第18話 かつての仲間の『闇堕ち』のウラ側!

「感謝するぜ、お館様の屋敷はここから馬で半日ぐらいのところにある」


「半日ですね」


「ああ、モルガバレーの町長でよ。そこのでっけぇ、ベリルシャトーってとこに住んでいるから。紹介状送っておくから、2日後ぐらいに訪ねてみてくれ」


 あらかじめ話を通しておいた方がいいだろうってことで、手紙をマスターの方からポニー・エクスプレスで送ってくれるらしい。


 ありがたい。


 じゃあ、次の目的地はモルガバレー。


「モルガバレーってどんなとこなんだろう?」


「たしか、水が豊富にあるきれいな街だって聞いたことがあるよ。ここらへんじゃ一番栄えてるんじゃないかな」


「2日後ということは、着いてから、しばらくゆっくりできるわね」


 うん、最近旅してばっかりだし、すこしのんびりしてもいいかも。


「じゃあじゃあ! 観光してもいい!? お買い物とか!」


「ええ、そうしましょうか」


「やったぁー!!」


 観光か、女の子ってそいうの好きだよねぇ。


 自分も割と好きだけど。


「いっしょに行こうね! フィル!?」


「え? いいの? ついてって?」


「もちろん!」


「じゃあ、デートね」


「なっ!」


「り、リリー姉ぇ!!」


「ジョークよ。それじゃあ、そろそろ出発しましょうかしら」


 うわぁ……リリー姉さんのせいで、なんだかもんもんする……。


「ああ、そうそう。一応報告な。おたくらのランク、いっきにCからAに上がったぜ!」


「ほんとですか!」


「おう、〈グリードウォーム〉の功績がでけぇ! さっきも言ったがおたくらは恩人だ。困ったことがあったら何でも言ってくれ、力になるぜ」


「やったぁー! リリー姉ぇ、これでいっぱいかせげるよ!」


「そうね。これでもう少し貯金にまわせるわね」


 弾だってタダじゃないからねぇ。


「あ、そうだ。言い忘れたことがあったんだ」


 またしても引き留められる。


 どうしたんだいったい。


「最近、ここいらで賞金稼ぎバウンティ―ハンターをねらって、サギみたいなことをやってる、初老の男がうろついているらしい。新聞に書いてあったぜ」


「へぇ……」


「初老の男ですか……」


 なんだろう。少し気になる。


「くわしいことはわからなぇんだが、まぁ、おたくらなら心配ねぇと思うがな。一応気を付けてくれ」


 なんか他人に不安をあおっていおいて、いい加減。


「つーか、新聞ぐらい買え、賞金稼ぎバウンティ―ハンターにとっちゃ貴重な情報源だぞ、ほら、もっていけ」


 FLUP……。


「いいんですか?」


「かまわねぇよ。べつに」


「ありがとうございます。そうだ、ついでと言ってはなんですが、マスター、プレーリー・オイスターを一杯いただけませか?」


「フ……んじゃ、それもオレのおごりだ」


 こうして僕たちは、陽気な鉱夫の町トパゾタウンを後にした。






―― 一方その頃、ルチルタウンでは ――


「どうすんだよ! リーダーこれから!」


「うるせぇ! 今考えてんだよ!」


 くそっ! どうしてこうなる!


「もう明日のメシ代もないよ!?」


「うるせぇっつってんだろ!」


 オレは間違ったことはやってねぇ!


 所詮しょせん、この荒野は弱肉強食!


 弱いものは生きられねぇ。


 まさか、オレが弱い!?


 そんなわけがなぇ! あの女に負けたのは油断していただけだ! 


 そうじゃなきゃ、あんなふざけたやつに、このオレが負けるわけがねぇ!


 くそっ! やつにやられたキズがうずきやがる!


「ちょっと、リーダー、だいじょうぶか! また体が――」


「うるせぇ!」


 DONK!


「ぶはっ!」


「痛てぇ、痛てぇんだよ! チクショー!」


 そうだ! あの女だ! 全部あの女のせいだ!


「そうだ。まずは、オレをブタとののしりやがったあの女だ。オレと同じ苦しみをやつにあたえてやる……ケヒッ!」


 簡単なことだったんだ。


 思い通りにならないのなら、全部壊しちまえばいい。


「やすやすと殺したりはしねぇ。鼻をつぶし、耳をつぶし、顔を切り刻んで、クソしながら犯してやる……ケへへへ」


「……お、おい、リーダー……いったいどうしちまって……」


 そうだ。それでいい。


 そうすればオレの名は大陸中に広がる!


「ずいぶんとお困りのようですな」


「誰だっ!」


 なんだ、このふさふさあごひげジジイは。


「これは申し遅れました。私はノヴァ=アルカージィと申します」


 以外にがっちりしてやがる。


 だが見るからにあやしいヤローだ。


「そこで話を聞いておりましたが、ずいぶんお金に困っていた様子ですねぇ、よければ話を聞かせてはもらえませんか?」


「ジジイに用はねぇ、とっとと失せろ」


「これは手厳しい。では私のお願いを聞いてくだされば、5万ノル差し上げると言ったらどうされますか?」


「なに?」


 5万ノルだど?


 そんな大金会ったら一生遊んで暮らせる。


 だが、このジジイにそんな金――いや、よく見れば上等なコート来てんじゃねぇか、帽子も。


 ケヒッ……。


「リーダー、このジジイあやしいぜ、やめといたほうがいいって、ぜったい」


「うるせぇ、テメェらはオレの言うことを聞いてればいいんだよ!」


 もしおかしな動きしたら、このジジイを殺して、はぎ取っちまって金にすりゃいい、それだけだ。


「話、聞かせてもらえますかな?」


「ああ、いいぜ。向こうで話そうぜ」


 これでいい。これで――





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「ホントの『キモチ』伝えるとこうなる!? なんでキマズイ関係に!?」

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