闇塚日記〔2〕

闇塚 鍋太郎

Daily Records Part 2

一念感光篇〔2016年の日記〕

第1記:全敗

 眼が覚めた。枕辺のアナログ時計は「朝の7時30分」を示していた。頭がちょっと重い。昨夜は呑み過ぎた。と云っても、ジョッキビールを数杯ほどだが。チェスクラブの例会の後、会長のO君と、駅前の居酒屋に潜り込んだのである。

 席上、話題のひとつとして、今月(24日)開催の大会が登場した。当然である。クラブ主催の大会なのだから。それは良いのだが、俺の参戦クラスが「C」ではなく「B」になる可能性があると聞いて、刹那愕然となった。とんでもない話である。

 Bクラスならともかく、Cクラスに飛び込んだところで、俺の棋力ではどうにもならない。爆弾を背負って、火事場に突っ込むみたいなものだ。敗色濃厚…否、敗北(全敗)確実と云うべきか。まあ、いいけど。どうせ負けるなら、Bで華々しく散るのも悪くない。だが、散りたくても、ある程度強くないと「散り様もない……」のである。

 ある程度「強くない」俺は、いったいどうすればいいのか?当日までに対応の仕方を考えねばなるまい。今さら「辞退します」とも云い難い。実際弱ったな、これは。


 今日は快晴に恵まれた。絶好の洗濯日和である。近所のランドリーに行き、中型マシンに一週間分の衣類を放り込んだ。一旦家に戻り、細かい用事を片づけて、再びランドリーに赴く。脱水衣類をアパートまで運ぶわけだが、冬場は重くて大変である。

 ベランダの物干し台に全ての脱水ものを吊るした。その後、雑用消化のために外出した。帰宅後、熱いシャワーを浴びた。それから、愛機を起動させて、ぴよぶっくを呼び出した。編集作業に没入した。


 ダサク1頁とダブン1頁を投稿した。前者の書き出しがなかなか思いつかなくて困っていたが、洗濯中に展開が閃いた。閃きをそのまま文字にする。今日書いた分に関しては、先月参加した『世界の将棋大会』の経験が役に立った。小説は相当悩んだが、随筆はそんなに悩まない。比較的楽に書けた。サクサク書けた。〔1月9日〕


♞チェスクラブの話をしている。俺が無惨な自爆を遂げたのは、この年の4月である。やらなくてもいいことをやった報いだ。42歳(当時)のおっさんが、最低の分別さえ持たず、愚かとしか云い様がない。だが、遅かれ早かれ、去っていただろうなとは思う。独特の雰囲気に馴染めなかったし、侮りを受けるのにもいささか飽きていた。俺の座る席など、最初からありはしなかった。

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