自習室から始まる恋

@for_relief

第1話出会い

男は帰宅部だった。中学の時イジメに遭い、高校に進学したときには既に人間不信に陥ってた。幸い、父の転勤に伴い高校進学直前にに地元から離れていたため、中学からの知り合いは特にいなかった。また、進学先は進学校のため、公立中学と違い周りは比較的落ち着いている生徒が多かった。それでも男はイジメのトラウマから抜け出せず、人と関わる必要のある部活には所属しなかった。

男の唯一の強みは勉強することだった。勉強をすることで他社との間に壁を作り、他人と関わること無く過ごす・・・これが男にとって生きる唯一の手段であった。

また一応進学校のため、勉強はしないとクラスでビリになる。元々男は地頭が悪く、物覚えは悪い方だった。そうするといつまたイジメられるかわからない。男はそういう理由もあり、ビリにならないように放課後は毎日自習室に通って勉強していた。


毎日自習室に通っているとあることに気づく。右から2番めのテーブルでいつも勉強している女子生徒がいる。最初はただなんとなく勉強しているんだなと認識していた。

だが毎日通っていると彼女の存在が次第に気になり出した。


定期テスト前日の日、この日は自習室が満室になる日だ。皆赤点回避のため、必死で勉強するからだろうか?。私は席が埋まってしまう前に早めに、自習室に向かうことにした。

偶々、右から2番目のテーブルが空いていたので、そこに着席することにした。

暫くすると、もう一方の席に女子生徒が座った。そしてその生徒はいつも自習室に通っているあの子だった。

そうこのテーブルはいつも女子生徒が座っている場所だった。僕はいつも違うテーブルで勉強していたのだが、この日は席が埋まっていたので、そこに座らざるを得なかった。


自習してから数十分後、僕の足元に消しゴムが転がってきた。

隣りに座っていた女子生徒のものだった。

僕はそれを拾って、彼女に渡した。

「ありがとう」

それに続けて

「いつも自習室来て、勉強しているよね。 頑張ってね」

と小さくつぶやいて彼女はそのまま勉強に戻った。

彼女の名札には「綾川 恵」と書かれていた。


その翌日、私は再びその例のテーブルについた。

他のテーブルに座る選択肢も会ったのだが、彼女のことが少し気になっていた私はそのテーブルに座りたかった。

この日は綾川が先にテーブルに座っていた。

席について数十分が経過した頃、机の右側からノートが渡ってきた。

ノートには『ここの数学の問題教えて♪』という綾川のコメントが書かれていた。

僕はその数学の問題を確認してみる。この問題は昨日解いた問題なのですぐに分かった。

自習室は私語(教え合うのもだめ)が禁止なので、私はノートで問題の解説を丁寧に記して、綾川にノートを渡した。

ノートを渡すとすぐに綾川は付箋を渡してくれた。

『すごく丁寧に書いてくれて、ありがとう。助かります♪』

続けて

『また分からないことがあったら、教えて下さい』

という付箋が来た。

僕は『いいよ』とそっけない返事をしてこの日は終わった。


翌日、この日は定期テスト1日目だ。社会・数学・古典 の3つがテスト科目として出題された。

テスト終了後明日の科目の対策のため、再び自習室に向かった。昨日座ったいつもの右から2番めのテーブルに座った。

自習してしばらくすると綾川が座った。彼女が椅子に座ると少しだけドキッとする。

暫くして、彼女は付箋を渡してきた。

『昨日はありがとう。僕君のおかげで、数学のテストできました♪』

そういえば昨日教えた所は今日の数学のテストで出題されていたのを思い出した。

僕はこう付箋に記して、返事をした

『よかった。あの問題がまさかテストに出るとは思わなかったよ』

続いて綾川が

『今日のテストはどうでしたか? 私は社会がちょっと難しかったです;;』

と付箋を渡した。

確かに社会のテストはいつもより問題数が多く、ちょっとマイナーな問題も出題された。

『社会はいつもより難しかったよね。僕は古典の最後の問題が自身ありません』

古典の最後の問題はいつも応用問題が出題される。模試のように授業で取り扱ったことではない物語が出題される。

『古典は最後の応用問題が難しいよね。私も自身がありません;;』

と綾川が返した。


まだ綾川とは2日しか付箋で会話のやり取りをしていないが、帰宅部で人とあまり関わることのない僕はそのやり取りがとても楽しかった。そもそも高校生の会話の話題といえば最新のゲームや音楽・SNSでのやり取りが主であるから、勉強の話題はあまり歓迎されない。

僕自身はあまり最新の情報には興味がなく、趣味もこれと言ったものはないので、唯一の接点である勉強で会話できたのは素直にとても嬉しかった。


僕は気持ちとしてはまだたくさん会話したいが特に会話の話題も見つからなかったのでこの日はそのまま終了した。

帰り際に綾川が『またね』という付箋を渡してきた。

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