第56話 キィダ・レヴ・ケイゼン

 目が覚めれば、夕日がレイを温かく包んでいた。死体一つなく、ただ辺りは壊れた建物などに緑の草やコケが生えているだけだった。レイは立ち上がり、無意識に足が動き、どこかへ向かっていった。ついた先はカルデの家の先にある森の中。ある大きな大木の前で足が止まり、

「ぴちょん」という水の音が鳴り響いた。すると、

「フワフワ」と白い羽根が1枚下りてきた。そして

「パッ」と人の形を作り出した。長いひげで優しい目をした老人だった。

「初めまして、レイくん。私はキィダ・レヴ・ケイゼン。未来の精霊だよ。レイくんは私が予言した通り、夢の世界を平和へと導いた。辛いこともたくさんあっただろうけど、頑張ったね」

「・・・何で俺魔法使えたの?」レイはふと思ったことを口に出した。

「レイくんは魔力は持っていないけれど、思いの魔法との繋がりが強かったから、思いの精霊が助けとして力を貸してくれたんじゃないかな」

「思いの精霊っているの?」

「いたよ。けど今はもう違う人になったよ」

「誰になったの?」

「あれ?レイくんだけど?」

「・・・え?」

「テイラくんがレイくんを選んだんだよ?」

「え・・・くん?・・・???」レイは混乱した。

「アハハ。テイラくんは男の子だよ。テイラくん秘密主義者だから、あんまり自分のことを他人に話すことないからね。カドラくんでさえテイラくんが精霊だってことと男の子だってこと知らないんだ」レヴは笑い泣きした。

「テイラって精霊なの?」

「そうだよ。でも悪魔だから精霊としているとすぐ周りの悪魔たちにバレるからって、普段は悪魔として、でも陰では精霊として自分の仕事をこなしてるんだよ。ちなみにレイくんが精霊になったのはダッカンって唱えたときからかな」

「・・・」レイは呆然とした。

「まあ雑談はここまでにして、レイくん思いの精霊として、夢の平和を願ってね」レヴは真剣な顔をして言った。

「どうやって?」

「普通に願うだけ」レヴは子供っぽく言った。レヴはまるで「やって!」とでもいうような目でレイを見つめた。レイはよくわからないまま願ってみることにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る