ!!」


「くそっ!! てめぇっ!! リリーを放しやがれっ!!」


 大量の人形がリリー姉ぇさんに群がって連れ去ろうとしいたんだ。


 BANG! BANG!


 ZAMM!!!!


 ざっと50はいる人形をアニキは必死に壊して、止めている。


「なんだ!? こいつら!? 人形?」


「ガウ! ガウ!」


「考えるのは後! ぶっ壊すよ。フィル!」


 人形たちの視線がいっせいに僕らに向いた。


『胸囲識別……個体性別、男と判定。その他小動物認識、いずれも対象外。捕縛対象の保護を優先します』


「しゃべった!?」


 というより気にしなきゃいけないことがある。


 小動物ってキキのことだとして、こいつら男が二人いるっていってなかった?


 ウィンを男としてみている? なんで?


 そういえば胸囲がどうとか……あ。


 RMBLRMBLRMBLRMBLRMBLゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ……


「ふふふふ……男? 胸? こいつら、アタシのことを男みたいっていった?」


「ウィン? 落ち着いて、今は――」


「ふふふ、ふざけんな!」


 BANG! BANG! BAMM!  KABOOOOOOONN!!


「だれの胸が男みたいだってぇっ!? ぶっこわしてやるっ!」


 BANG! BANG! BANG!


 だめだ。もうウィンを止められない。


 これこそまさに絶望的状況デスペラード


 と、とにかく今はリリー姉さんを助けなきゃ。


 くそ、どこにいったんだ!? 


「リリーっ!!」


「レヴィンっ!!」


 ああっ! もうあんな遠くに!


 あの街道の先はたしか町の外だ!


 外に出られたら追っかけるのは無理だぞ!


 ならやることは一つ!


 BANG! BAMM!


 僕はアニキのジャマをする人形たちをけちらすだけ!


「アニキっ! 援護する! 行ってっ!」


「おうっ! すまねぇっ!」


 人形たちをかいくぐりアニキは街道を突っ走っていた。


 よし、あとはウィンをなんとかすれば――。


「みんなみんなぶっこわれちゃえぇーーーっ!! あははっ! はははっ! あはははっ!」


 BAMM! BANG! BAMM!


 BUUUUUUUUUUUUMMM!!


 うん、ムリ。


 むしろ気が済むまでそっとしておいてあげよう。






 それからウィンが落ち着くのを待ってから僕らはアニキを追いかけた。


 見つけたのは馬を飛ばして、間もなくのこと。


「ワン! ワン!」


「え? 見つけた? あ、いた! アニキ!」


「レヴィン兄ぃっ!」


 アニキはというと荒野のど真ん中でへとへとになりながらさ迷っていた。


 あてもなく。それも何かにとりつかれたように。


「止まって! レヴィン兄っ! 馬つれてきたから乗って! ちょっと聞いてんの!?」


「オレ……が、助ける……リリー……を……」


「ああ、もう!」


 頭きた!


 馬をおりて僕はアニキの横っ面をぶんなぐった!


 BONK!


「しっかりしろ! バカアニキ!」


 この時、生まれて初めて人をなぐったよ。


 ああ、人をなぐるって、自分の手もいたんだなぁ……っていうのが素直な感想。


「いくらなんでも取りみだしすぎ! 心配なのは分かるけど! まずは落ち着け!」

「あ……」


 目を見て分かった。


 どうやら正気に戻ったみたい。


「フィル! ウィン! なんでここに!?」


「もしかして……見えてなかったの?」


 そこまでリリー姉さんのことを。


「あのさぁフィル? 今日のレヴィン兄ぃ、なんか変だよ。何があったの?」


「えっと実は……」





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「レッテルが『価値』あるものになるには……?」

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