第13話 表裏の町

そして、少し経ったのち、今俺は馬車でドューエサイドへと向かっている。


 「しかしまぁ、随分とあれだな……」


馬車は馬車でも王族用馬車。中はフッカフカのクッションが敷き詰められていて、外見も一瞬でわかるような金色のボディ今の周りの草原には違和感でしかなく、乗っていると確かに楽だが、一周回って居心地が悪い。………内装がファンシーなのも、多分あの人の所為だろう。しかもここはなんとも暑い。一年中この気温なのだろうか、馬車の中が蒸してめちゃくちゃ暑い。


…居心地が悪くなり、我慢できず俺は馬車の外を見る。


「……にしても、ずっと原っぱだな。」


 あいも変わらずこの島には、緑がたくさんあり、ずっと風景は変わらない。


 住居区の豪華さと草原地帯の荒れ具合を見ると、本当にここは同じ国なのかと思ってしまう。


 馬車を運転している人も、ほかの場所に行くのは、長年馬車が通ってできたなんとなくの道と仕事をしてきての勘に頼るらしい。

   ……まぁ、少し不安だが王家直属なら大丈夫だろう。


 と、そこに俺も見慣れたものが現れる。


「ん? ……あれは……畑か?」


よく見ると、原っぱの中に、ところどころ少し 

平地にされた場所があるそこに何か他とは違う太い茎のある草がある。


「すみません、アレはなんですか? 」


 気になり、この暑さなのに長袖長ズボンの馬車の運転手に聞いてみる。


「あー、っとそうですね、あれは『油種オイリゴの実』を育てている畑です、行ってみますか?」


 少し気になるので、連れて行ってもらうことにした。


 近くまで行ってみると、米の穂のような草がたくさん生えていて、その稲穂一つ一つに10個くらい、

オリーブのような実が付いている。


「この実はどんな感じで使うんですか?」


「この実は、潰すとぬるぬるしてよく滑る液体が

 出てきます。それは、靴や鎧の作成だとか、料理

 だとかに使われます、おそらくこれは誰かが育て

 て売っているのかと」


なるほど、要は俺の時代で言う油の万能版のようなものか。にしても暑いなぁ、馬車の人も随分と暑そうだ。


「あの、暑いと思うので、長袖脱いで来てください、もう少しここをみたいので」


「あ、すみません…お時間いただきます。」


と、足早に戻っていく。俺はというと、畑の周りにあった機械を見ていた。

 それは球体の機械で、穴が一つ空いていた。


 「これは……壊れているのかな?………ってうお!」


 なんだ? と機械をいじっていると、急に球が光る。   そして、プシューと音がして穴から人がでてくる。


 「うわ、びっくりした……、これは立体映像か?」


見るに、この人は光が集められてできた立体映像のようだ。俺の世界にはなかった技術だな。


 と人を見ていると、不意に、


「イチシンカヲワンモトメイチシモノ、トウノニカクスワンスムベファーストシ。

 シンポトトアヂーンモニ、ナンウノジノモトイチメシモノアイチラワレル」 


 とロボットのようなアクセントがない呪文のような言葉が放たれる。


 「な、なんだ? イチシンカヲワ? なんかの暗号か?」


 よく理解できず考えていると、  


 「あの! あの! どうかしましたか?」


「うわ! って、馬車の人でしたか、すみません

  少し考え込んでいました。」


 気がついたら、かなり時間が経っていたようで、

火が傾いており、周りも暗くなってきている。

かなり馬車で待たせてしまったようだ。申し訳ない


「では、改めて『ドューエサイド』へ向かいます。

 もう少し馬車へお乗りください」


 俺は言われるがままに草むらを突っ切り、馬車へ

乗る。運転手も少し寝ていたようで、髪型が崩れている。椅子へ座ると、


 「では、少し急いで向かいます、揺れますが辛抱お願いします。」


そういうと、かなりのスピードで馬車が走り出す。暗くてよく見えないが、馬車はかなり荒れた道を走っているようで、馬車がぐらぐらと揺れる。

馬車は整地されたところを頼りに走ると聞いていたのだが……、あまりドューエサイドへいく馬車がないのだろうか。


 と、急に揺れが弱まる。どうやら、開けた道に出たようだ。と、運転手が、


 「オルトー様、つきましたよ。

    『ドューエサイド』です。」

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