【照会】 - 内縁の妻

『内縁の妻』

昭和の香りが漂う言葉。

そう感じるのは、私だけだろうか。

昨今では、『事実婚』と呼ぶ方が多いのではないかと。


さて、その『内縁の妻』。

婚姻届けを出している戸籍上の配偶者と比べると、社会的に受けられる権利はかなり限られている。

私は法律家ではないので詳細を把握している訳ではない。

ただ、ここ給与厚生課でも、何度か照会を受けた事がある。


『内縁の妻は扶養に入れますか?』


私が常駐している部署は、給与全般・社会保険全般の業務を行っているため、このような照会は多いのだが。

『扶養』には2つある。

健康保険の扶養と、所得税控除の扶養だ。

結論から言うと、健康保険の扶養には、要件を満たしていれば入ることができる。

所得税控除の扶養は、不可。

以前、内縁の妻を所得税控除の扶養に申請してきた社員がいて、チェック段階でうっかりスルーしていまい、税務署から是正が入って面倒なことに・・・・まぁ、この話はまた別の機会にするとして。


退職金。

と言っても、普通の退職金ではなく、社員が逝去による退職になった場合に、会社から支給される死亡退職金。

この受給者が、内縁の妻になるケースがある。

当該社員が所属する会社の規則に、「死亡退職金の受給者の優先順位」として内縁の妻が含まれていれば、受給権が発生する場合があるのだ。

場合によっては、本妻が別にいても、内縁の妻が受給するケースもあるらしい。


『部下が病気療養中で、もう余命いくばくもありません。本人が、退職金は内縁の妻に払って欲しいと言っているのですが。』


以前に、このような内容の照会メールを受信したことがある。

会社に届けられている、該当社員の家族構成を確認したところ、本妻がいる事が分かった。

正直言って、非常にレアケースだ。

アウトソースされた業務のマニュアルの中に、このケースの判断基準は無かったため、判断および回答は、発注元のJ会社社員に依頼したのだが。

それから間もなく、該当社員の訃報が入り、結果的には、確か死亡退職金は会社に届けられていた本妻に支払われたと記憶している。


この社員がどのような経緯で本妻がいながら内縁の妻に退職金を、と願ったのかは、知る由もない。

他社の社員であり、顔も名前も知らない人だ。

だがやはり、モヤモヤとしたものは、胸の中に残ってしまう。


・・・・本当に、早く給与厚生課ここから脱出したいと、願わずにはいられない・・・・

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