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××××-×-× 21.20.33.02
とある場所を一頭ライオンが歩いていたという。
そのライオンは、自分が肉食であるが故に周りから恐れられていたが、同時に孤独を感じていたという。
そんなある時、ライオンは一本のタンポポの花を見つけ「お前は俺が怖くないのか? 逃げ出さないで居てくれるのか?」と問いかけると、その黄色い花は吹き抜ける風と共に一度だけ頷いたと。
爾来、その一頭の大きな猫と物言わぬ植物は友人となり、物語が始まる。
それは、あいつが好きな曲の歌詞の一つだ。
まぁ私としてもあの様な歌詞は嫌いではない、少なくともなんと言っているかわからぬ外国の歌よりも意味がわかるし、愛だの恋だのとよくわからぬものを語ったそれよりもよほど共感できる。
ただ、捉えようによってはそれは酷く不安定で、どこまでも虚しい物語だとも思う。
種族を超えた友情と捉えれば聞こえはいいが、結局のところ双方の間にあるのは双方向に向けられた関心ではなく、一方的な願望だ。
その草木がライオンを避けなかったのは、深く根を張るが故に避けることができなかったから。
ライオンを恐れなかったのは、そもそも草木に思考回路が備わっていないから。
問いかけに頷いたのも、結局は風に揺れただけだ。
ひっくり返せばなんと虚しいことか、本当に、どこまでも虚しいことだよ。
所詮は壁に向かって語りかけるのと同じだ。
一人願望を抱え、壁に浮いた染みに名前を与え、相手がもの云わぬをいい事に、その染みを勝手な理想に組み替えていく。
故に……
「命のない君がもし呼吸を始めたのなら、僕を気持ち悪いと云う。 だから君が生きてなくてよかった……ねぇ」
不意に口をついて零れた言葉だが、あいつは気づいた素振りもなくキーボードを叩いている。
私の声が届かぬという事は、余程作業に集中しているのだろう。
ただいずれにせよ。
「お前がライオンなら、私はタンポポか、私もずいぶんと可愛らしく見られたものだ」
少なくともお前が灰色の狼で無いと言い張れるのなら、そんな解釈でも私は一向に構わないがな。
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