第11話

 人間族ヒューマニアは、類まれな知恵を持ってこの世に生まれ落ちた。その豊富な知恵を使い、他の種族に負けないような強大な《力》を手に入れた。その力は、ありとあらゆる生命をいとも容易く粉々にする恐るべき力だった。獣人族ビーストニア巨人族ギガントニア、そして竜人族ドラゴニアまでもを滅ぼす、強大な力……。人間族ヒューマニアは種族としての勝利を確信した。しかし……。

 ―――しかし?

 人間族ヒューマニアは滅んだ。自らの力をもって自らの命を奪い合ったんだ。

 ―――どうして?

 人間族ヒューマニアが手に入れた力は強大すぎるあまり、限られた人間にしか与えられなかった。そして、その力は国家をも動かす強大なものとなった。人々はその力を得るため、他国の人間を殺し、奪い合った。そうして、人間族ヒューマニアは滅んだ。

 ―――でも、僕たちは生きてるよ。僕たちは人間じゃないの?

 人間だよ。僕たちの祖先は滅び、そして蘇った。

 ―――どうやって?

 神様の手によって、今再びのチャンスを与えられたんだ。次に同じようなことがあれば、もう蘇ることはできないだろうね。

 ―――その強大な力って、今はもう作れないの?

 わからない。

 ―――頭の良い悪い人がまた大きな力を手に入れたら、また人間は滅んじゃうんじゃないの?

 そうだね。そうなる前に、手を打たないといけない。

 ―――何か方法があるの?

 あるよ。でも、今の僕には難しい。実現にはもう少し長い時間が必要だ。

 ―――時間があればできるの?

 時間だけでは難しいと思う。もしかしたら君の力を借りる必要があるかもしれない。

 ―――僕の?

 あぁ。その時はよろしく頼むよ、アルス。

 ―――うん!

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