第15話 報復は続く

 朝が来た。本来はあの忌々しいイエで迎えることになるが、今は違う。


深川の所に厄介になっている。とは言っても、近いうちに自分だけのアパートを借りるまでのものだ。


人がいる所を快適だとは、思わない。すぐに独り暮らしをしたい所だ。








 テレビをつけたら、手筈通り、卒業式の中いじめを告発したことがニュースとして持ちきられていた。


蔵元の所は直接取材した形なので、群を抜いて情報の質が高い。


そりゃ当たり前だ。実際に起こること打ち合わせをして、作られたいじめの現場なのだから。




そもそも、いじめをヤラセなんて考えを持つ不届き者なんて極々少数である。


そんなふざけた陰謀論を唱える輩など出るはずもない。


学校側の反応を見せられれば、信じ是ざる終えない。


学校を犠牲にコンテンツにするなんてことを考えるはずもない。








 オヤの醜態も晒されいる。これで、世間にも、オヤは人として問題がある事が明白となる。だが、本命はこれでは無い。




『伯父もここに同行して、いじめの解決に協力してくれるはずだった。それなのに……』『裏切った』




来た。


伯父が金を独り占めをしたことを許したつもりは毛頭無い。


言葉へ続いて、伯父の酷さを有ること無いこと語ったものが世間へと流される。


ここでは伯父が裏切った事実だけが大切で、多少の脚色を入れようと、違和感がなければ、まかり通る。




伯父が否定しようと、中学生の卒業式では、不在であったことの違和感は拭いきれない。


恨むなら、軽率な行動をした自分を恨むんだな。それと……。


5分後ごとにそれぞれ校章が余計にバリエーション豊かに映しだされていた。




あいつ本当に実行しやがった。事情がわからない者にとっては、せいぜい妙な違和感がある程度だろうが、俺は阿多谷の父親に5分後ごとに校章映すと宣言された。そして、宣言通り奴はやってのけた。


これからは認識を改めなければいけない。








 なんて、考えるかよ。借りは返す。そのための用意はしてある。




「プルル」




 電話のコール音がする。そこにあるのは、見覚えがある電話番号だった。あの時に電話もかけたが、連絡が取れなかった者の電話番号が表示されている。コードレスの方は壊してしまったので、固定機の方を手に取る。




「やぁ、伯父さん。電話番号変えているかと思ったよ」




「何度も連絡してよく言うな。それよりあれは何の真似だ? そのせいで、俺の場所の周りで、抗議活動している奴らで、溢れかえっている」




「ああ、もう見つけていたんだ、メディアの人、仕事が早いなぁ。何度も電話したのに返事が来なかった。そっちにも落ち度があるよ。そしたら、心の準備くらい出来たのに。俺の せい ? 自業自得の間違いだ。で、これをやり過ぎと考えるんだ。いや、寧ろやり過ぎると想定しなかったのか? そうでなくとも、仕返しがあると考えなかったのか? 居場所を変えたくらいで、諦めると思ったのか? 見くびり過ぎだ。あんたは俺を裏切った。その借りは何処へ行こうと、返す。電話を変えなかったのは、弁護士での顧客を失いたくなかったって所か。そんな中途半端で、良くも裏切れたな。まぁ、電話番号変えたくらいで諦める訳も無いけどな」




「……どうしたら、これを止めてくれる」




「そんなものねぇよ」




 話の必要性を感じなかったので、そのまま受話器を切った。


固定電話の電源もきった。あっちが先にやったことだ。


あっちだけの都合を通すは、筋が通らない。


伯父はこれで、世間の評価は地に堕ちるだろう。




もともと特別評判が良かったわけではないが、流石にこれでは、伯父の細いパイプも断たれた筈だ。


そもそも客がいるかも定かではない。とにかく、一週間はそこで、居座るか、観念してメディアの餌食になるかの押し問答を楽しめ。


どのみち伯父は社会的地位は底になったと同意だ。




 次は、阿多谷だ。

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