おチビちゃんの挑戦その2-2

ふと、間近に人の気配を感じて、薄く目を開けてみる。

と。

すぐ目の前に、緊張で強張っているおチビちゃんの顔。

「お前。」

「ひゃっ!!」

薄目のまま声を発した俺に、おチビちゃんは大袈裟ではなく、その場で飛び上がった。

「こんな公衆の面前で、よく恥ずかしくもなく寝込みを襲えるな。」

「なななな何を言っているのかしらっ、人聞きの悪い事を言うんじゃないわよっ、高宮 漣!」

顔を真っ赤にしながらそう反論し、おチビちゃんは俺の鞄を脇に寄せて向かいの席に腰を降ろす。

「あなたが全然起きないから、ちょっと様子を見ていただけじゃないっ。」

「へぇ。」

「もう、食べるわよ。」

「あぁ、うん。いただきます。」

テーブルには、既に注文したビッグマックのセットが置かれている。

ちなみに、おチビちゃんのは、てりやきマックバーガーセットだ。

「俺、どれくらい寝てた?」

「5分くらいかな。」

「5分しか待てなかったのか?」

「お腹空いたから。」

そう言いながら、おチビちゃんは大口を開けて、てりやきマックバーガーにかぶりつく。

よっぽど腹が減っていたのだろうか。

カレーパンの時もそうだったが、おチビちゃんの食いっぷりは、体に似合わず豪快だ。

周りを気にしてか、小さい口でお上品に物を食う他の女子とは、全く違う。

上品に食事をする女子の姿は、それはそれで可愛いと思うし、嫌いではない。

でも俺は、おチビちゃんの食いっぷりの方が、見ていて気持ちがいい。

何故だろう。

口の周りをタレだらけにして旨そうに食っているおチビちゃんの方が、可愛いとさえ思えてしまう。

・・・・どうした俺?眠たすぎて気でも触れたか?

「どうしたの?食べないの?」

おチビちゃんの食いっぷりを見ている内に、いつの間にか、食う方がおろそかになっていたらしい。

「いや。食うけど。」

「けど?けど、なに?」

「さっきは、惜しかったな。」

とたんに悔しそうな顔で、おチビちゃんは言った。

「うるさいわねっ、早く食べたらどうなのっ?!」

言われるまでもなく、俺も負けじと大口を開けて、ビッグマックにかぶりついた。

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