第17話 最初はみんな『笑』いました。でも依頼を達成してくると……

――トパゾタウン 酒場サルーン 吉報亭――


「〈グリードウォーム〉撃破を祝して! CHEEEEEEERSかんぱーーーーーーーーーーーーーーーいっ!」


「「「CHEEEEEEERSかんぱーーーーーーーーーーーーーーーいっ!!」


 KATSCHAAAAAAAAAAAN!!


〈グリードウォーム〉の討伐は、いっきにトパゾタウン中に知れわたって、町は大にぎわい!


 もうみんなお祭り気分だ!


「おたくらには感謝してもしきれねぇ! 今日は店のおごりだ! じゃんじゃん飲んで食ってくれ!」


「いやぁ~オレは最初からやってくれるって思っていたんだ!」


「ウソつけ! 真っ先に笑ったのはお前だろうが! ガハハ!」


 なんて感じで、みんなからんでくる。


 てか、酒ぐせ悪いなぁ。


 でもよかった。


 町のみんなに笑顔がもどってきてくれて。


「よかった。みんな喜んでくれてがんばったかいあったね!」


「うん! ほんとだね!」


「おらぁ! 主役がそんなスミっこにいんじゃねぇ、こっちこいや!」


「なっ! アニキ!」


「ちょっとレヴィン兄ぃ!」


 アニキに持ち上げられ、肩にかつがれた僕たち二人。


 そのままみんなの前に!


「こいつらはオレの妹と弟、ウィンとフィルだ。なんとこいつらが、あの〈グリードウォーム〉をたおした英雄よ!」


 WOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOW!


 FIIIIIIIIIIIIIIIWI!!


「今日はさわげ! おどれ! めいっぱいもりあがるぜ!」


 YEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEHAW!!


 鉱夫たちの大演奏がはじまっり!


「リリー! いっしょにおどろうぜ!」


「ちょ、ちょっと! レヴィン! もう、しょうがないんだから……」


 あぁ、アニキのやつ、リリーさんを中央に連れ出していっちゃった。


 でもリリーさんもまんざらでもなさそう。


 あのしとやかなリリーさんがヒルビリーの陽気な音楽に合わせて。


 リズムをとって、笑って。


「フィル! アタシたちもおどろうよっ!」


「い、いや、ぼくは――」


 もう! 強引なんだから!


 こっちはダンスなんて……。


「ちょ、ちょっとまって、ウィン! 僕、おどったこと――」


「だいじょうぶ! 教えてあげるから!」 


 ウィンはリズムを取り出して――。


 ああっ! もう! こうなったらやけくそだ!


「なんだ! うまいじゃん!」


「やけになってるだけ!」


「うん! それでいいんだよ! めいっぱい楽しもっ!」


 まぁなんだかんだ、おどれた。


 人ってその気になればなんだってできるんだね。


 足が勝手におどりだすようなビートだったのがよかったのかも。 


 それから曲はいつしか落ち着たものに変わっていって――。


「ねぇ、フィル? 今日のことなんだけど……」


「ありがとうは無しなんでしょ。仲間には」


「でも……家族、だったら、いいと思うの。フィルはもうアタシたちの家族だから……」


 ん? それって? どういう意味だろう?


「か、勘違いしないで、レ、レヴィン兄ぃが弟だっていってるからそう思ってるだけで、べ、べつにそんなんじゃないんだからね! そう! アタシの弟っていう意味!」


「ああ……そういうこと」


 でも、なんで僕が下?


 まぁ、いっか……。






 翌日――トパゾタウン酒場、吉報亭にて。


「折り入って、アンタらに頼みがあるんだが聞いてくれないか?」


 と酒場のマスターが変な切り出しで始めたのは――。


「ここら辺で資産家、モルガン家っていうのがいるんだが、そこの主が、なんでも腕の立つ、それも女の賞金稼ぎバウンティ―ハンターを探しているらしいんだ」


「それはまた、変な話ですね」


 なぜわざわざ女性の賞金稼ぎバウンティ―ハンターを?


「お館様はこの鉱山の権利者だからよ。無下にはできねぇんだ」


 う~ん、これもしかして……。


「リリー姉ぇ、これって……」


「精霊の導きかもしれないわね」


 そう、ジェードロッジの酋長しゅうちょうがいっていた。


 〈グリードウォーム〉をたおせば、あとは精霊が導いてくれ――。




 BUWAAAAAEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE――――!!




 うわぁ……お……。


「おいおい、おたくらのあんちゃん、だいじょうぶか?」


「気にしないでください。いつものことなんで」


「クーン! クーン!」


 まぁ、うん、そういうこと。


 アニキはまた飲みすぎてグロッキー。


 いや、ゲロッキーだね。


「恩人にこんなことを頼むのはおこがましいっては思っているんだ。別に断ってもかまわねぇ。一度会って、話だけでも聞いてみてはくれねぇか?」


「まぁ、話だけ聞くならいいんじゃないかな。ねぇ、リリー?」


「え? あ? ええ、そうね」


 やば、いきなりすぎたかな。


 ウィンが昨日、自分を家族って呼んでくれた時さ。


 実はリリーさんを『姉』って呼んであげてほしいって。


 でも、ちょっとチョーシに乗りすぎたかな。反省。


 おこっちゃったかな。


「んふっ……なんだかいいわね。年下の男の子に『姉さん』って呼ばれるの……んふふ」


 どうやら違うみたい。


 でも、ホッとするより先に、寒気がしたのはなぜ?





―――――――――――――――――――――――――――――――――――――


次回! 「かつての仲間の『闇堕ち』のウラ側!」

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