第7話幻影の鉱石場・II

僕は魔物を撫でた瞬間、僅かな閃光を放ち

小さな少女が姿を現した。



「は…?」


当然ロナは目を丸くする反応、魔物を"悪魔"に切り替えるなんて普通にありえない。

小さな少女の頭を軽く撫でて、優しい声で僕はこういった。


「サイズからして幼女が出来たが、まぁいいや。あの悪い人をお願いね」

「うゆ」



ロナに向かって走る幼女は、そのまま足にしがみつく。



「ちょっ! な、何よこの子!?」

さ」

「なにを―――」



ロナを押し倒した幼女は、瞬く間に腹の上に跨り乗っかり怪しげな笑みをしていた。



「おねいちゃん、にするね?」

「へ? ちょっと…な、なにを!? いやぁぁぁぁぁん―――」



この後の展開はご想像におまかせします。

ただただ百合、それだけである。

僕は何事も無かったように、その場から立ち去り先を進んだ。

幻がやや薄くなり、周りの視界も少しずつだが景色が目に映る。

木のツルにぶら下がる様に、力なくダランっとしているフォルスが目に止まる。



「怠惰…な絵面だね」

「フォルス、そんな所で何遊んでるの?」

「まてまてメアリー、あれを遊んでるって見えたらかなりやばいやつだろ?」

「あっ」

「あっ。じゃないよ、気付けよ。どうやって降ろそうか…?」




察した顔をするメアリーは、上を見上げるとフォルスが力ない声で話し出した。



「ルイス…なんで来てくれなかったのよ?」

「あ、生きてたか」

「勝手に殺さないでくれる? それよりも助けてよ。また、が来るから」

「奴ら?」



赤い点が何も無い空中に二つ光る、どしっと重低音を鳴らしながら現れたのは―――。




「きょ、巨大なドードー?!」

「うわぁ…おっきい!」

「ゲコッ」

「このいやらしい舌で、私をこんな場所に弾き飛ばして…! ゆ、許さん!」



巨大なドードー、その正体は巨大なカエルである。

フォルスは泣き目になりながらもがくが、メアリーは目をキラキラさせている。

そんな状況で僕は、見ないふりして逃げた。



「る、ルイス!?」

「あ、待ってよ」

「ちょっと!!? なんで私を見捨てるのよ!!?」



僕は足を止めた、呆れながらも後ろを振り向きこういった。



「戦士さん、僕を助けてくれる優しい女の子は何処にいませんか?」

「へ?そ、それは私だろう?!」

「なら、そんな状況から脱出出来るよね?」

「う、うむ…。やってみよう! このクソカエル今こそ私が―――へっ!!?」



フォルスがドードーに捕食されてしまった。

軽く咳払いした僕は、メアリーの腕を掴み歩き出した。



「へ? ルイス?!」

「何も言うな、あの戦士の死を無駄にするな」

「ちょっと何言ってるか分からない。ってよりも、なんで確定死亡扱いしてるの?」

「人喰いドードー、まぁカエルなんだけどこの場所の住処にしてるぽい」

「ひ、人喰いドードー…はぁはぁ…」

「メアリーさん、卑猥な捉え方はやめようね」

「私とした事が…それよりも―――」




メアリーはルイスに握られた腕を見て、少しばかり恥ずかしくなった。

こうされたのはいつ以来だろうか、メアリーの気分はちょっとだけ跳ね上がる。



「メアリー?」

「な、なんでもない! 行こう!」




霧が晴れて、目の前に現れたのはボロボロな古城。

草木が外壁に絡み根を生やして、完全に人が手入れしてない無法地帯のような状態だ。



「こんな場所にお城? いや待てよ、ここって―――」



見覚えがある、この風景と街並みは5のあの戦いの戦場となった場所。

"コルスメットダガー"と呼ばれていた、1つの領域で男爵位があったメルト・ハゲタ三世の街だった。



「五年間でこんなにも変わるのか、今や幻影の森とか呼ばれるのに」

「ルイス、中に入ろ?」

「いやダメだろ、何いるかわからない。それに、お前が何かあったら困る」

「新手の告白!?」

「違うから、身の危険があるからって意味だ」



中に入ると、特に変わった様子がない。

ただ、古ぼけた本やテーブルなど人が住んでいた痕跡がある。

指でテーブルを軽く触れただけで、ほこりが付着するほどだ。



長い年月、この場所人が住んでなかっただけある。

あれから五年だもん、僕は一体何のために部屋にこもって月日を流したのだろうね。



周りを見渡すと、明らかにおかしな位置に一冊の本が目に止まる。

火を焚くような構造の場所に、一冊の本が置かれていた。

僕はその場所まで歩き、手に取り開く。



「ルイスそれはなに?」

「日記だよ、燃やそうとしたんだろうけど…それが出来なかったみたいだね」

「なんて書いてあるの?」

「今みるところだよ」


日記に書かれていたのは、どうやら五年前の出来事とこの街が消えた理由だった。



五年前、私達はあるギルドにより内部戦争ーーー。今や"ギルド動乱戦争"っと呼ばれている、多くの騎士団と住民が死んだこの戦争は結果的に"引き起こしたギルド"が勝利した。

それによりこの街の支配権は奴らの傘下となる、正直嫌だイキってる団長が政治なんて出来るわけがないのだ。



それから一年がすぎた、内部戦争なんて誰も覚えてはない。いや、揉み消したんだ知るものは全て消されたんだ。いつしか私も狙われるかもしれない、怖くて安心して寝れない。

街の状況は、悪化していき貧困と貴族と格差が起き始め食に飢えた住人は逃げ出した。

それに加えて、政治は大体は奴隷。

滅びが急がれ早かれ来るだろう。


二年がすぎた、追放したギルメンを見つけ出せっと市民の新聞の記事に載せてきた。

彼は騎士団の1人だ、誰一人市民は口を割らないだろう。その次の日の記事は、追放したギルメンの父親を殺したっと書かれていた。

さすがに世間はザワついた、住民は更に減っていき何時しかそのギルドは領を手放していた。見捨てられたのだこの街はーーー。



この先の文字はなく、空白ページが続いたため僕は本を閉じた。

五年間、母は確かに僕に新聞なんて読ませなかった。その度に気まずいような笑みをしていたのを思い出す。

理解はできたルイス、だがそれよりもだ。

件だ。

見たのは"騎士団"のひとりに見えたけど違っていた。僕の中で何かがざわついていた。



「…負けていたのか。騎士団が。あのギルメンが生き残り、僕を探していた…けど父親を殺した…?」



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