(4)やらかしモルトベーネ

「アオノさんに魔法を披露して欲しいというのなら分かります。しかし貴方達の視線はとても物を教わるという姿勢が感じられないのは気のせいですか?」


イオちゃんが怒った、もしかしたら私が教師になるって方の話が上手く進んでないのだろうか?。

或いは教師として働いているうちに私への風当たりについて何度も耳に入っていた可能性もある。


「イッイオリア先生?」

「彼の実力について知りたいと言うのなら分かります、しかしその目はどう見ても……」

「イオさん、少し落ち着きましょう」


私は何とか止めに入ろうとする、なんか私まで怒られている気分になるからね。

「「………………ッ!?」」

ん?なんかこの場の生徒やダホルって先生がかなり驚いてる?。


私が何かしたかね?まぁいいやっ今はイオちゃんわなだめる事が先である。


「イオさん、私の事で怒ってくれるのは嬉しいです。しかし生徒の皆さんにまで怒る様な態度はいけないかと」


「「…………………ッ!?」」

「そっそれは………ハァッそうですね教師として彼等を導くのが私の仕事、怒りをぶつける様な真似をしたのは間違いないでした」


「ええっ分かってくれたのなら十分です」

「「……………………ッ!?」」


何なんだよさっきからどいつもこいつも驚いてさ、1度怒ったイオちゃんが謝るのがそんなに珍しいのか?それとも出しゃばり過ぎた中年に心底驚いているのか?。


心意看破マインド・ハックを使えば簡単に分かる事だけども。やはり心を勝手に覗く行為には抵抗がある私だ。


まっこの場は収まったんだしいいか。


「コホン、はっ恥ずかしい所を見せてしまいましたね。ダホル先生、どうか授業の続きを…」

「はっはい!分かりました!」


イオちゃんの言葉に返事が裏返るダホル、彼も何やらかなり驚いている様だな。

しかしこれでようやく授業の見学が出来るな、わりと楽しみにしてる私だ。



◇◇◇学園・廊下◇◇◇



(ふぅ~何とか授業に間に合いました~~これで昼前までは受ける授業もないし、またアオノさんの屋敷の掃除の続きでもしにいきますか~)


廊下をあるくのはモルトベーネである、今は他に生徒の姿も見えない。授業受ける為に様々な教室に移動してるのだろう。

モルトベーネは次に受ける授業までしばらく時間に余裕があるらしい。


廊下を軽い足取りで進む、すると聞いた事のある声を耳にする。

「……っでさ~~」

(あっこの声、今朝の……)


何故か足を止めてしまったモルトベーネ、彼女は今朝箱を押し付けてきた女子生徒が他の女子生徒と何やら会話をしてる現場に遭遇した。


渡り廊下の角を曲がった先を2人は何気ない会話をしている様だ。

「……たったち聞きとかは辞めておきま」

「それで?その箱って結局なんだったの?」

「!?」


それはモルトベーネが青野に渡した箱の事かもと彼女は直ぐに思った、すると自然と聞き耳を立てる選択をしたモルトベーネ。

実はあの箱の中身についてわりと興味があった様だ。


「ああっアレね、貴女私が鑑定魔法を使えるのは知ってるわよね?」

「うんっもちろん!」


「私も流石にエーグル先生がそのおっさんにお詫びをするって聞いておかしいと思ったのよ……」


モルトベーネが耳にするエーグル先生という教師は、才能があり努力家だが相手を個人的な尺度で上下をつけては誰かを見下すタイプの人間だと聞いた。


エリート思考故に、一部の生徒からは人気だが一部の生徒からは嫌われている教師だと言う話だ。


「それで鑑定魔法を使ってみたら案の定箱には魔法が、そして中身は魅了薬が入っていたわ」


(エッエエエッ!?)


「何それ、どう言う事?」


モルトベーネが頭で妙な妄想をしそうになる、しかし女子生徒は冷静だった。


「多分そのおっさんが魅了薬を使ってイオリア先生をどうにかしようとしたって言う風になる為の罠ねあれは……箱を開けたら箱の中身を自分が用意したプレゼントだって誤認させる催眠魔法が仕掛けられていたわ」


「なっなんだ~そうだったんですね、少しガッカリ………」

「…………ん?誰かいるの?」

「!?」


モルトベーネは速攻で別の方向に移動した。



「て言うか、それじゃあ私は上手い事犯罪の片棒を担がされてしまったって事じゃないですかーーーー!?」


女子生徒が何故に朝から自分に話し掛けてきたのか、その理由を理解した彼女だ。

要は面倒事に巻き込まれるのを嫌った女子生徒に箱を押し付けられたのだ。


「しかもそんな物を知らなかったとは言えアオノさんに……あ~~どうすれば~~~!」

悩むモルトベーネ、今頃青野達の身に何か起きているかもと思いいたる。


しかし彼女がいるのは学園の屋根である、モルトベーネは1人になりたい時にたまに魔法で飛んでそこに行くのだ。


完全に現実逃避である。


(わっわたしがやらかしてしまった事です!なんとか。なんとかしなければ……ッ!)


頭を抱えて髪の毛をワシャワシャする事しか出来ない彼女だった。




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