第12話

「とりあえず、サマにはなってきたかなァ。合格だ」

「ありがとうございます、先生」

 適性試験からおよそ一ヶ月後、占星術師(もとい先生)によるアルスとミリアの訓練は終了した。


 アルスの訓練はもっぱら剣の素振りがメインであった。「まずは剣を持って振れるようにならないとねェ」は占星術師の言葉。あとは半竜人ハーフドラグナーの力を出し、収める特訓。3分以上継続するのは危険とのことで、溢れ出る《力》を素早く収める特訓を毎日続けた。

 ミリアは最初魔法の出し方を学習、基本型となる炎や風を出すトレーニングを積んだ。

「水は出せないの?」

「相性の問題もあるが、水魔法は皆が思っているよりも難易度が高いんだァ。空気中の水をかき集めて放出するからねェ。炎や風はそれがしやすいのさァ」

 そこから更にミリアは剣術を磨いた。ミリアは飲み込みが早く、比較的高難易度である剣術と魔術の複合もやってのけた。これには先生である占星術師も驚きを隠せずにいた。

「いやァ、まさかド素人の段階からここまで成長するとはねェ」

「ま、私は天才ですから」

 そのとおりだねェ、と占星術師も肯定してみせた。


「さてェ、これでキミ達は国が認めた戦士・魔法剣士になったわけだ」

 宿に戻った一向に、占星術師が口を開く。

「これからどうするんだい?」

「まずは村に戻って適正職に就けたことを報告しようと思います」

「一ヶ月も滞在しちゃったからね、多分みんな心配しちゃってるわね」

 帰省する意思を示す二人に、占星術師は目を細める。

「まァ、そりゃそうなるかァ」

「何か問題でもあるんですか、先生」

 アルスの問に占星術師が重い口を開く。

「ボクはねェ、キミ達の運命が視えるんだァ」

「運命……」

「運命とは、道標だ」

 いつか聞いた言葉が蘇る。


《生きとし生けるもの総てに与えられる道標、それが運命。》

《神は総てを創り、総てを知り、総てを統べる存在である。》


「先生、あなたは」

「アルス」

 アルスが何かを喋ろうとしたが、占星術師によって止められた。

「ボクはね、そんな大層な存在じゃあないんだ。初めて会った時に言っただろ?」

「……」

 思うところがあったが、アルスはこれ以上口にしなかった。

「キミ達が村に戻るのは一向に構わない。しかし、相応の覚悟を持ち給え」

「覚悟?」

「アルスとミリア、キミ達の運命は、村に戻った時大きく分かれることとなる」

「どういうこと?」

「行けばわかるさ。……それとウルフ」

「なんだよ」

「キミもついていってあげるといい。この二人では少し不安だァ」

 占星術師の提案にウルフはそっけなく応える。

「言われなくてもついていくさ。その方が楽しそうだからな」

「よろしい。それではボクはこの辺でお別れするよ」

「先生は来てくれないのですか」

 部屋を出ようとする占星術師にアルスが呼び止める。

「忘れてると思うが、ボクは国から雇われた占星術師だよォ。ここから離れるわけにはいかないんだァ」

「そうですか……今までありがとうございました」

「また王都へ遊びにおいでェ」

 そう言い、占星術師は部屋を後にした。


「……さて。俺たちもそろそろ準備をしよう」

 アルスがそう言うと、荷物をまとめ始めた。

「そうね、村の皆も気になるし、それに……」

 ミリアもアルスに続くが、占星術師が言い残した言葉が頭の片隅に引っかかっていた。


《キミ達の運命は、村に戻った時大きく分かれることとなる》


「あれ、どういう意味だったんだろ」

「……なんにせよ、村に戻って見ないことにはわからないさ」

「そうね」

 アルスとミリア、それにウルフは荷物をまとめ、王都を出発した。

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