第2話アバターメイク

VRゴーグルを装着し、VR世界に入った。


「ログインっと」


雪乃はアイコンをタップし、ATDにログインする。


さてと。


真っ黒な空間に白い地面だけがあるという状態でしたのは、本名入力と脳波測定。

これは本人確認とパスワードとして、このゲームは採用しているらしい。


空中に浮いている入力欄に諸星雪乃と入力する。そしてその間に脳波測定は終わっていた。


「ようこそ諸星様、ATDへ」


何も無いところから、黒いスーツを纏ったハッキリ言うとイケメンが現れた。


(うーん、なんか胡散臭いな…)


「いえいえ、胡散臭くなんかありませんよ」


え?なんでわかったの!?あ、脳波測定したのだった。


「あ、あなたは?」


「私は諸星様のアバター作成を担当する、GU 002と申します。恐らくこの場だけとなるでしょうが、よろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


VRMMOだから、AIをつかってもおかしくないだろう。そもそも人間が全て管理すること自体が不可能だ。


「では、諸星様がアチラで名乗る名前をここに入力してください」


とりあえずあだ名の『ユノ』と入力する。


「ユノで間違いありませんね。はい何にも引っかかっていないですね。無事に了承されました。ではもしも会うことがありましたら、ユノ様と呼ばせてもらってもよろしいですか?」


「はい、問題ありません」


「ありがとうございます。ではユノ様のアバターの作成に移ります。先ずはどの世界に降り立ちますか……早いですね。呪界で間違いないですね?」


「はい」


雪乃の前に鏡が現れる。

鏡に写っているのは、現実の俺だ。


顔や体を弄っても碌な事にならないと思うので、どこも弄らない。


「では、呪界をに降り立つ者だけができる、呪いをかけていきます。呪いのかけ方にはオート、セミオート、マニュアルの3種類があります。オートはランダム、セミオートは私が質問をし、その答えに合わせて呪いをかけます。マニュアルはユノ様の好きに呪いをかけることができます。また、複数の手法を組み合わせることもできます。それと、手法によって使える呪いの差があるということでもありません」


「うーんじゃあ、セミオートをしてから、マニュアルで調整で」


「分かりました」


かけられる呪いは1000種類以上を超えるらしい。組み合わせも考えると、頭が痛くなる。

それなら、俺の答えに合わせ、出来上がったアバターに、手を加えた方が早い。


「では質問に答えてください」

「答えられる範疇で」


GU 002が微笑む。


「お好きなものは」

「未知です。とにかく自分が知らないものが大好きです」


「好きな食べ物は」

「珍味が好きだから……虫とかですかね」


「お好きな生物は」

「カメレオンですかね」


「魔法はあると思いますか」

「あったら良いと思いますけどね」


「武器を使えますか」

「はい。剣、槍とかなら、あと弓とかもいけます」


「私の印象は?」


関係ないと思うのだが……。


「胡散臭い」

「それはショックですねぇ、こんなに誠心誠意にお仕えしているというのに」

「それでも胡散臭い」


「何かのために命をかける方をどう思いますか」

「素晴らしいと思う。まさに漢だね!まあ、巻き込まれるのだったら一言いいたいね!」


「空を飛びたいですか?」

「羽無しで飛べるなら飛びたいですね。サ〇ヤ人とか憧れます」


「質問は以上です。ユノ様の答えに合わせたアバターが此方です」


そう言うと、鏡に映っていた俺の姿が変わっていく。

耳が少し尖り、顔がジュカ〇ンの少し人間よりになり、目が鋭くなる。

さらに筋肉質になっている。


少しは人外だが……何かが物足りない。


「うーん……物足りないな」


「ユノ様、いいですね。これ以上を望みますか?」


「はい」


雪乃の言葉で1枚の紙が目の前に現れる。


「実はゲーム難易度とゲームシステムの都合で、かけられる呪いの数が制限されているのです。そしてこの誓約書にサインすれば無制限とまではいきませんが、ユノ様がお望みのアバターになることでしょう」


誓約書の内容を要約してしまえば、『ゲーム進行が難しくなる、場合によって不可能になる可能性もあるが、それでも構わないか?』と言う物だ。



 つまり、不利になる可能性は極めて高いが、有利になる可能性は低いと言う事


「いいね、サインするか。これをすることでさらに未知が見えるかもしれない」


雪乃は誓約書にサインし、誓約書はGU 002の懐に行った。

それから、メニューで呪いをさらにかけていく。


鏡に写っている雪乃は筋肉質だった体は更に筋肉質になり、肌色が黒くなっていく。

腕から指先にかけて刃のような物が現れる。

脚は自由に硬質化ができるようになった。


「よし、これで満足だ!」


念の為、色々な角度から見て、異常がないか見ておく。


何もおかしなところがなかったので、雪乃はアバター作成完了のボタンを押す。


「ユノ様、この悍ましき世界にお怯え、呪われた生に心ゆくままに楽しみ、あなた達の存在理由、万物の存在理由をどうぞ解き明かしくださいませ。その先には……」


その先を聞く前に、鏡やGU 002、いや空間に日々が割れ、意識が1度途切れ、呪界に生まれ落ちた。


《称号『■■■の新生』を獲得しました》

「存分に楽しむぞ!」




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