第53話 昔に聞いた物語

 車いすで他の部屋に連れられ、カルデが眠っている姿を見てしまうとどうしても涙を流さずにはいられなかった。ほんの数日しか一緒にいなかった。けどカルデは常に誰かのためを思って行動してた。キィダの呪いを解こうとしたときも、カドラを前にした時も、レイを守ろうとしたときも。葬式にはサイも同席していた。カドラによってレイたちが戦っている場に行くことができなかったサイは自分の未熟さに悔しさを抱えていた。すると、カルデの大きな破片が刺さっていた傷口から大きな真っ黒の液体が

「ドロッ」と出てきた。

「ひっ」液体が目に入った瞬間、レイの体に寒気と不安と恐怖が一気に沸き上がった。周りの人々は呆然とカルデから出てきた液体を見ていた。急にレイの頭の中に

『昔、怒りに我を忘れた王様がいました。その王様はある精霊を攻撃しました。王は自害し、精霊は死を迎え、多くの人が悲しみに呑まれました。ある時、精霊の傷口から真っ黒に染まったモノが出てきては、精霊の体を飲み込みました。モノは王が精霊を攻撃した時の呪いの塊でした。精霊は魔人と化し、世界のあらゆるものを死ぬまで、力尽きるまで、壊しました』とレアサの優しい声でいつの日かの記憶が流れた。すると、

「壊しました。壊しました。壊しました。壊し、壊し、壊す。壊す。壊す・・・」とレアサの声がだんだんと低く、悪魔のような声になっていき、ずっとレイの頭の中で響き続けた。レイはめまいに襲われた。

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