(8)試合開始

「すまないね、どうやって聞きつけたのか。学園の生徒達がこの第3魔法実験場に集まってしまった様だ、流石にこれだけ多くの者達の前で打ちのめされるのはゴメンかね?」


挑発。人を見世物にする気満々って訳ですか。


「なっ!?ちょっと貴方達!勝手に入って来てはいけませんよ!早く出て行きなさい」

「エエ~~アタシ達も先生の試合見た~~い!」


「ダメです!あの2人の試合で魔法がここまで来たりしたらどうするんです!?危険なんです」

「ウソ~~~?あのおっさんにそんな大層の魔法撃てないでしょ?」


「そんな訳がないでしょう!?いいですか?アオノさんは……」

「イオリア先生……万が一の時は私達が守ればいい、生徒達の意思を優先してあげなさい」

「………ハァッ分かりました」


イオちゃんが何とかしてくれようとしたけど、生徒達の方が勢いがあったか、数も更にゾロゾロ来てるし仕方ないよな。


ん?ベーネちゃんとか金髪ロールのシャルマちゃんとその取り巻き女子も来てるし、どんだけ話が広まってんだよ、エーグルは余程この試合で圧勝する自信があるんだろうな。


あっそう言えばシャルマちゃんが見に行く的な事を言ってたわ。


「どうしたアオノ?どうしてもと言うのなら試験を棄権する事を認めてもいいのだぞ?私との魔力と実力の差を理解したのならそれが賢い選択と言うものだからな」


「…………私からも1つ良いですか?」

「ん?何かね?」

「もしこの場で一方的に貴方が打ち負かされたら、どれだけ自分が恥をかくのかを分かっていてこんな真似をしたんですか?」


素直に思った事を質問した。

一体どれだけ自信があればこんだけ負ければ恥かきまくりな状況に自分を追い込めるものなのかな?。


「………………ほう?中々…きっ肝が据わっている男の………様だな?」

あっコイツガチでキレたな、こう言うステータス、プライドがカンストしてるヤツはこう言うところが分かりやすいですな。


まあいけ好かないイケメンの内心なんて私も興味ないし、さっさとその試験を始めて欲しいな。

そんな思いを込めてラーベス学園長の方を見てみる、もう始めていいっスか?っと。


「……ん?何故彼は私を見るんだ?」

「多分、試合開始の合図を誰が言うのか待ってるんですよ」


「…アレは完全にもう面倒くさいから早く始めて済ませたいですって顔ですね、近頃アオノさんの表情で何を考えてるのか分かる様になってきましたよ…」


ん?イオちゃんがボソボソって何か言ってる?私の事だったりして……。


「よそ見とは余裕だなアオノ!身の程を弁えぬその鼻っ柱をへし折ってくれる!」

イオちゃんとラーベス学園長、どっちが巨乳なのかを見極めようとしていたらエーグルが仕掛けて来た。


どうやら試合開始の様である。



◇◇◇◇◇◇



エーグルは飛行魔法を発動する、学園都市で教師として働き、さらに自身の魔法研究も幾つも進めるエーグルの魔法を操る技術はかなりのものだ。


その飛行魔法は練度も高い、アオノとの距離を瞬く間になかったものにする。

(先ずは小手調べ!流石にこれで終わってくれるなよ……)


「エアロソード!」

ハイゼルの両手に風の双剣が生まれる、それを手にし青野に斬り掛かった。


エーグルは剣術も優れている、その剣さばきは並みの剣客なら数秒後には地に伏している程に冴えている。


左右からの風の刃、それを青野はのほほんとした顔で紙一重で躱す。

「ホォオオアッ!」

右上段、左腰、更に突きで右足を狙う。


しかしアオノは全てを見切る。

(私の剣をこれ程容易く躱すのか!?魔力は並だが身体能力と動体視力は見た目からは想像出来ん程に高いレベルだ!)


とても失礼な事を考えるエーグルである。


「しかし!これは魔法の勝負だと言うことを忘れるなよ!」

エーグルが風の双剣をクロスさせる。すると剣に魔力が集約しだした。


「…………ほう」

「エアリアルボルテックス!」


エーグルを中心に風の刃が無数に生まれた、それは時計回りにエーグルの回りを高速回転する。

まるでミキサーだ、当然エーグルの至近距離にいた青野はその魔法の効果範囲内にいる。


「消し飛べ!」


(………魔力除去ディスペル・マジック

エーグルの魔法に対して青野は魔力を消し去る魔法を発動した、エーグルの風魔法は消え失せる。


「!?……バカな、私の魔法が……」

(エアロソードまで消されただと!?)


エーグルが呆然とする、そのスキを青野は見逃す事はなかった。


「次を仕掛けないのなら私から行きますよ?」

言うと同時に青野は転移魔法でエーグルの背後に転移した。一瞬の事でハイゼルは回避をする暇もなく、青野はその無防備な背中に……。


「………魔力弾マナバレット

初歩の攻撃魔法だ、ドンッと小さな爆発音と共にエーグルが吹き飛んだ。

「ぶはぁっ!?」


青野は当然ながら手加減しまくりの魔法で相手をしている、故にエーグルは魔法の一撃を受けてもゴロゴロと転がりこそすれ、手足などを失う事もなかった。


直ぐに起き上がり、青野をにらみ付けるエーグル。

「魔力弾……だと!?そんな初歩の魔法でこの私をどうにか出来ると…」

「思っていてすみませんね」


(なっ……また後ろだと!?)


青野はまた転移魔法でエーグルの後ろを取った、そしてまた魔力弾で吹き飛ばす。

ドドンッ!と魔法が爆ぜる音がした。


「ぐぅっ!同じ手が何度も通用すると…」

「思っていてすみませんね?」

「!?」


青野は再び転移魔法で後ろに立って魔力弾でエーグルを攻撃した。

青野の目的はエーグルを打ち負かす事ではなくエーグルや他の生徒や教師に自身の魔法使いとしての実力を見せる事だ。


目の前の相手が直ぐに倒れてしまっては意味がないのは青野も同じなのである、だからこそショボい魔法で少しずつダメージを与えている。


エーグルに早く次を出しなさいなと急かす為である。エーグルはとっくに青野に切り札の存在を見透かされていた。


当然ながらエーグルはマジキレ5秒前。


















  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る