エピローグという名の分岐点

エピローグ「幼馴染には笑顔が似合う」


「恥ずかしいなぁ……」


「今更でしょ?」


「そうかぁ? 俺にとってはかなりだぞ、なんというかその、プライド剥ぎとられちゃった的な感じにな」


「随分とやられてるじゃない」


「そうだよ、だから言ってんだ」


「そっ。まあどっちでもいいや」


「いいんかいっ」


「ええ、どうでもいいことでしょ? 私には?」


「ははっ、それが恋人に言う台詞かよ……」


 翌朝、俺たちは二人。    翌朝、私たちは二人。


 リビングで朝食を食べていた。


 四葉こいつは目玉焼きにソースをかけ、食パンの上にのせながらパクリと一口、もぐもぐとよく噛み、ニヤリと笑みを見せていた。


 和人こいつは目玉焼きに醤油をかけ、白米の上にのせながらパクリと一口頬張り、もぐもぐとよく噛み、苦笑しながらそっぽを向いた。


 あの後、ひとしきり泣いた俺は四葉こいつの膝の上で寝ていたらしい。所謂膝枕っていうやつだが、はじめてだった気がする。少しムチッとした柔らかい膝の寝心地は巷で言われるほどいいものではなく、若干首も凝った。ただ、心、気持ち面ではかなり安らげた。この世の天国であるかってくらいには気持ち良くて、胸もそうだが、ない四葉こいつならこっちの方がいいかもしれない。


 なんか、すっごく嫌なことを言われている気がするけど、とにかく和人こいつの寝顔は可愛かった。何年ぶりだろうか、和人こいつを可愛いと思ったの。十年前、いや五年前、いやいや二年前のお泊り以来だろう。いつも不格好な台詞でだらしないのに、寝る時だけはそんなこと忘れさせてくれるくらい静かなものだからどこか、心地よくて仕方がない。


「じゃ、食べ終わったら片づけておいてね。洗濯物干してくるっ」


「あぁ、俺も手伝うぞ?」


「いや、いいの。このくらいやる」


「そうか。なら、皿洗っておくわ」


「うん、頼むわ」


「おう、頼まれた」


 どこか、心の整理がついたのだ。四葉の胸の中で泣いて、気持ちをさらけ出して、とにかく漏らして。


 どこか、素直に慣れた気がする。思う気持ちをぶつけて、和人の思いを受け止めて、私もそれに応えて。


「ちょっと、待って」


「ん、なによ?」


「そう言えば、しっかり言ってなかったから言うけどさ——」


「うん」


「俺、お前のことが好きだよ?」


「っ——」


 すると、四葉が後ろを向いた。


 すると、和人が変なことを言った。


「なんで後ろ向くんだよ」


「え、いやぁ、ね?」


 含みのある笑みを見せる四葉はどこか艶めかしい。


「なんだよ……」


「お前って誰なのかなぁ~~ってね?」


「っく、お前……」


 分かっている顔、俺をいじろうとしていた。


 可愛い顔、いじめてやろうかしら。


「はぁ……ったく、分かったよ」


「偉い偉いっ」


「——俺、四葉の事が——高嶺四葉が好きなんだ」


「——っ、はずかしっ」


「おい‼‼ 俺が真面目に言ってるのによぉ‼‼」


「だってぇ、恥ずかしいんだもん~~、あぁ、はずかしはずかし‼‼」


「くっそぉ……なんで、よりにもよってお前なんかにっ」


「あらぁ、それが好きな人に言う言葉かしらねぇ?」


「……んぐっ」


「あははっ、やられてやんのぉ~~‼‼ ざっこ!」


「っく……好きなんだよ、良いだろ‼‼」


「ははっ、あはははっ‼‼ おもしろぉ~~」


 ニコニコしやがって、悔しいが可愛くて何も言えない。


 好きだなんて、もう、不意に言ってくるんだからっ。


「————っはぁ……そうだね、和人?」


「なんだよ……」


「——私も、和人が好きだよっ」


「……」


 四葉が満面の笑みを浮かべる。

 和人が頬を赤くしている。


 やっぱり、お前は——俺の幼馴染は——。

 やっぱり、君は——私の幼馴染は——。


 ————笑顔が似合う可愛い幼馴染だった。

 ————照れる顔が可愛い幼馴染だった。




<あとがき>


 これにて、終了!!

 と行きたいところですが、第三章が開幕します!

 次作、「甘噛みJKと耳舐めJD」をお楽しみに!!


 次作はこちらから


https://kakuyomu.jp/works/16816452221448589661


 

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