第33話「幼馴染は花火したい③」
結局のところ、家に帰っても何とか逃げ切ろうと頑張って俺なのだが——十字固めを決められてボコボコにされてしまった。可愛くはなったと言ったが何も力が弱くなったわけではない。
ゴリラの様な腕力がこれっぽちも変わっていなかった。
ほんと、マジで痛い。
花火するって言うのに右腕めっちゃジンジンする。
「いてぇ」
「あんたが悪いんでしょっ」
ふんっ——と鼻息を荒く噴き出した四葉。もちろん、浴衣の格好ままだがその姿には合わないことを良くも言ってくれる。やはり、四葉は何もわかっていないようだ。
「俺は何も、思ったことをそのまま口に出しただけなんだがな……」
「そのこと自体を言ってるの。大体、恋人を舐めたいなんてキモイこと言うのが悪いんでしょ?」
「……エロ漫画ならよくある」
「私はエロ漫画のヒロインじゃないんだけど? そこ、ちゃんとわかって言っているわよね?」
ギロリ、睨みつける瞳に眉間の皺が相まってメドゥーサに石にされる人の気分だ。
「……」
「分かってるんだよね? 私、普通にただの女の子……っなんでもない、やっぱり」
「自分で言って何照れてんだ?」
「はぁ⁉ うっさいし、舐めたいとか言ってる変態にはマジで関係ないし‼‼」
「ただの女の子を舐めたいです、はい」
「っ~~~~‼‼‼ ま、まじでぶっ殺すわよ‼‼」
「っちょ、待て待てこのあとはなb——ビフォァッ!?!?」
ここで宣言しよう。
この一週間で言ってきた「可愛い」という台詞。そして、ツンデレからジョブチェンジしたとかなんだとか、そういう関連の言葉。
すべて、撤回します。
こんな乱暴な奴がデレデレなわけない、というか普通な女の子はグーパンで殴らないよな、うん。
あぁ、これいじょ――。
その瞬間、俺の意識は遥か彼方まで吹き飛んだ。
「……今度は首も痛いんだが……?」
「知らないわ、自分の胸に聞いてみなさい?」
「……悪かったよ、ほんとに」
「分かればいいわ」
「許してくれるのか⁉」
「許さないけどね、分かったから殴るのはやめてあげる」
どうやら日本語を理解できていないようだ。国語が少しだけ苦手というところが現れているな。
「……言葉も出ないな」
「今後は怒らせないようにすることねっ、私を楽しませてくれるなら許してあげるわっ!」
「じゃあ何だよ、いい気分にさせればいいってことか?」
「ええ、そうよっ」
ない胸をビシッと張る彼女。胸でも褒めたらいいのか?
「おぉ~~、さすが四葉! お胸がおっきくてナイスバディ! まるでスイカみたいだっ‼‼」
「……また、されたいの?」
ギリギリと鳴る歯ぎしりと共に、震える拳を掲げていく。
「わ、わわ、悪かったよ‼‼ ほら、その物騒な拳、お、下ろそうな!」
「っち、ほんと……なんで、(こういうときだけかっこよくないんだろぉ)」
「ん?」
「なんでもない。はいはい、ほら、早く花火いこっ!」
「え、あぁ、そうだな」
すると、四葉は俺の服の袖を掴みながら庭の方に向かった。
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