第15話 ちゃっちゃのぱっぱで

「……えっと」

 痒くなるほど体が熱くなり、僕はジャージの上着を脱ぐ。

 どうして僕は踏み切れないんだろう。

 ただ、怯えているんだろうか。うまくセックスができないことが怖いんだろうか。

 それとも、何か別の理由が?

 自分のことなのにわからない。

 いいんだ、きっと、おかしなセンチメンタルに心を乱されただけだ。

 大方、「彼女のことを想う気持ちがあるとしたら、こんな体からの関係は駄目だ」なんて綺麗事でも考えてしまっているのだろう。

 だろうって、お前のことじゃないか、と思うかもしれない。でも、いつでもそうだ。

 僕はきっと楽しいんだろう。

 哀しいんだろう。

 そんな風にしか思えない。

 なにより。彼女が簡単に体を許すということは、僕が一から関係を作っていくには足らない存在だということ。

 それを、まざまざと見せつけられているのが辛いんだ。

 10秒チャージ、2時間キープ?

 ……ま、そういう風に思われるのが辛いん、だろう。その他大勢の男たちに埋もれるのが。

 僕と先輩の心が交されることはない。

 いいんだ。余計な考えが邪魔をするときは、目を瞑り、叫んで駆け抜ければいい。

「やりますよ! ちゃっちゃのぱっぱでやりましょう!」

 先輩のリアクションを確認する前に、Tシャツを脱ごうとした。焦って頭が抜けない。ひっくり返った傘のような状態になってしまい、視界が真っ白になる。

「……ちょっと、待ってください」

「残念でしたー☆」

 Tシャツ越しに先輩の長い腕が巻きついてくる。身体が冷えているのか、肌の温かさはまったく感じられなかった。

「おーい、?」

 そして、先輩は言った。

 鞘師? くん?

 僕はわけもわからず、バンザイのポーズのまま固まった。

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