第12話 魔女退治ですわ!
≪王都 ~聖樹教会~≫
ほわわぁぁー!
まばゆい光が消えると、わたくしは聖樹教会の祈りの場に跪いておりました。
「!」
「やりましたわ!」
「何をですか!?」
目の前ではレイアがわたくしの周囲に光が現れたことに驚いていましたが、すぐに我に返ってわたくしの言葉に反応しました。
「もちろん聖樹にお祈りを捧げることができたことですわ」
「な、なるほど。それにしても今の光は……っ!?」
わたくしはレイアの両手を取って握りしめましたの。
レイアが生きてる!
「なっ!?」
驚く彼女を尻目に、わたくしは彼女の手のぬくもりを感じ、彼女が生きているのを実感しましたの。気が付くと涙が滂沱のように流れ落ちていきますの。
「レイアァァ、生きてます! 生きてますの! よがっだぁぁぁぁぁ」
何かを察したのか、レイアはわたくしが落ち着くまでそのまま静かに待ってくださいましたわ。
――――――
―――
―
対魔女戦ですが、わたくし本当に
ゲームではほとんどソロでプレイでしたので、NPCやオンラインの協力者と同行してメリッサ攻略に臨んだ場合、補正が入ることをすっかりと忘れておりましたわ。
ソロの場合、ブラッドコーン畑で恐るべき子供たちによる襲撃はないですの。メリッサも屋敷から出ておらず、門を入って屋敷の玄関に近づいたところでようやく登場しますのよ。
二人が殺されたときの生々しい記憶があるので、今回はソロでの攻略も検討しましたが、いまのわたくしではあの魔女に勝てる自信がありませんの。それに王家の谷へは二人に同行していただきたいのです。
というわけで、今回は予め二人にメリッサという魔女の存在を説明し、綿密な計画と準備を整えた上で出発したのですわ。
――――――
―――
―
≪隠れ里 ~メリッサの屋敷~≫
「ほ、ほんとうに畑を焼き払って良いのでしょうか?」
エルフィンリュートに炎のエンチャントを付与しながら、またレイアは不安そうにわたくしに確認してきましたの。
「問題ないですわ!」
そう答えつつ、わたくしは手製の火炎瓶を畑に向かって投擲しましたわ。
「「「ぎぎゃ!?」」」
炎が広がった周辺から奇妙な叫び声が上がるのを確認し、わたくしはどんどんと火炎瓶を投擲していきます。すると畑の間の小道に
「やぁぁぁぁぁ!」
わたくしが〖乙女の叫び〗を放って小鬼たちが硬直したところへ、レイアとチャールズが止めを刺していきます。どうせメリッサにわたくしのスキルは通用しませんので、ここで使い尽くしてしまいますわ。ちなみに二人には耳栓をしてもらっているので〖乙女の叫び〗の硬直は受けませんの。
わたくしとチャールズによる火炎瓶投擲、レイアによるフレイムアロー、そしてスキル〖乙女の叫び〗を繰り出しながら、わたくしたちは徒歩でブラッドコーン畑を急ぎ進んでまいりましたの。
門の前に着く頃には、メリッサが憤怒の形相で大鎌【ブラッドサイス】を構えて立っておりましたわ。
レイアは門に入る前から、メリッサにエルフィンリュートで攻撃を開始。彼女の背後をわたくしが守りながら、チャールズを先頭に屋敷へ突入しました。
「チャールズ! 門を閉めてくださいまし!」
小鬼の追撃を防ぐためにチャールズが門を閉じている間、わたくしとレイアが連携してメリッサと戦いますわ。
わたくしが斬りかかってメリッサが空中に逃げたところへ、レイアが矢で攻撃。メリッサが地面に落ちたところへ、わたくしが追撃いたしますの。
「待たせた!」
門を閉め終わったチャールズが参戦し始めると、連携攻撃がさらに有効に決まるようになり、目に見えてメリッサのダメージが蓄積してくのがわかりますわ。
レイアの矢を受けてメリッサが地面に跪いたところを、チャールズの短槍がその胸を貫きました。わたくしはメリッサが取り落とした大鎌【ブラッドサイス】を奪い、
「レイアとチャールズの仇ですわ!」
わたくしは復讐の怒りと共にメリッサの首を落としました。
「「いや生きてるし!」」
二人が当然のツッコミを入れてきます。
「そうでした……わね」
並行世界なのか上塗りされたのかわからないですが、わたくしは、確かにわたくしと共に戦って死んでいった二人を想って心の中で祈りを捧げましたの。
メリッサの血が地面に広がっていくと、周囲の空気が明らかに変わっていくのが感じられました。畑や屋敷からは悲鳴や物音が聞こえてきます。
「屋敷の中を探ってみましょう」
わたくしは二人を伴って二階にあるメリッサの書斎に行って隠し扉を開き、その中にある宝箱から【地下牢の鍵】と【魔王の信任状】を入手しましたの。
わたくしのあまりの手際のよさに、また二人は疑問を持ち始めたようです。
「アレクサ、君はまるでこの部屋に訪れたことがあるようだね。他のこともそうだけど、どうしてそんなに何から何まで知っているんだい?」
「隠し部屋まで知っているなんて、あなたのことを怪しまずにはおられないのですが……」
「隠し部屋なんて貴族にとっては常識ですわよ。もちろん、お二人が色々と疑問をお持ちになるのは当然です。でも、いまはすべてを説明することができないだけですの。そこは信じていただくしかございませんわ」
「わかった。君を信じよう」
チャールズがスパッと男前に応えてくれました。
「わたしは……わたしもあなたを信じましょう。あなたの言動にはおかしなところがたくさんありますが、少なくとも聖樹の教えに背いたことはしていません」
レイアは自分の両手を見つめながら、自分に言い聞かせるようにつぶやきました。
「お二人ともありがとうですわ……グスッ」
前回二人を死なせてしまった後悔と、今は目の前に二人が無事でいる安心感が込み上げてきて、なんだか胸が熱くなって目から涙が溢れてしまいましたの。
「いや、なにも泣かなくても……。女性に泣かれるとちょっと、その、あの……」
「アレクサ、鼻水! 鼻水! 仮にも令嬢なのですから!」
レイアがハンカチでわたくしの顔を優しく拭ってくれました。
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